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台北ビエンナーレの時期に:台北市美の穴場スポットと小さな付録の展覧会

もうすぐ2年に一度、台北アート界隈がざわざわと華やぐ「台北ビエンナーレ」の時期がやってくる。

1998年の国際化から数えて14回目に当たる今回は、11月1日が一般公開日で、その前の二日間(10月30日と31日)が内覧会。国際フォーラムも予定されているし、これにぶつけて台北版ニュイ・ブランシュも11月1日の午後から深夜にかけて圓山周辺で行われるので、 アート好きで体力のある皆さんは、10/29-11/2という日程で台湾に来られると、きっと楽しいはずだ。(一日増やしたのは、鶯歌にある新北市美術館も見て頂きたいから。もちろん後ろに増やしても大丈夫)

台北当代芸術館ではラグジュアリー・ロジコの展覧会をやっているし、あと、10/30夕方にはチャーウェイ・ツァイ(蔡佳葳)の個展オープニング(TKG+)もあります。他にもたくさん企画があるようなので、また別ポストでアプデしようかな。

というわけで今回は、台北ビエンナーレの会場である台北市立美術館にあるおすすめ穴場スポットをご紹介。

それは地下の図書文献中心(ライブラリー&アーカイヴ)。カフェとオーディトリウムの間の廊下の突き当たりを右に曲がると、左手にある。

奥にはヴェネツィア・ビエンナーレの記者会見が行われたりするイヴェントスペースもあって、雑誌・書籍ともにかなり資料が揃っているし(日本語のアート雑誌もある)、落ち着いてゆっくり仕事ができる。(人が少なすぎてドキドキするかもだが)

という私自身も、そんなに入り浸っているわけではないけれど、行くたびに、もっと利用しなくちゃもったいない!と思う場所だ。


「書中自有美術館」

このライブラリーの片隅で、今ひっそりと開催されているのが、小さな資料展「書中自有美術館」。

台北市立美術館の定期刊行物『現代美術』が10年ほど前から取り組んでいた「書中美術館」という付録と誌上展覧会の企画だ。過去に参加した32人のうち、評判がよかったものや、再現しやすいものを中心に6人のアーティストを選んで、当時の付録を再現したり、関連作品やオブジェを並べた展示で、じっくり見ると色々面白かった。

企画を手がけたのは、『現代美術』の編集長で台北市美研究組組長の雷(レイ)さん。もともと展覧組(日本で言う学芸課)にいて、ヴェネツィアをはじめ色々な展覧会の担当学芸員を20年以上やってから、研究組に移った人だ。これまで、個展開催に伴うミュージアムグッズの開発に何度も関わった経験があり、常々、アートとオーディエンスをどう繋ぐか、ということに関心を持っている。

展示アーティストは、王雅慧(ワン・ヤーホェ)、石晉華(シー・ジンホァ)、吳瑪悧(ウー・マーリー)、姚瑞中(ヤオ・ルィヅォン)、陳慧嶠(チェン・ホェチャオ)、楊世芝(ヤン・シーヅ)の6人。日本ではそれほど知られていない人もいるけれど、ベテランで評価の高い作家ばかりだ。

マイケル・リンの付録はブックカバー。
おしゃれ。

袁廣鳴(ユェン・グァンミン)は本を燃やした?

ちなみに私の家人、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)は、展示には入っていないが、この企画自体には2020年の秋に参加している。

ユェンの初期の代表作に、1998年制作のインタラクティブ・インスタレーション 《眠れない理由》という作品がある。ベッドの上にプロジェクションされた映像の中で、シーツが引き裂かれたり、サーチライトが照らされたり、火が燃え上がったり。(ほんと初期からいや〜な作品作ってますよね、笑)

ユェンの『現代美術』の付録は、そのベッドの作品のコンセプトをベースに、スマホで雑誌の表紙にあるQRコードをかざすとAR(拡張現実)アプリをダウンロードでき、それ越しに雑誌の表紙を見ると、火が燃え上がるように見えるというもので、当時結構話題になった(と思う、たぶん)。

そのアプリをもう一度アップロードできないか、と企画時には声をかけてもらっていたのだけど、サンフランシスコの個展前で忙しすぎて対応できず、せっかくのチャンスを逃して残念だった。

台北市美のサイトより

王雅慧による写真と詩、石晉華の鉛筆パフォーマンス

以下に6人のアーティストを紹介してみる。王雅慧(ワン・ヤーホェ)は、日常や自然の観察と哲学的な思索を、詩的に、時にユーモラスに視覚化するアーティスト。石晉華(シー・ジンホァ)は、鉛筆を手に持って、何時間も歩きながら線を引く体を張ったパフォーマンスが有名なコンセプチュアル・アーティスト。2人は残念ながら、ここ数年で続けざまに物故作家になってしまった。

