【小説】「君と見上げた、夏空のその先へ」プロローグ
プロローグ
春は、いつも何かを連れてくる。
期待だったり、不安だったり。
誰かとの出会いだったり、誰かとの別れだったり。
そして、その年の春は――。
僕に、一生忘れられない恋を連れてきた。
もし、あの日。
ホームルームに遅れそうになって走らなければ。
もし、あの日。
校舎の角で、あの笑顔とぶつからなければ。
僕の高校生活は、ただ野球だけを追いかける毎日だったかもしれない。
恋なんて、自分には関係ないと思っていた。
甲子園だけを目指して、
白球だけを追いかけていれば、それで十分だった。
でも、人はたった一人との出会いで変わる。
笑うことも、
泣くことも、
夢を見ることも。
そして、誰かを本気で好きになることも。
あの春の日から始まった僕たちの物語は、
たくさん遠回りをして、
たくさん涙を流して、
最後には、桜の舞う空の下で、
世界一幸せな涙へと変わっていく。
これは――。
僕と君が、
青春のすべてをかけて恋をした、一年間の物語だ。
