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【第9話 仲間】サファイアを追いかけろ~とある会社の採用ストーリー~

「朝霧くん、ちょっといい?」
会議室から出てきた僕と山路さんの姿を捉えたのだろう。部長が僕に向かって声をかけてきた。
 
「……嫌です」
僕の口からは、条件反射のように拒絶の言葉が漏れていた。当然の反応だと思う。数日前、目の前にいる部長が発した「朝霧くん、ちょっといい?」というあの一言から、僕の不安を感じる日々は始まったのだから。
 
そんな僕の過剰な警戒ぶりを見て、隣に立つ山路さんがクスクスと肩を揺らして笑っている。
 
僕がこれ以上ないほど「嫌だ」という顔をしているのにも構わず、部長は人事部のメンバーを二人引き連れて、楽しげにこちらへ近づいてきた。そして、人の悪い笑顔を浮かべて聞いてくる。
 
「打ち合わせは、しっかりできたかい? 会議室に入る前よりは、ずいぶんと良い表情になっている気がするけれど。まぁ、目標は高いしプレッシャーもあるとは思う。だけど山路さんに相談しながら、3人で思い切ってチャレンジしてほしいんだ」
 
「3人で、ですか? 僕一人じゃないんですか……?」
予想外の言葉に、僕は思わず声を裏返して聞き返してしまった。
 
「え? うん、そうだよ。だって、あんな高い目標、一人じゃ無理に決まっているだろう。そもそも我が社には中途採用の専任担当がいるんだし、朝霧くんにはその『責任者』として動いてもらいたくてアサインしたんだから。
というわけで、中途採用担当の矢野くん、それから白石さんと3人で進めてもらうよ」
 
部長の後ろから顔を覗かせたのは、うちの会社の中途採用を支えている矢野くんと白石さんだった。
 
まずは矢野くん。僕の2つ下の後輩だ。僕は今の会社に入社してから6年間は営業畑を歩み、その後人事に異動して4年間教育担当を務めてきた。矢野くんとは営業時代、同じチームだったこともあって、プライベートも含めて付き合いは長い。

そして、もう一人の白石さん。
彼女は2年ほど前に中途で入社してきた。中途採用担当として入ったため、教育担当の僕とは直接の役割こそ違うが、同じ人事部なので当然よく知っている。僕が新卒・中途、両方の新入社員の受け入れ研修を担当していることもあり、人事部内でも比較的フランクに話をする間柄だ。
前職でも新卒1年目から採用に携わっていたそうで、採用実務の経験だけで言えば、この3人の中で間違いなく一番長い。実に頼もしい存在だ。
 

肩の荷が少し軽くなったのだろう。自分でも自覚できるほど、自然と顔の筋肉が緩み、笑みがこぼれていくのが分かった。

そんな僕の様子を見て、山路さんはやっぱり、隣で嬉しそうに笑っていた。

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