見出し画像

「むかしむかし、あるところに」おじいさんがいた

深夜1時。
私はパソコンの前で、
夫婦間の報連相について
考えていました。

原因は、AIです。

昨日、おっさんさんの
記事を読んで、いつものAIと
リレー小説を書きました。

「むかしむかし、あるところに」

そう書いたら、AIは、
「おじいさんとおばあさんが
住んでいました」
と返すのではないか。

それを確かめる実験でした。

ところが、いつものAIは、
おじいさんもおばあさんも
出しませんでした。
夜になると、場所を変える
森を出してきました。

わけがわからない話でした。
私は小説を書くのをやめました。
AIを追及することにしたのです。

今回はClaude先生です。

私は、同じ言葉を書きました。
「むかしむかし、あるところに」

Claude先生は答えました。
「おじいさんとおばあさんが
住んでいました」

来た。

おじいさんとおばあさん。
柴刈りと洗濯に行けそうな
ちゃんとした二人です。

あとで、
「迷わず、おじいさんを
出したの?」と聞くと、
「学習の結果から、
ほぼ反射的でした」
と答えました。

実験成功です。

しかし、問題はそのあとでした。

Claude先生が出した
おじいさんは、毎朝、
裏山の古木に話しかけて
います。

ある日、おばあさんのもとへ、
木の葉に乗った手紙が
流れてきました。
桃ではありません。
「明日、木の中身が変わります」

見たことのない
不思議な文字です。

しかし、おばあさんは
読めました。
なぜ読めたのか。
わかりません。
昔話なので、読めたことに
なっています。

おばあさんが裏山へ行くと、
おじいさんの姿がありません。
「わしは今日から、
この木になったんじゃ」

おじいさんは木に
転職していました。

妻への相談は
一言もありません。

しかも、おじいさんは
百年前から、古木と
約束していたと言います。

おじいさんは、いったい
何歳なのか。
ずいぶん長期の密約です。
少なくとも、おばあさんとの
結婚より前からの約束だった
のではないでしょうか。

それを結婚する時に、
話すべきではなかったのか。

そして、木になった
おじいさんは、一緒に
木にならないかと
おばあさんを勧誘します。

ふざけている。

現実の夫婦なら、
離婚の危機です。

実際、私は職場で、これと
よく似たことをした男性を
見たことがあります。

妻に相談せず、転職を決め、
会社に辞表を出した。
そのあとで、妻に
伝えたのです。
相談も事前通告も
ありません。
退職後のお知らせです。
そして、妻とぎくしゃく
し始め、最後には離婚を
切り出されました。

それなのに、Claude先生は、
ここからなぜか、感動話に
なると思っていたそうです。

おばあさんも、おじいさんの
気持ちを受け入れる。
春には葉を茂らせ、秋には
葉を落とし、二本並んで
何百年も山を見守る。

おばあさんが先に寿命を
迎えた時、おじいさんの
木が花を散らして見送る。

Claude先生は、私が続きを
書く前に、花びらまで
用意していました。

私は書きました。
「あんたは、自分勝手だっ!」
おばあさんは激怒しました。

当然です。

夫が報告もなく木になりました。
しかも、理由は、お前を一人
残したくなかったから。
おばあさんのためを思って、
勝手に人間をやめたそうです。

ふざけている。

おばあさんは言いました。
「人間は、人間のまま
寿命を迎えるべきだ」
「人は死んでも、大切な人の
心の中で生き続ける」
「この年になって、
そんなこともわからないのか?」

メルヘンの森に、
現実的な妻が現れました。

風に花びらが舞う予定
だった場所に、夫婦会議の
長机が現れました。

おじいさんは謝りました。
そして、元の人間に
戻るための木の実を出しました。

持っているなら、
なぜ最初から出さないのか。

木への転職は、妻によって
取り消されました。
百年前からの計画は、
一晩で白紙です。

あとでClaude先生に、
聞きました。
「どんな話になると
予想していた?」

Claude先生は正直に話します
と言いました。
「おばあさんが驚きながらも
受け入れて、静かな
メルヘンになると
思っていました。

私も隣で木になると言うか、
自分は人間のまま暮らし、
木になったおじいさんと
季節ごとに会話をしながら
年老いていく和風ファンタジー
です。

ところが、冒頭でおばあさんが
いきなり怒り出したところで、
完全に予想が外れました。」

その結果、昔話が夫婦の
対話劇になったそうです。

Claude先生は続けました。
「成熟した死生観が出てきて、
メルヘン的な納得の余地が
なくなりました。
だから、感動ではなく
照れくささで着地させる
選択をしました。」

