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「ガヤ」を探る 花蓮の現代アート展(中編)

11月に見た、花蓮美術館の展覧会のレポート、まずは「ガヤ」について説明した前編からの続きです。

変わりゆく現代の「ガヤ」

美術館の中央で展示されているのは、兒路の舞台作品でのレーザー光線を担当しているというジャン・アカ(張方禹)によるレーザー・アート作品 《Tminun》 。Tminun は、タロコ語で織物のこと。この写真ではわかりにくいけれど、横から見ると織り機に光の糸が張ってあるように見え、フロア上では、タロコ族の伝統的織物によく用いられる菱形模様が浮かび上がって、前後に動いていた。

Chang AKA《Tminun》
上から光線がクロスして降りてきていた
フロア上では、先祖の霊の目をあらわすとされる菱形模様が動く

そして、花蓮の紅葉村出身で、タロコ族とタイヤル族の両方にルーツを持つイダス・ロシン 宜德思•盧信 Idas Losin によるミュラル(壁画)。彼女は2003年にオーストラリア先住民によるアートを見たことで、自分のアイデンティティを探る作品を作り始めたそうで、近年は「アイランド・ホッピング制作プロジェクト」という、オーストロネシア語族の島々を巡って作品を制作し、同時に自分の体に現地の先住民の刺青を入れるプロジェクトを進めている。去年のシドニー・ビエンナーレにも出ていたし、最近まで大阪の国立民族学博物館で開催されていた「フォルモサアートー台湾の原住民藝術の現在(いま)」のポスターにもなっていたので、あっと思われた方もいるかもしれない。

Idas Losin 《Pusu》(遠景) 
お客さんがいて全体を撮れずに残念。もう少し左右に広がっています

作品タイトルは「源」をあらわす《Pusu》。イダスは2000年以降継続して銅門村で制作していて、刺青やトーテム画、壁画制作などのこれまでの活動のプロセスをここに描き入れたとのこと。描かれている山と岩は、台湾の中央に位置する南投県仁愛郷霧社の東南にある白石山の牡丹岩で、この地はちょうど東のタロコ族と西のセデック族の居住地の境界線に当たるそうだ。セデック族にもタロコ族にも、少し違ったバージョンのこの石にまつわる伝説がある。どちらのバージョンであれ、皆同じpusu から生まれたはずだと考えているイダスにとって、銅門での制作は自分の源と出会い直すプロセスだったという。

Idas Losin 《Pusu》(細部)彫り師が体への刺青(紋身と呼ばれる)を入れる様子が、サングラスの中に描かれている

タロコ族にルーツを持つラバイ・イヨン(林介文)も参加していた。彼女については、今春ハーパーズバザーアート誌にインタビューを寄稿したが、もっと早く彼女の活動を知っていたら、彼女が故郷の山奥の鉱山で2021年に主催した「裹山(山を包む)Dungku Asang」という展示プロジェクトを見られたのに、と悔しく思っている。記録を見る限り、歴史や今の世界の不均衡を凝視しつつ、織物で傷ついた大地を癒すような、壮大な展示プロジェクトだったのだ。ラバイのアートはパワフルで、織物などのテキスタイルと、大学で学んだ金属工芸や、スペインの大学院で学んだ空間デザインを組み合わせたダイナミックな表現が素敵だと思う。

Labay Eyong 《Sdmaan》

今回の作品は、オーストラリア北西部に残る岩絵が有名な、先住民の精霊ワンジナをモチーフにしている。台湾では2025年9月、花蓮県光復(グァンフー)に、馬太鞍(マータイアン/ ファタアン)渓上流に地震で自然形成されていた堰止め湖の水が押し寄せ津波のような甚大な被害をもたらしたが、ラバイはその少し前に、石が転がり水が大量に流れる予知夢のようなものを繰り返し見ている。この作品では、ワンジナとともにこの夢に言及したのだという。この記事のヘッダーの写真中の、糸で吊るされた大量の石もこの作品の一部だ。

実はラバイの作品倉庫は被災地にあり、倉庫の一階は洪水で泥だらけになった。そこには元々《赤い恐竜》《緑の恐竜》という、彼女が自分の子どもたちに捧げた立体作品が置いてあったが、ちょうど東京の「六本木アートナイト」に出していたために難を逃れたといい、不幸中の幸いでほんとに良かったなと思う。

Labay Eyong 《Sdmaan》(細部)

ちなみに彼女は来年オーストラリアと台湾が2022年から行っている文化交流プログラム(台澳藝術交流夥伴計畫)でオーストラリアに滞在し、ドキュメンタリー映像作家である夫のトマソ・ムッツィと一緒にワンジナの描かれている壁画にまつわるドキュメンタリー作品を制作予定で、そちらも楽しみだ。

後編に続く……

💎展覧会情報
Gaya 当代転生術 Transmigrating in the Contemporary
会期:2025/10/18- 11/30
会場:花蓮美術館

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