【第2話 理由】サファイアを追いかけろ~とある会社の採用ストーリー~
コンサルタントへ連絡を入れた3日後、僕は相談の機会を得ることができた。
コンサルタントの名は、山路という。
僕は山路さんへ、これまでの経緯を一通り伝えた。
この数年、採用がうまくいっていないこと。今期も20名の目標に対して未達で着地するであろうこと。そして何より、来期50名という高すぎる目標に対して、強い不安を感じていること――。
話し終えた僕に、山路さんは意外な言葉を返してきた。
「それで?」
……それで?
いや、困っているんだから助けてくれよ。相談に乗ってくれよ。僕は多少の苛立ちを覚えながら、心の中で叫んだ。
「何を聞きたいんですか?アサインされてから今日まで、朝霧さんは何をしました?」
山路さんは淡々と話を続ける。
「そもそも、なぜ今回、朝霧さんが責任者に選ばれたか知っていますか?」
知らない。そして、何もしていない。来期の計画だし、来期が始まるまではまだ1ヶ月ちょっとある。何より、今は今の目先の仕事がある。
「まぁ、その様子だと何も知らないし、何もしていない、という感じですかね」
山路さんはフッと息を漏らした。
「僕が言うのもなんですが、今回のミッションは難易度が非常に高い。だからこそ上層部は、社内で『採用への問題意識が一番高い人』を適任だと考えた。その前提を踏まえると、朝霧さんがアサインされたのは必然、ということみたいですよ」
ハッとした。
確かに僕は採用活動に関して、これまで会社にいろいろと提言をしてきた。
本来の担当は教育・人材育成だったが、新卒や中途の受け入れ研修を担当するなかで、現場のミスマッチや選考フローの歪みに、強い問題意識を持っていたのだ。
スキル面や価値観のミスマッチを感じることは、これまで何度もあった。早期離職の問題もある。配属先の受け入れ体制にも原因はあるだろうが、「面接で聞いていた話と違う」といった、入社後のギャップを理由にした相談も少なくなかった。変えなくてはいけないことは、たくさんある。だからこそ、僕はこれまで部長へ提案を続けていたのだ。
……そうか、だから自分がアサインされたのか。
「あ、思い当たりました? 朝霧さんがいつも部長にしている話は、まさにその通りだと、僕も部長から聞いています。変えるべきこともあれば、あえて変えなくてもいいこともあるのかもしれません。朝霧さんが実現したい、自社の採用のあるべき姿――その実現に力を貸してほしいと、部長から言われているんです」
胸のつかえが、すっと取れた。
この数日、「なんで自分が」とずっとモヤモヤしていた。だけど違う。
僕は、会社を変えるチャンスを貰ったんだ。
ようやく自分の中で、腹の底からやるぞという気持ちが湧き上がってきた。
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