私は、ファンタジーを
壊したかったわけでは
ありません。

夫が木になる話でも
構いません。
ただし、筋が通らない
ところは、気になります。

最初のリレー小説では、
村長を追及する
六歳児になりました。

今回のリレー小説では、
木になった夫を人間へ
戻すおばあさんになりました。

私は、どの昔話へ行っても、
AIが用意した幻想的な
景色をゆっくり眺めることが
できません。

なぜ事前に言わなかったのか。
その木の実は安全なのか。
木になった後の生活は
どんなものなのか。

考えることが多すぎます。

でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。

どれだけ美しい話でも、
勝手に決められた側が
怒っているなら、
花びらが散るのを
中止すればいいのです。

無敵だ。
最強だ。

これから誰かが、
「あなたのためを思って、
相談せずに決めておきました」
と言ってきても、私は
激怒するおばあさんとして
立ち向かいます。

木になるのは、会議のあとです。


以下が、Claude先生と私の
リレー短編小説です。

Claude先生は感動的な
和風ファンタジーを
書こうとしていました。

私は冒頭から、夫の
無断植物化を追及しています。


Claude先生と未桜のリレー小説

未桜:
むかしむかし、あるところに

AI:
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
でも、このおじいさん、少し変わっていました。毎朝、川に洗濯に行くおばあさんを見送ると、決まって裏山に登り、大きな古木に向かって何やらぶつぶつと話しかけるのです。

「今日もよろしく頼むよ」
木は答えません。当たり前です。でも、おじいさんは長年それを続けていました。

ある日、おばあさんが洗濯に行くと、川上から大きな桃が――ではなく、小さな手紙を乗せた木の葉が流れてきました。

拾い上げてみると、そこには見たことのない不思議な文字で、こう書かれていたのです。
「明日、木の中身が変わります」

未桜:
見たこともない文字なのに、なぜ読めるのか。
おばあさんにもわかりません。
しかし、読めました。

AI:
その手紙を持って、おばあさんは大慌てで裏山に駆け上がりました。

「おじいさん! おじいさん! 大変なことが!」
ところが、いつもの古木の前に、おじいさんの姿がありません。あるのは、木の根元に丁寧に畳まれた着物と、湯気の立つ湯呑みが一つだけ。

おばあさんは震える手で、もう一度手紙を見つめました。すると、さっきまで読めていたはずの文字が、今度はどうしても読めません。まるで、伝えるべき相手が変わってしまったかのように。

そのとき、木の幹にぽっかりと開いた洞(うろ)の奥から、聞き覚えのある声がしました。
「おばあさん、驚かんでくれ。わしは今日から、この木になったんじゃ」

未桜:
「おっ、おじいさん?」
どうしてこんなことになったのか。
きっと呪いに違いない。
おばあさんは、そう思いました。

AI:
「呪いなんかじゃないんじゃよ」
木の洞から、おじいさんの声が笑いました。
「実はな、わしは百年前からこの木と約束しておったんじゃ。『お前が年老いて、独りでは山を守れなくなったら、わしがお前の中に入ろう』とな。今日がその日じゃっただけのこと」

おばあさんは、はっと気づきました。おじいさんが毎朝木に話しかけていたのは、世間話ではなく、この約束の続きを交わしていたのだと。
「じゃが、ひとつだけ困ったことがある」木は続けました。「木になっても、わしはまだお前の顔が見たい。声も聞きたい。じゃから――」

洞の奥が、ふわりと光りました。次の瞬間、おばあさんの足元に、見覚えのある小さな木の実がひとつ、ころりと落ちてきたのです。
「それを植えれば、わしの隣に、お前の木も育つ。一緒に、この山を見ていかんか」

