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【BL小説】返事の要らない手紙ー第4章ー朝凪 誠Sideー

ー紫の書簡シリーズ4話目(朝凪 誠 /Makoto Asanagi Side)


■Monologe
諦めたふりも、強がった嘘も、全部脱いで、最後に残った言葉を束ねた造形がここに。
____Makoto Asanagi 朝凪 誠

|第4章 最後の一滴

本当は、ずっと言いたかった。
____俺は、藤守 綴流 ふじもり つづるのことが、好きだった。
年齢も、立場も、距離も、そんな事は全部わかったうえで、それでも、全身全霊で好きだった。俺にとって、藤守はポラリスみたいに特別だった。君はずっと僕の灯台としてそこにいてくれてたんだ

藤守は、気のいい後輩って呼ぶには繊細すぎて、ただの“いい子”って言葉に器用にまとめるにはあまりにも何層も感情が見え隠れして。君は静かに笑ってる時より、少しだけ拗ねてるときとか、悪巧みをしてるときとか、イタズラがバレて誤魔化そうと焦ってるときとか、反応に困って言葉に詰まってるときのほうが、俺にとってはずっと、ずっと何倍も愛しかった。

でも俺は、その気持ちを最後までちゃんと伝えなかった。伝える資格がないって思ってた。__伝えたら、なにか崩れてしまいそうで怖かった。だからそのまま、終わらせたんだ。「ちゃんとけじめをつけた」って言えば聞こえはいいけど、実際は藤守と向き合うことから逃げたんだと思う。
だって俺は、ずっと、未練だらけだったから。
もう藤守とはきっと会わないし、この後ろばかり振り返っている気持ちも”過去のことだ”って頭では理解しようとしてる。

____でも、何度も何度も夢に出てきたんだ。
君の優しい笑い声とか、俯いた顔とか、伏せた睫毛の瞬き、拗ねた時の口の曲がり具合、整えられた爪、笑うたびに揺れた前髪なんかが。
胸が締め付けられて、何回も苦しくて布団から跳ね起きて、
「どうしよう、まだ好きだ」
って思った。

___でも、ようやくこの気持ちが今、書けた。この手紙でもう、俺の気持ちもついに終われるのかもしれない。たぶん、ようやく振り返ってばかりの俺も前に進めると思う。
これは、もう恋じゃないのかもしれない。昔を懐かしんでいるだけかもしれない。でも、俺はあの時、確かに、藤守 綴流 ふじもり つづるを愛していた。 過去形にするのに時間がかかったけど、ようやく今、そう言えると思う。

君に伝えたかった最後の言葉は、「好きです」でも「ごめん」でもなくて、

「こんなにも長い間、君を好きでいさせてくれてありがとう。」

「俺は君を愛して幸せでした。」

…………だと思う。

心から、俺の愛したそのままの、君。
藤守 綴流 ふじもり つづるの幸せを祈ってる。今までも____そしてこれからも。

これが、最後の一滴まで君への思いを不器用に振り絞りながら書いた手紙なんだ。読みにくくておかしいと思うなら、せめてどうか嗤って。そして俺のことなど綺麗に忘れてしまえばいい。

なあ、藤守。
今年もまた、あの藤の花が咲いていたんだ。

窓の外は、少しだけまだ風が強くてさ。
ふわりと古びた時代遅れのカーテンが揺れて、淡い紫色の房がさらさらと光を受けて静かに……乱反射しながら揺れているんだ。甘い香りに誘われた熊蜂が離れがたそうに蠱惑的 こわくてきな蜜を吸おうと名残惜しげに飛び回っていて
__今、ようやく何かに気付いたかのように、塀を越え、太陽の光と風に誘われたのか、遠くの丘へと、飛び立っていったよ。

____藤花の蜜から、最後の一滴を飲み干して。


宛てのない想いが、飛び立った日のこと

読まれなくてもいい。でも、届いていたらいいと、今なら思える。
ようやく書けた俺からの不器用な手紙を_____今、君に送りたいと。

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