【寄付を文化に】 第2話 将来の夢 「Take Your Mark」
2話 将来の夢
中学2年の夏。内申点にも関係しない道徳の授業。みんなやる気はなかった。ただふたりの発表だけは覚えてる。
仲が良かったから?
いや、違う。たぶん、ヒロは具体的だったからだ。純は、かばってくれたから?ちがうよ。ウソをついたからだ。
当時、エアコンなんてなかった。外から吹き込む風が、どこか気だるさを連れてくる。
「将来の夢」
担任の安田が、黒板にテーマを書いた。
出席番号順でいいかな?
「ダメだよ。そんなのじゃんけんしよう!」
誰かがいって、安田もあっさりそれに乗っかった。
「足立と渡辺と伊藤と山田でじゃんけんして勝ったところからスタートな。」
あの頃は、まだ、男子と女子と別々だった。男子の先頭の足立くんと最後の渡辺くん。女子の先頭の伊藤さんと最後の山田さん。
「伊藤さんが勝ったら、私は2番目か?ヤダな」
じゃあ、伊藤から。あっさりと1回目で勝負がついた。勝ったところから。
「伊藤さん強いのか?弱いのか?勝負弱いよね。これは?伊藤さんは教師か。なれるよ。きっと」
私は、ドキドキした。これから話すことは、まだ家族にもいってない。コーチに何気なく聞いただけだ。
「じゃあ、次、井上」
安田のその声が、私には「テイクユアマーク」に聞こえた。「はい。」(ピッ)と電子音が響いた。
「私の夢は、水泳で将来オリンピックに出ることです。次のアトランタは、高校2、シドニーが大学3年です。そのために高校は、淑鴨学園か湘大沢田に進みたいです」
「オリンピック?美帆すげえ、『今まで生きてきた中で一番幸せです』って言って」
「淑鴨って?どこ?それ、おいしいの?」
誰かがぶさけて茶化して、クラス中が笑いに包まれた。前年のバルセロナの金メダリストの言葉や学校名を面白おかしく笑っていた。
悔しいよりも恥ずかしかった。
私は何か面白いこと言ったのかな?
「人の夢を茶化すなよ。淑鴨学園は東京、湘南大沢田も神奈川も水泳の名門だよ。」
「東京??関東の高校に行くの?さすがに茶髪のギャルは違うね!」
「いい加減にしろ!水泳選手は茶髪になるんだ。ギャルとかじゃないから!普通、そこまで練習できないからな!」
私より純が怒ってた。
私の夢の話は結局、誰にも響かなかった。
あいつら以外は。
ってか、安田。担任なら、もうちょっとしっかりしろ。
「井上美帆の夢は、オリンピックの水泳選手。よし、井上が全日本に選ばれたらみんなで観に行こう。シドニーだな。みんなパスポートとれよ」
安田が、無理やりまとめて次の内田さんに変わった。内田さんは、カフェを出したいって言ってたかな。
男子、次、広瀬、広瀬はどうしたい
「あっ、ボクは大学にいけたら、サラリーマンになりたい。けど、防衛大学校にいって自衛官もありかも。うち、ご存じのとおりお金ないんで。」
だれも、茶化しもせず、黙っていた。純の話は、夢なのか目標なのかもわからなかった。
安田は、広瀬はサラリーマンとだけまとめた。
そして、矢野だ。
「ボクの夢はギタリストです。B'xの松田さんみたいになりたい!そんなギタリストになるために高校を出たら、東京のEXミュージカル専門学校に行きたい、EXMCでバンドを組んでそこでメジャデビューするんだ」
堂々と矢野が言った。内心、嬉しかった。あいつは、自分の信じることには周りを気にしない。
「あれ?矢野ってギター持ってたっけ?」
また、誰かが人を馬鹿にしていた。
「これから買うよ」
「ギターもないの??ウッソ?恥ずかしい」
矢野がギターを持ってないと認めるとなぜかみんな矢野を否定していた。
B'xの松田さんは生まれた時からギター持ってたの?
違うよね
スイミングだって、オリンピックに行きたいって思ってから加入したっていいんだ。
けど、言葉にはできなかった。
すると、純がまた叫んでいた。
「矢野はギタリストになりたい。だから、ギターを買う。何もおかしくないだろ」
「人の夢を笑うなよ」
プロ野球選手になるって言った川口のことは誰も笑わなかった。
いや、笑われたのは、私とヒロだけだった。なぜだかはわからないけど、学校名を出したから?具体的だったから?
まっ、どっちでもいいか。
テイクユアマークで勢いよく飛び出したら、片手タッチになって失格。そんな気分になったよ。
ベストでてたのに。
人のことを馬鹿にするのが中2なのか?
中2なのに真面目に夢を語った私たちが中2なのか?
今回ばかりは、真面目にオリンピック行くって言った私が中2だったわ。
ってか、安田。もうちょっと夢語りやすい状況つくってよ。
「テイクユアマーク」
これを聞いたら戻れないのよ
0話 スタートはここから
1話 ログイン問題
かつおクラブはこちら
ミイコさん ありえないすごい未来
いいなと思ったら応援しよう!
サポートお願いします。
記事を書く励みになります。
noteLIFE楽しみましょう。