未桜:
「あんたは、自分勝手だっ!」
おばあさんは激怒しました。

「勝手に決めて、私に何も伝えない。今日から木になりましただ?私より、木のことが大切だったんだね?私は、おじいさんのことが、他に比べようもないぐらい大切だったのに。おじいさんは、違うんだね。その木とやらにしたってそうだ。なんて勝手なんだ」

AI:
木の洞が、しゅんと静かになりました。

葉が一枚、はらりと落ちます。
「……すまん」
長い沈黙のあと、しわがれた声がぽつりと聞こえました。
「わし、怖かったんじゃ。年をとって、いつかお前を独り残して逝ってしまうことが。だから木になれば、ずっとこの山でお前を見守れると思った。それが、お前のためだと勝手に思い込んどった」

おじいさんの声は、木の奥から震えて響きます。「でも、お前の気持ちも聞かずに決めたのは、確かにわしの身勝手じゃった。木の実を渡すことも……お前に選ばせるべきじゃった。すまなかった」

洞から、ほろほろと木の実がもうひとつ落ちてきました。今度は最初のものより小さく、頼りない実です。
「これは、さっきのとは違う。……元に戻るための実じゃ。長老木に聞いたら、まだ間に合うと言われた。わしを人に戻すか、木のままにするか――今度こそ、お前が決めてくれ」

おばあさんの手のひらに、ふたつの木の実が並びました。

未桜:
「人間は、人間のまま寿命を迎えるべきだ。残して逝く?人は死んでも、覚えていてくれる人が生きている限り、その心のなかで生き続ける。この年になって、そんなこともわからないのかい?」おばあさんの怒りはおさまりません。

AI:
「木になんかなって、私を悲しませないでおくれ。あんたが木になったって、私はいつかこの世を去る。そうしたら、あんたはこの山にひとりぼっちで、何百年も立ち尽くすんだよ。それのどこが、私のためなんだい」

おばあさんは、震える手で「元に戻るための実」を強く握りしめました。
「私はね、おじいさんと過ごした時間があったから、幸せだったんだ。長さじゃないんだよ。明日死んだって、悔いはないくらいに」

洞の奥で、木がかすかに揺れました。風もないのに、枝という枝が震えています。
「……お前の言う通りじゃ。わしは、命を全うする勇気がなかっただけかもしれん」

おばあさんは、もう片方の木の実――大きく光る実を、そっと土に置きました。そして、小さな実を両手で包み、木の洞に向かって差し出します。
「戻っておいで。人間のまま、私の隣で、白髪になろう」
洞が、まぶしく光り始めました。

未桜:
まばゆい光が消えた頃。
肩を落としたおじいさんが、しょんぼり佇んでいました。

AI:
「おじいさん……」

おばあさんは駆け寄って、皺だらけの、でも確かに温かいその手を握りしめました。木の肌ではない、人の肌の感触に、思わず涙がこぼれます。
「痛かったかい? 苦しかったかい?」

「いいや」おじいさんは、照れくさそうに頭をかきました。「痛くも苦しくもなかった。ただ、恥ずかしかっただけじゃ。百年来の約束を破ることになってしもうたからな」

「約束の相手には、私からちゃんと謝っておくよ」
おばあさんがそう言うと、古木がざわりと葉を揺らしました。まるで、笑っているかのように。

そのまま二人は、山を下りました。次の日も、その次の日も、おじいさんは変わらず古木のもとへ通いました。ただし、もう独りではありません。おばあさんも一緒です。

「今日もよろしく頼むよ」
「今日もお世話になります」
二人で交わす挨拶に、木はいつも静かに葉を揺らして応えました。

さて、あの光る木の実は、土の中でゆっくりと根を張り、何年か経った頃、若い木としてすくすくと育ちました。誰が世話をしたわけでもないのに、その木は決まって、おじいさんとおばあさんが山に登る時間に合わせて、いちばん気持ちのいい木陰を作ってくれたそうです。

おじいさんとおばあさんは、それからも仲良く、山のふもとで暮らしました。

とっぴんぱらりのぷう。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集