見出し画像

晴れのち曇りの 転生事情 2

 シャボン玉を手のひらにのせる。ふるふる。その膜は生きている。虹色のマーブリングは動き続ける。スロウに、スロウに。シャボン玉の惑星。パチッ。世界は滅亡した。
 ダスティピンクの手袋を丸めてパーカーのポケットにつっこむ。つま先に当たったシャボン液が倒れて黒い染みが広がる。びゅうと風。カララと吹き口が離れてく。チクン。
 
 私、転生してたわ。
 
 普通はブラック会社過労死からの不遇ポジションで前世知識とスイーツでイケメンツンデレの復讐譚なんじゃないのかな。なんもないわ。前世と今世、サイゼの間違い探しだわ。
 ポケットの手袋は小動物みたいで、お腹があったかい。ウソの心音に耳を澄まそうとするけど、風がうるさい。髪もうるさい。くるくるの私の髪は荒れ狂い、顔をくすぐりまわす。そっか、この天パ。間違い探し、一個みつけた。
 チチュチチュチチチ、チュチュ、チチチ。鳥たちのテンションが上がってる。新学期近いもんな。君たちのクラスはどんな感じ? 私のクラスはどんな感じ? 通りの向こうにキラキラはしゃぐ女子たちが見える。ヒロイン枠なんていらないし。シャボン玉セットをビニル袋に突っ込んで塀に隠れる。お兄ちゃんのクロックス、汚いな。
 
「なにやってんの」
「べつに」
 風に乱されたはずのお兄ちゃんの髪はサラリとしていて、悔しい。停められたロードバイクは私がもらう予定になっていたけど、本当は新しいのが欲しいって、お願いしたら保留になっちゃって、今、私たちの自転車はコイツだけ。
「天パ、家族でいきなり私だけだよね」
「ウケる」
「ほんとそれ」
 サンダルくらいは可愛いの、買ってもらわなきゃ割に合わないよね。いろいろさ。そういえば、小学校のとき一緒だった沙耶ちゃんはインフルエンザにかかったことないとか言ってたな。それってチートじゃん。あんまり意味ない療養期間は明日で終わり。
「ノート、私のも買ってきてくれた?」
「自分で行けよ」
「これぞ冷遇」
「うざ」
 お兄ちゃんがいなくなった庭には、また鳥の声が満ちてくる。奥でウソの鼓動が静かに重なる。コンタクト、間に合わなかったな。足元のダスティピンクの花弁は、春のリアル。
 
 ありふれた今世の母は、ヒロインママと花見をするって言っていた。
 週末は晴れのち曇り、雨よ降れ。





こちらの企画に
参加させていただきました✨


1話目はこちら


いいなと思ったら応援しよう!