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晴れのち曇りの 転生事情 1

 風が吹く。ぐおんと鳴く。藍色の空気は桜を遠く見せている。春なんてファンタジーとでもいうように。またぐおん。冷たい砂が目に入る。泣けてくる。くだらなくて。
 
 転生を知っているだろうか。よくあるやつ。トラックどーんでボボンなバストの女神様がいろいろくれるやつ。
 
 うん、それそれ。
 
 トラックどーんはお決まりだけど、僕の場合は女神じゃなくてビリケンさんだった。なんでやねん。東京から出たことないけども。いろいろはくれなかった。というか、なんにもくれなかった。「ほな」とウインクしだけ。足くらい触ればよかったんだろうか。わりと前世と地続きなんだが。

 そうそう、ひとつあった。視力はいい。裸眼。鑑定はできないし、魅了も使えない、ひと重の狐目。でも、視力がいいって素晴らしい。これはちょっとチートがかってる、と裸眼の記憶がない僕は思う。もしかして、裸眼の人はみんなビリケンと挨拶したのかもしれない。ちょっとまて。他のいろいろな才能持ちは贔屓されたんじゃないか。よくあるもんな、クラスで転生して、ひとりだけ地味、ってやつ。遺伝じゃ説明できない人、いるもんな。僕の今の両親もメガネだし。妹もメガネ。
 
 新学期まであと6日。新しいノートを買うんだった、とペダルにぐいと力を込める。はじまりの空って、青空じゃなかったっけ。雨に挟まった曇り空は、ドラゴンが出てきそうな気配。裸眼で見る空はかっこいい。遠くにそびえるビルの上には魔法陣があったりするかも。
 
 本屋に美女はいなくて、A組の山田くんはいた。僕と同じノートの束を抱えて、漫画の新刊コーナーを見ている。友達の友達的な関係でそんなに話したことはないけど、いいやつそうとは思っていたから、少し話す。その漫画、面白いの? とかそんな感じで。
 そういえば、と山田くんは新刊の漫画をノート束に重ねて言う。
「今日、風強いじゃん。ここってビル風すごいし。でさ、砂が目に入ってさ、爪がめっちゃ早く伸びることに気づいたんだよね」
「なんだそれ」
「うん、ほんとそれ」
 確かに山田くんの爪は長かった。白い部分が5ミリくらい。僕らはへへへと笑って、別れたけど、レジに並ぶ山田くんのリュックには小さなビリケンのキーホルダーがついていた。
 
 ビル風が暴れて、自転車がガシャン。駐輪場に入れてないから、勇者はこない。魔王もきっと、ソファの上で花見予定と天気予報をチェックしている。
 週末は晴れのち曇り、花粉は多め。





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