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神のデス・ギフト-F- 第6話 ギックリ腰&アメリカ金融危機の腐敗コラボレーション

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重いものを持つと必ず危険なギックリ腰。余談だが癖になり今も年3回発症。

【ギックリ腰への油断と予兆】

俺は一袋30キロの袋を運ぶことが余裕で毎日ある。
大体入っているのは、シリコンや、マグネシウム、マンガンなど、鉄を溶かしている時に混ぜて、性質の違う鉄にする時に使う。

これらは、隠し調味料の様なものだ。

10トン。つまり10000キロに30キロ入れてもほぼ何にも変わんない。
誤差だから袋ごと投げ入れる時もあれば、重いスコップで秤を使って入れる時もある。

それらの鉱石置き場は常にたっぷりにしておかないといけないので、時間がある時、袋を取りに行き、一袋一袋持ってくる。
置き場にはフォークリフトで持ってくるのだが、炉の近くまでは持ってきてくれないからだ。

筋肉の鎧をまとった俺は今や余裕で二袋持って来れる様になった。
職長Kクラスになれば楽々3袋だ。

心「簡単簡単。筋トレしながら仕事できるなんて幸せー」
俺「ほーれ!俺の力にかかれば余裕なのよ」

そんな雑念があったある日、油断していたその日、それは起きた。

俺「どーれ朝一、サクっと運んじゃうか!」

腰にとっては起き抜けの60キロ。
予想をしていなかったんだろう。

俺「ヨッコイショ!」
腰「ピッキ!」
俺「あーーーーーーーー!」

俺は荷物をドサっと落とし、ひざまづいた。
腰を中心から全身に電気が走った様だった。
どんな姿勢でいても腰が痛く、痛みは増していく。
職長Kを呼びにいくことも、声を張ることもできない。

心「どうする、、、これがまさかのギックリ腰か?」

母がギックリ腰持ちなため、よく見ていたが、壁を伝わないと歩けない。
腰を伸ばせない。
お風呂にすら入れない。
寝ているしかできなくなる。
治るのに、1ヶ月。普通に生活できて痛いだけなら2週間。
俺が思っている母の姿の予備知識がフル稼働した。

心「俺の体も、仕事もやばいな」

工場の鉄を溶かした臭さ。
まるで誰かの脇の下にブルーチーズを挟んだ様な異臭を乗せて風が吹いてきた。
俺は吸い込んで、今後の不安を誤魔化そうとした。

ギックリ腰になってしまって動けない人呼べない俺

【ぎっくり腰後の俺と言う漬物の熟成】

俺は職長Kとさらに上の工長とじっくり話し、
まぁ職長Kのゴリ押しで、
2週間休むことになった。

俺は、まだ働き出してから1年未満。
しかも、試用社員として入っているから有給休暇がなく、ただ収入が減る。
でも、力仕事で鉄に落ちたら人が蒸発する様な現場、居れるわけはなかった。

俺「本当にすいません。忙しい時に。しっかり治します」
K「しょうがないよ。みんなやってるんだから、なんのことねぇ」
心「カッケーな職長K。いやいや、すいません」

俺は必死でロッカー室まで歩き、着替え、正門にたどり着いた。
母に迎えにきてもらいその車で病院に行った。

医者「ギックリ腰ですね。薬は痛み止めしかないから、安静に寝てなさい」

俺の『動けないけど休み』と言う謎の期間が発生した。
まるで漬物樽を誰も掻き回さないで2週間放置する様なものだ。
絶対に味にムラが出て失敗するやつだ。
数々の地獄を経験した勘のいい俺は不安に思っていた。

数日後、俺はやっと動けるくらいはできる様になった。
ナメクジ級の身体能力だ。
酒も飲みにいけないから、家でただテレビをみて悶々とする。
当然この時代はスマホもないからテレビ以外娯楽もない。
腰が痛くて、給料も無いから外にも出れない。

暇になった俺は、また昼間から父の激安の焼酎を飲む様になっていた。
父も俺が酒を飲むと一緒に話せるため喜んで飲ませてくれる。

バラエティー番組やニュース番組を見ながら父と
「あーでもない」「こーでもない」
と話す日々も案外楽しかった。

しかし、何かが近づいてくる気がした。
神は今まで不在だったのではない。
世界規模でギフトを配り出していたのだ。
当然、神にお気に入りにされている俺にはギックリ腰味付きプレゼントを用意しているだろう。
あぁ、神は人の弱り所ほど、熱心に攻めてくる生粋のサディストなんだ。

