②選んだあとの話──それでもこの人と生きていくまで
▶前作|第1話「選ぶ前の理想と現実」
第2話|小さなズレ
でも実際は、
そんなにきれいじゃないし、シンプルでもなかった。
一緒に生活していると、
想像以上に、小さなズレが層になって重なっていく。
コーヒーの好みは、ただの好みじゃなかった。
私はアメリカン。がぶがぶ飲みたい。
でも彼は、苦いコーヒーをゆっくり味わうタイプだった。
同じ“コーヒー”なのに、速度も温度も違う。
食事中もそうだ。
私は会話をしながら食べたい。
でも彼は、スマホを見ながらの“没入感”も大事らしい。
同じ言葉を使っているのに、
どこか別の世界の生き物みたいだった。
向き合うことと、受け入れること。
その間で、
小さなさざなみが何度も立つ。
でも私は、深く考えないようにしていた。
結婚観や人生の選択についても、少しずつズレを感じていた。
バツイチで子なし。
「結婚のカタチにこだわらない」と彼は言う。
私は、その“カタチ”が欲しかった。
子どものこと、不妊のこと。
その手の話は、軽い世間話にはならなかった。
頭の中で、違和感を無理やり整理してみる。
因数分解すれば、理解できると思っていた。
でも、それが一番むずかしかった。
そんな単純な話じゃない。
むしろ──
序の口どころか、番付外だった。
言葉にしようとするほど、
少しずつ、前提が崩れていく。
飲み込めると思っていた距離は、思っていたよりずっと隔たりがあった。
ただ、それはもう埋まらない類いのものだった。
▶次回|第3話
「子宮腺筋症が発覚した日」
埋められない距離に、
見ないふりをしていた頃。
突然、身体の方が先に
限界を迎えた。
あの時の私は、
「選ばれなかった」のではなく、
“見極める視点”を持っていなかった。
採用で130人を見て、
婚活で100人以上と会って、
やっと気づいたことがある。
▼次回
