神のデス・ギフト外伝#8腐敗から逃げるための趣味探し — まさかの展開で見つかった —
神のデス・ギフト短編集『腐敗51』の44番目の壺を開ける。
残り数話で書き終わるのに、完成が近づくほど寂しさが増す。
発酵物語とは、終わりが近いほど香りが強くなるらしい。
この短編も例外なく、すべて実話だ。
だから、安心してほしい。
俺が他人という“調味料”で味付けされ、火を通され、壺に詰められ、密封され、気づけば危険物指定されそうなほど発酵していく――“その匂い”を楽しんでもらいたい。
11月下旬にKindleで発売する時には、きっと神も笑ってくれるはずだ。
俺の腐敗は、読み物としては最高の酒になっている。
■逃げ場としての“趣味”
今日のテーマは趣味だ。
辛いことから逃げる場所こそ趣味。
だが、20代〜30代の俺には、それが無かった。
友人に聞かれても、胸を張ってこう答えた。
俺「寝るのが趣味」
もはや死人の趣味である。
そんなある日、俺は突然スーツで働く部署に異動になった。
スーツなんて持っているはずもない。
慌てて近くの紳士服店に飛び込むと、セールの山の中からやたら光沢のある1着を見つけた。
店員「これは“ドーメル”ですよ」
ドーメル?
当時の俺にとっては、呪文みたいな単語だった。
だが、世界的な高級生地らしい。
セールで4万円。買った。袖を通した瞬間に驚いた。
俺「なんだこれ…俺が…輝いている…?」
スーツの力は恐ろしい。
俺はそこから“生地と裁縫の世界”に落ちていった。
■まさかの沼落ち
気がつくと、メルカリで世界中の“生地のはぎれ”を集めていた。
小銭入れくらいなら手縫いで作れる。
何個か作るうちに、欲望はふくらむ。
俺「もっと…大きいものを縫いたい…!」
再びメルカリを漁り、10年落ちのミシンを5,000円で買った。
ボロいのに、起動するとエンジンのような音がして胸が高鳴った。
はぎれをパッチワークし、初めてトートバッグを作った時の快感。
あれは完全に“発酵の瞬間”だった。
気づけば、布関係の物は何でも自作するようになり、
いつの間にか「洋裁は俺の特技です」と堂々と言えるほど成長していた。
ミシンの針を通す間は、“雑念ゼロ”。
脳の回路が静かに整っていく。
あれはまさしく、**デフォルトモードネットワーク(脳の休息状態)**に入っていたのかもしれない。
■趣味は探すものじゃなく、落ちるもの
今思うと――
最初のスーツを買わされたことだけが“強制”で、
あとは全部、俺自身が“楽しい方へ”自然に傾いていった。
人間の趣味なんて、案外そんなもんだ。
つまらないと思っていたものの奥に、
とんでもない伸び代の宝が埋まっている。
未知との遭遇ほど、面白いものはない。
■今日の近況
風邪はやっと治った。
今は、義理人情よりも自己管理を優先し、定時退社している。
やることはやっている。
ならば帰る。それでいい。
ただ、病み上がりの体は重く、
1ヶ月前のぎっくり腰が、冬の冷気で復活してきた。
まったく、俺の体は発酵どころか再発ばかりだ。
年末まであと少し。
ここが踏ん張りどきだ。
この時期は“イレギュラー案件”が大量に降ってくる。
相方の先輩はそれを見ただけでアドレナリン全開。
しかし、興奮するだけで何もしない。
結果、俺のデス・ギフトが加速する。
俺「まぁいい。どうせなら、人の倍働いて倍強くなってやるか」
俺の酵母は、俺自身が育てる。
最高の吟醸酒になった時、
その酒で酔いしれるのは――
俺だ。
いいなと思ったら応援しよう!
もし神のデスギフトが少しでも「面白かった」と感じていただけたら、下の「サポートする」から応援していただけると、次回の記事作成の大きな励みになります。
よろしくお願いします。