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「結局エクセルに戻る」会社が見落とす、乗り換えの順番

業務でExcelを使っている会社のうち、脱Excel(今のExcelをやめて別のシステムに移すこと)に「取り組んでいない」と答えた人が65.8%。検討中の14.5%を足しても、実際に動いている会社は3割に届きません(キーマンズネット「業務における『Excel』の利用状況と課題」2025年)。これだけ便利なツールが増えた今でも、多くの会社が「結局、エクセルのまま」なんですよね。今日は、この“乗り換えられない”の正体と、DX(デジタル技術を使った業務の見直し)がうまくいく順番について書きます。

「乗り換えられない」のは、意志が弱いからではない

まず、現場でExcelがどれだけ食い込んでいるかを数字で見てみます。同じキーマンズネットの2025年調査(回答330件)では、業務でExcelマクロ(決まった作業を自動で動かす仕組み)を使っている人がこれだけいます。

【Excelマクロの利用状況(キーマンズネット2025)】
・「常に使っている」18.8%+「時々使っている」50.9%=約7割が利用
・主な用途は「集計業務」75.2%、「データ入力・レポーティング」58.7%
・脱Excelに「取り組んでいない」65.8%、「現在取り組んでいる」11.8%、「検討中」14.5%

面白いのは、一度「脱Excel」を試した会社でも、最終的にExcel運用へ戻るケースが少なくないことです。同調査が挙げる理由はこの3つでした。

【脱Excelしても戻ってしまう理由】
・「Excelを使えないと業務が回らない人がいる」
・「利用者が多く、移行にコストがかかる」
・「関数などの機能が進化して、Excelの利便性が逆に増している」

ここから分かるのは、乗り換えを止めているのは“新しいツールの性能”ではない、ということです。止めているのは「スイッチングコスト」──今のやり方から別のやり方に移るときにかかる、お金・手間・慣れ直しの負担です。マクロミルやグロービスの解説でも、いくら新しいサービスが優れていても、データ移行・教育・既存システムとの再設定の負担が重ければ、多少の不満があっても乗り換えは起きない、と整理されています。会計ソフトを一本入れ替えるだけでも、過去データの移行、従業員の練習、他システムとの連携やり直しが一気に発生する。あれと同じ構造です。うまくいく会社は「全部入れ替え」をしていない

では、Excelに限界を感じている会社はどうすればいいのか。ヒントは「捨てない」発想にあります。

KUIXが社員101名以上の会社員に行った調査(回答1287名)では、約7割がExcelでのデータ管理に限界・デメリットを感じていました。にもかかわらず、実際に脱Excelできた業務があるのは24%どまり。最大の理由は「Excelの利便性を手放したくない」でした。そこで同社が提案しているのが、“入力はExcel・管理はデータベース”という役割分担です。つまりExcelを捨てるのではなく、Excelが苦手な部分(同時編集・最新版の管理・大量データ)だけを別の仕組みに任せる、という考え方です。

実際、脱Excelに動いている会社が選んでいる移行先も「全部入れ替え」ではありません。キーマンズネット2025では、代替・補完に使うツールはBIツール(データを集計・可視化する道具)60.9%、kintoneなどのノーコードツール23.0%、Googleスプレッドシート21.8%。Excelが弱いところを補う形が中心です。

ここで言いたいのは、DXを「今のやり方を全部やめて、新しいシステムに一斉に切り替えること」だと捉えるから、現場が止まって頓挫する、ということです。慣れた様式を一度に捨てる怖さは、想像以上に大きい。だから“全入れ替え”ではなく、今のやり方は残したまま、面倒な一工程だけを外に出す・自動化する。これが現実的な順番です。

DXは「全取り替え」ではなく「分けて一工程ずつ」

私が経営者の方と話していて強く感じるのも、まさにここです。先日、元はIT企業で経理をしていた経営者の方とお会いしました。その方は月末になると何十枚もの請求書をExcelで手打ちして、PDFにして、メールで送る作業を一人で抱えていたそうです。その大変さから、自分で“仕組み”を作った。ところがその発想が「今のエクセルを捨てさせない」だったんです。「やり方を変えろと言われた瞬間、現場は止まる。だから今の様式はそのまま使えることが一番大事なんです」と。これ、すごく腑に落ちました。

建設業でも、見積書や請求書がいまだにExcel手打ち、という会社は本当に多い。現場ごとの売上や粗利の管理も、担当者のExcelに全部入っている。そこに「全部システムに入れ替えましょう」と言っても、誰も動きません。新しい道具が悪いのではなく、慣れた様式を捨てる怖さと、覚え直す手間の方が勝つからです。あなたの会社のExcelは、いま“何に”使っていますか? 見積ですか、請求ですか、それとも現場ごとの集計ですか。

だからDXの順番は、ツール選びからではありません。最初にやるのは「業務の書き出し」です。今そのExcelで何をやっているのかを一枚に書き出して、(1)このやり方は変えなくていい所、(2)面倒で他に出せる所、(3)そもそも要らない所、の3つに分ける。そのうえで、変えると決めた“一工程”だけにツールや外注を当てる。順番がこれなら、現場は慣れた様式を守ったまま、負担の重い所だけが軽くなります。逆に、書き出しを飛ばして「とりあえずシステムを入れよう」とやると、高い確率で“結局エクセルに戻る”わけです。まとめ──乗り換えられないのは順番のせい

脱Excelに動けない会社が3社に2社。でもそれは、経営者や現場の意志が弱いからではありません。今のやり方を一度に捨てさせる順番で進めているから、スイッチングコストに負けて戻ってしまうだけです。まずは入れ替えの前に、今の業務を書き出して「変えない所」と「変える所」を分ける。動かすのはそのあとで十分です。もし「うちのExcel、何に使っているか改めて書き出したことがないな」と思ったら、そこが最初の一歩です。人を増やす前、ツールを入れる前に、まず仕事を分ける。今日はそんな話でした。

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