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【 介護 】 『それはフィクションです』の話

携帯電話が鳴る。義母からだ。義母の透視力はすごい。私がひと仕事終えてコーヒーを淹れた時に電話がかかってくる。これが例えばお風呂掃除をしていて、手元に携帯電話がなく手が濡れている時なら出られないだろうに。いつも義母からの電話は私のしばしの休息タイムでちょっと時間に余裕がある時。我が家のどこかに監視カメラでもつけているのだろうか?(笑)

電話を取ると泣いている。あぁ、またか…、と、ここまで読んだだけで冷たい嫁だと思わないで欲しい。この後続く言葉が決まっているから。「孫ちゃんが可哀想で可哀想そうで…。」(やっぱり)

認知症を患っている義母にはあるサイクルがあり?(※医学的根拠のない六十の手習い調べ)、「孫(我が家の子)が可哀想」と泣きながら電話がかかってくる時は、決まって同じ話を聞かされる。内容は以下の通り

孫が犯罪に手を出してしまい、その集団から抜け出すためにお金を払わなくればならない、お金がないから私に泣きついてきた。私がお金を出してやったのだが、その後孫は大丈夫なのか?という話。そしてこう続く

「母親のあんただから話したんだよ。誰にも言っちゃいけないよ。」

…と言ってまた泣く。誰にも言っちゃいけないよ、と言いながら義母本人が親戚中に話しているようで、私が信頼している義叔母の「なおさん(仮名)」からある日私に電話があった。「この話してもいいかどうか悩んだんだけど、やっぱり六十の手習いちゃんは母親として知っておいた方がいいと思って…。」頭が痛くなった。「なおさん(仮名)、お話を遮って申し訳ありませんが、ウチの子、犯罪集団になど入ったことはありません。抜けるためにお義母さんからお金を借りたこともありません。」電話口で驚くなおさん。「知ってたの?」私「知ってるも何も、それは全てお義母さんの作り話です。認知症ですから悪気はないと思うのですが、事実無根です。」なおさん「…、はぁ…。」

この話で一番最初に義母から電話がかかってきたのは、もう1年半ぐらい前。だが、義母は「この前の日曜日、孫ちゃんがうちに来てね、…。」と話を始める。つまり毎回毎回、私には初めて話す話ということになる。それをこの1年半、2ヶ月に1回くらいのペースで急に思い出すようで(もっともそれは架空の話なのだから、思い出すも何もないのだが)、思い出したら最後、1週間から10日間程連続で毎日電話がかかってきて泣かれてしまう。そして、急に忘れるのか、また、ピタリとその内容の電話は無しになり、また2ヶ月後に再開という繰り返し

最近のことだか、なおさんに相談と言う名の愚痴をこぼした。「お義母さんから同じ話を聞くことは別にいいんですけど、我が子の不名誉な作り話を何回も聞かされるのは正直かなり疲れてます。」と言うとなおさん「私でさえ不快だもの、六十の手習いちゃんはもっとだよね。」…あぁ、被害者は私だけではなかった、なおさんもお義母さんのサイクルの中に入っているんだ、なら、我慢しようと思っていたのだが、しばらくしてなおさんから電話があった

「お義姉(なおさんから見れば義母は義姉)さんからまた例の電話があって、先週の日曜日に孫ちゃんが来て…って言われたから、『それはもう1年以上も前の話で、お義姉さんのお陰でスッキリ片付いたんですよ』と言っておいたから。それを何回も言えばお義姉さんの頭の中で定着すると思う。」

私は何となくスッキリしなかった。このまま進めると私も義叔母も同じ話を聞かされずに済むし、何と言っても義母は孫の役に立てたと満足できるのは分かるが、我が子が犯罪に手を出したことが、たとえ義母の頭の中だけだとしても真実になってしまう

しかし、私がその提案を拒むと、せっかくこれで落ち着きそうな良い案を出してくれた義叔母と私の関係性が壊れるかもしれない

私はどうせ否定するなら「お義母さんの孫は犯罪になんか関わっていませんよ」と言いたいのだが、介護士の意見を聞くと「お義母様はお孫さんの役に立てたと思いたいんだと思います。」との事。そう言われると「お義母さんのおかげで助かりました。」と思わせてあげたい気はする

でも何でよりによって犯罪に加担したなどというフィクションを思いついたのだろうか?これも介護士さん曰く「例えばお義母様がお孫さんに会いたいなぁ、なんて考えている時にテレビでそんなニュースをやっていたんでしょうね。」

……、言葉がない。

✴︎子どもに一応この話をして、念の為「あんたまさか、闇バイトなんかしてないよねー?」と聞いたら、泣かんとばかりに怒られた。それは1年半前の話


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