腰が痛くて動けないから寝てるけど、暇すぎてつまらない俺

アメリカが俺の人生に攻め込んでくる

【無知なる俺の療養】

それまで俺はもう工場の仕事でいっぱいいっぱいだった。
仕事から帰ったら飯を食べ、酒を飲み、寝る。
それで仕事に行く。
これ以上タスクが増やせなかった。

テレビも見ない。新聞も読まない。
無知な動く筋肉となっていたのだ。

だから不安にならず良かったともいえる。

ギックリ腰が良くなり出し歩いたり持ったりができるようになったので、
俺は、会社にあいさつに行くことにした。

最初は闇の地獄だと思った職場をスイスイ入っていく。
見えてきた。
俺たちの休憩所の10畳のエアコンのない小屋だ。

職長Kがいる時間を目指して入った。
職長Kも俺のチームの人も工長もいた。

俺「ご迷惑をおかけしました。まもなく復帰できます!」
心「人員少なかったから喜ばれるぞ!」

K「そうか。よかったな。完璧になるまで家で寝てろな」
心「ん?Kなんか暗くないか?あれ周りの人もリアクションゼロか」

どうやら俺はその程度の男なのかもしれない。
やれやれ、と思ってまた家に帰った。

心「顔を出せただけよかったじゃないか」

俺は嫌われているのか、必要じゃないのか・・・
そんな小さな問題ではないことを直後に知る。

挨拶に行ったけど、冷たい職長Kと仲間たち

【世界的な神のデスギフト】

神が世界に平等に配ったギフト・・・それは、リーマンショック。

リーマンショックとは、2008年にアメリカの大きな銀行が倒れ、世界の経済が一気に冷え込んだ出来事である。

お金の流れが止まり、企業は『これ以上人を雇えない』と考え、急激にコスト削減に走った。
マジで走りまくった。ようはクビ斬りだ。
その影響は日本にもソニックブームのように押し寄せ、とくに製造業や工場では仕事が激減し、夜勤やライン生産が止まったのである。

と説明的な蘊蓄はどうでもいい。

もう気付く人は気付くだろう。

数日後、俺は腰がほぼ完治し元気いっぱいになった。
その旨を会社の総務部に電話で伝えた。

俺「お疲れ様です。溶解部の俺です。ギックリ腰治りました。明日からいけます!」

総務「よかったですね。ん。え。あ、はい。電話代わりますね」
男「総務部長だ。治ってよかった。今会社に来れるかい?」
俺「あ、いけます」

テレビも新聞も読まない俺は、労ってもらえるのかと会社に向かった。

会社に着き20分歩き、工場の端にある唯一清潔なエリアに行く。
そこには4階建てのビルがあった。

俺「入るのは初めてだ。なんかウキウキするな」

俺はノックして総務部の部屋に入ると、ゾッとするほど静かで重い空気が流れている。
スキップして入ったオレは、忍び足になってしまっていた。
俺は、恐る恐る一番近くの女性に話しかけた。

俺「総務部長に呼ばれたのですが、、、どこでしょうか?」
女「あのドアの中です。入ってください」
心「なんだこの気持ち悪さは」

トントン

俺「失礼します」
総務部長「入りたまえ」

総務部長の厳しい目線が今でもクッキリ記憶に残っている。
そして、さらに目に入ったものは!

心「おい、なんでTも隣にいるんだよ!」

総務部長「そのソファに座りたまえ」

俺は、ソファに座ると、総務部長が座り、その隣にTが座った。

総務部長「手短に、君はまだ若いから、早く伝えようと思った。今日で解雇だ。次の仕事を探しなさい」
俺「はい。はい?」

いろいろな思いが錯綜して『はい』と言ってしまった。

大体、Tがこの会社に入れたんだろう。
この辱めをTの前でいうのか?
若い方が早く解雇された方が確かにいいかもな。などなど

俺「わかりましたが、なぜですか?」
総務部長「リーマンショックだ。これから100人解雇し、減産する」
心「リーマンショックって、サラリーマンショックなの?」

馬鹿すぎた俺は、納得してしまった。

俺「お世話になりました」

俺は家に帰るときにむなしさと開放感の複雑な漬物になっていた。
味が濃いのに、後味スッキリ。そんな感じだ。

俺「また、無職か。両親に何て言おう。でも、俺のせいじゃない!」

明るく切り替えた。

得られたものはTへの羞恥プレイ。
失ったものは職業と給料と工場勤務前の普通の頭脳。
残ったものは屈強な体、モリモリの筋肉だけだった。

心「さよなら。職長K」

しかし、神は俺を何だと思っているのだろうか。
きっと、歯車の中を全力で走るハツカネズミだと思っているのだろう。
まったく、毎度神のプレイは癖が強すぎる。

俺は帰りの車の中でさわやかな風に当たっていた。

第6話完

次回予告

俺は、不貞腐れてた。どうしようもない。
なんせ、会社を神によって解雇されたのだから。

俺「飲まずにいられるか!」
この神は、俺が進むと後退する様に仕向ける。

俺「もう6年『八転び七起き』だぞ。中学生の時代くらいまで戻ってるわ!」

俺は何にもやることのないある日の昼、またやってしまった。
そう。
親友Tに泥酔で電話をかけてしまったあの最悪のレベルの神のギフトを。

――これは実話だ。

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会社を解雇されてなんかすっきりした様な気持ちの俺


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