写真と詩による王雅慧の展示

雅慧は私とほぼ同い年なのだけど、2022年に癌で亡くなり、一昨年、漢方医である夫さんが頑張って小さくも素敵な個展を開き、アーティスト・ブックを出版した。また改めて紹介したいと思う。石晉華も去年、バイクの事故で亡くなって、人の命って時に本当に儚いなと思う。

付録はなんと直筆の鉛筆パフォーマンスのマルチプル作品だった

吳瑪悧(ウー・マーリー)初期作品《図書館》の細部

それから、今年日本の「アジアの女性アーティスト」というサイトでロング・インタビューに応じてもらった吳瑪悧(ウー・マーリー)さん。台湾を代表する女性アーティストでキュレーター、教育者。思い起こすと、『現代美術』の付録で、化繊の古着のワンピースが送られて来たなーと、うっすらとした記憶が……いつの間にかリサイクルに出してしまっており、申し訳なく思う。

マーリーさんの付録は古着

ただ、今回のこの展示で、マーリーさんの初期の代表作《図書館》の、シュレッダーで著名な本を粉々にして本の形に詰め直したものの、紙片の形が実はいろんな形をしていたことを知り、ちょっと興奮した。実は結構細部にこだわって制作されてたんだなと。マーリーさんの作品の視覚的こだわりはいつも非常にささやかなのだけども、ご本人の性格を反映し、シンプルでスッキリしているところが好きだ。

姚瑞中(ヤオ・ルィヅォン)の地獄空トランプ

ヤオは物書きでもあり、たくさん本を出している

姚瑞中(ヤオ・ルィヅォン)は、いつもめちゃくちゃたくさんのプロジェクトを同時進行で進めているエネルギッシュなアーティスト。私が台湾に来た頃に、すごく世話になった人でもある。青いボールペンによるドローイング+金箔の山水画は、結構見たこともある人が多いのでは?台湾中の廃墟や巨大な神像、仏像などの撮影は、ずっとライフワークとして続けていて、最近もまた写真集を出したようだ。この企画では、台湾中のお寺や霊山などを写真に収めたシリーズ「地獄空」を、トランプ仕立てにしている。台湾の民間信仰や大衆文化に興味がある方は、ぜひチェックして欲しいアーティスト。

陳慧嶠(チェン・ホェチャオ)のピンポン玉

占星術の達人でもある嶠の作品は、星や宇宙と関係がある

陳慧嶠(チェン・ホェチャオ)は、薔薇や針などをよく使うアーティスト。彼女の初期の針と羽毛の生えたベッドとか、針と糸が混じった作品とか、私はかなり好きだ。ちょっと魔女みたいな人で、そんなにしょっちゅう会うわけではないけれど、夫婦共に精神的に支えてもらってる人でもある。90年代末から取り組んでいるピンポン玉の作品は、宇宙と球体ということを探究しているものらしい。

彼女は、オルタナティブスペース伊通公園(IT Park)のディレクターとして長く献身的に台北アートシーンを支えた。その伊通公園は、この10月末に完全にスペースを片付けて、大家さんに返すという話。もうコンスタントに活動しなくなってだいぶ経つけれど、本当にひとつの歴史が終わってしまうのだなと、しみじみ寂しい。この話はまた今度。

(追記:2026年1月に書いた伊通公園の話はこちら)

抽象画家 楊世芝(ヤン・シーヅ)の作品制作の追体験

楊世芝の付録は、バラバラになったドローイングを繋いでみることが出来るというもの。彼女の制作過程を追体験できる

楊世芝(ヤン・シーヅ)は、1970年代にアメリカで美術を学んだ女性で、とても大きな抽象画を描く。台湾には抽象画に取り組む女性アーティストがたくさんいて、去年台北市美で開催された「飛地」という展覧会でも、大いに魅了された。楊の絵は、絶妙な空白と色合いとストロークが素晴らしく、東洋的な要素もあって、私はかなり好きだ。そしていつもおしゃれで、しかも高価ではない(ご本人曰く。全然見えないが!)シンプルでカジュアルな服を上手に組み合わせて着こなされていて、素敵なのだ。あんなふうに歳を取りたい。

というわけで、スキマ時間におすすめの穴場でした!

ちなみに、この展覧会の特設サイトでは、参加作家のインタビューなどが読める。『現代美術』のインタビューはどれもクオリティが高くて、超勉強になる。興味はあるけど華語はわからない……という方は、自動翻訳機能で読んでみてほしい。たぶん2割くらい誤訳だとは思うけれども、基本知識は得られるはずです。

💎 展覧会情報
「書中自有美術館──《現代美術》中的藝術家特寫」
会期:2025.06.14-(終了日未定)
会場:台北市立美術館 地下 図書文献中心

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