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AIに修正を頼んだら、少女がポストと話し始めた

深夜1時。
私はパソコンの前で、
横顔について考えていました。

原因は、AIです。
いや。正確には、顔です。

前回、私はぬり絵作家を
目指したはずなのに、
なぜか少女漫画家になりました。

問題は、女の子の顔です。

かわいくすると、
どこかで見たことがある。

既視感を消そうとすると、
今度は何かを召喚しそうになる。

私は、ぬり絵を作りたいのです。
異界の扉を開きたいわけでは
ありません。

何度やっても、カワイイと
ホラーの境界線が
上手くいかない私は、
考えました。

顔がだめなら、
顔を見せなければいい。

名案です。

人類は、問題が解けないとき、
しばしば問題そのものを隠します。

机の上が片づかないとき、
とりあえず引き出しに入れる。

読んでいない本が積み上がったとき、
とりあえず本棚の奥に押し込む。

顔がうまくいかないとき、
とりあえず見せない。

これは、生活の知恵です。

私はAIに頼みました。
「女の子の顔が見えない
構図にしてください」

さらに、念を押しました。
「女の子は猫をなでています。
顔は見えすぎないように
してください。
でも、不自然にならない構図に
するため、身体の位置は
斜めに変えてください。」

ここが大事です。

顔を隠す。
でも、不自然にはしない。
私は、かなりまともなことを
言っているつもりでした。

AIは、落ち着いた声で答えました。
「未桜さん、承知しました。
自然なポーズで、顔が見えにくい
構図にします」

絵が出てきました。

女の子は、猫をなでていました。
たしかに、顔は見えません。

でも、女の子はなぜか、
ポストの方を向いていました。

三毛猫をなでながら、
赤い丸ポストに何かを
誓っているようでした。

猫は猫で、
「この人の事情は知りません」
という顔をしていました。

これは、どういう状況なのでしょうか。

猫をなでたいのか。
ポストと話したいのか。
郵便制度に感謝しているのか。

赤い丸ポストは、ただそこに
立っているだけです。

私は、ぬり絵を
作っていたはずでした。

それなのに、いつの間にか、
赤い丸ポストに心を奪われる
少女と、事情を知らない三毛猫
という絵ができていました。

私はただ、自然に
女の子に猫を
なでてほしかっただけなのです。

猫をなでるなら、猫を見る。
この世でかなり基本的なことです。

しかしAIは、
顔を見せないという条件を
守るためなら、女の子の
視線をポストへ差し出します。

このままではまずい。

この絵をぬり絵にしたら、
見た人が混乱します。

なぜ、この子はポストを
見ているのか。
猫は何を知っているのか。
この町では、手紙を出す前に
猫をなでる決まりでもあるのか。

正面の顔は、既視感が出る。
顔を隠すと、構図が壊れる。

ならば、横顔です。
真正面ではない。
でも、完全に隠してもいない。

見える。
でも、見えすぎない。

これは、非常に日本的な解決です。

私はAIに頼みました。
「女の子は、自然な横顔が少し
見える程度にしてください。
猫をなでる動作と視線が
自然につながるようにしてください。
ポストではなく、猫を見ているように
してください」

私は、横顔に賭けました。

私は祈るような気持ちで、
生成ボタンを押しました。

数秒後、画像が出ました。

女の子は、横を向いていました。
三毛猫を見ていました。

顔も、怖くありません。
既視感も、ちょっとだけ
薄まりました。

完璧ではありません。

でも、ポストと語り合っては
いません。

それだけで、
私は救われました。

人間の勝利は、
いつも大きなものとは
限りません。

世界を変える日もあれば、
人間を人間らしく
戻す日もあります。

今日は、後者です。

でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。

正面から突破できないなら、
斜めから行けばいい。

無敵だ。
最強だ。

私はもう、ただのぬり絵作家
志望者ではありません。

かわいさと既視感とホラーの
あいだで、横顔という細道を
進む人です。

なお、出版までには、あと35枚
ほどのぬり絵が必要なようです。


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