AIDを決めて向かった勉強会。「子どもが欲しい」だけでは進めなかった。
1.受けたいのに進めない。4ヶ月の待機期間
TESE(無精子症の精子回収手術)で「精子は見つからなかった」と告げられ、私たちはAIDという道を選ぶことにした。
私たちがAIDをすると決めた都内の病院は初診の前に勉強会の参加が必須だった。
TESE手術を行った月が10月。
勉強会は2ヶ月ごとに偶数月に開催されており、10月の会はTESE手術後に調べた時にはちょうど過ぎたばかりで行けなかった。
12月はお互い仕事が繁忙期。
夫が勉強会の日に休みを取るのが難しかったため、残念ながら参加できず、その次の2月の勉強会を予約した。
4ヶ月待ち……。
この待ち時間は、とてももどかしかった。
もしAIDを検討し始めた人がいるなら、手術前や結果が出る前から次のステップを考えておくのがおすすめです。
病院によっては、私たちと同じように勉強会への参加が必要な場合もあるので、日程だけでも調べておくとタイムロスが減らせるかもしれません。
振り返ると、5月に無精子症がわかってから翌年2月まで、治療として進んだのはTESE手術だけだった。
とはいえ焦っても仕方がないので、子どもが早く欲しい気持ちはもちろんあったが、プライベートを充実させ、楽しむことにした。
夫とはちょっと遠出して散歩したり、仲の良い友達とはお泊まりでのんびり遊んだり。自分の周りには心から楽しい時間を過ごせる人たちがいて幸せだ。
暇な時は編み物を楽しみ、コースターや友達へのぬいぐるみキーホルダーを作っていた。
仕事は仕事で悩みもあるし繁忙期だったのと、資格手当のために色彩検定を勉強したりと意外と毎日が忙しく、妊活のことは忘れていた日が多かった。
(色彩検定は無事合格しました!)
私の場合は、無精子症と分かっていたからこそ、毎月の生理前に期待することがなく、穏やかに過ごせたんだと思う。
そして待ちに待ってついに、2026年2月、勉強会に参加した。
2.AID勉強会で知った「軽い気持ちでは進められない治療」
勉強会当日。
ようやく歯車が回り出した感覚があり、「やっと話が進む…!」と嬉しかった。
会場に着くと、続々と夫婦らしき男女2人組が入っていく。
私たちも続き、ビルの中に入ってみると、広めの部屋の中に席はほぼ埋まっていて、「こんなにたくさん、無精子症で悩んだり、同じようにAIDを選んだ夫婦がいるんだ」と思った。
それぞれに、ここへ来るまでの苦しさがあったのだと思うと胸が痛んだ。
勉強会は都内で行われ、夫婦2人で4,400円、約4時間。
長い時間ではあるが、テンポよく話が進み、動画を見る時間もあり、意外とあっという間だった。途中、お手洗いに行ける休憩もあった。
県外から参加している夫婦も多いようで、全国的にAID治療を行なっている病院が少ないことを実感した。
勉強会では、両面印刷された3枚程度のワークシートがあった。
AIDの歴史や子どもの権利、告知、身近な家族の理解などについて、話を聞きながら、問いに対する答えを各自書き込んでいく形式だった。
提出はなく、夫婦で見せ合うこともなく、自分と向き合うようなワークシートだった。
その中で特に印象的だったのは『AIDは「夫婦」「子ども」「ドナー」の3者の権利が一部分で重複する、難しい治療』ということ。
私は「子ども欲しい!AID受ける!早くやりたい!」くらいの気持ちだったので、改めてドナーさんや子どもに対しての権利などを真面目に聞かれると、「え…複雑すぎ…安易にAIDってできないんだ」という気持ちになった。
「まだ生まれていない子ども自身は選択できないこと」「私たちが経験したことのないことを経験させることになる」など、こうした話を聞くと、不安になる。
だけど、幸いなことに、病院側の方針は「子どもの福祉が最優先」。
私たちの「子どもの幸せを第一に考えたい」という思いが合致していたので、安心して任せられると思えた。
勉強会では他にも実際にAIDで子どもを授かった方の話を聞き、幸せそうにしている家族の姿が見られて、希望になった。
「生まれてすぐから告知を始め、年齢に応じて少しずつ出生の経緯を伝えていく大切さ」についても教えていただき、私たちにとって初めて考える視点だった。
他に印象に残っているのは、「不妊を受容することの大切さ」の話。
無精子症を2人でしっかり悲しみ、受け入れた上で、夫婦で足並みを揃えて進むことが大切だ、と仰っていた。
ワークシートの中には、夫婦でお互いについて考える質問もあった。
その中で、夫が書いていた言葉が今でも忘れられない。
『私は、あなたに_____と言われると嬉しいです』と埋める部分があった。
帰宅してから夫のワークシートを見てみると、
『私は、あなたに ”ごはんおいしいね” と言われると嬉しいです』と書いてあった。
夫は料理を作るのが得意で、よく作ってくれる。
夫らしい回答だった。
そんなことだったんだ。
私はこの言葉を読んだ瞬間、涙があふれて、声を出して泣いた。
私からしたら当たり前に言っているような些細なことが、夫にとってはすごく大切なことだったんだ、と。
夫はワークシートの余白に、「無精子症であることは想像を超える辛さだと思います」という文章へ向かって、「決めつけるな!」とパンチの絵を落書きしていて笑ってしまった。
不妊治療という大きな試練の中にいるけれど、私たちの幸せの根っこは、こういう「日々の小さなところ」にある。
それに気づけた時、勉強会で言われていた「受容」の意味がスッと自分の中に落ちてきた気がした。
私たちは2人で生きることになっても、十分幸せだ。
その土台があるからこそ、「できることなら子どもを授かりたい」という気持ちはずっとぶれていない。
足並みは揃っている。
そう思えた私たちは、次に必要な書類の準備へ、すぐに取り掛かることにした。
3.初診まで、まだ終わらない準備
勉強会が終わったら、どう進んでいくのかワクワクしていたが、治療に辿り着くまで、まだいくつもの段階が待っていた。
初診までに必要だったのは、戸籍関係の書類や同意書、身分証のコピーなど。
市役所に行く必要があるので、平日動ける日に早めに向かい、その他の書類も用意し提出した。
戸籍謄本を取得する際は「個人の情報をどこまで記載するか」を窓口で確認された。
必要書類の詳細は読んでいたつもりだったが、突然聞かれると戸惑った。
身分証としてマイナンバーカードを使う予定だったので、「マイナンバーの記載は不要」と判断したものの、提出前になって「もし間違っていたら、また市役所に行かないといけないかも!」と、少し焦った。
結果的には問題なかったが、不安な方は、病院の案内を窓口で一緒に確認してもらうと安心だと思う。
提出した書類の確認が終わると、病院からメールが届き、ようやく初診の案内が来た。
勉強会から約1ヶ月。
少しずつ動き出したことが嬉しくて、すぐに夫婦で日程を決め、初診予約を行った。
でも、この初診で治療が始まるわけではなかった…。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
無精子症での体験談を通して、「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえたらいいなと思います。
次回は、私たちがAIDを進める上で一番時間をかけて話し合った「倫理委員会へ申請する前の面談」について執筆する予定です。
倫理委員会は、AIDを受ける前に、夫婦の理解や意思を確認するための審査機関です。
私は正直、「ここまで話し合う必要があるの?」と思っていました。
でも、面談の準備を通して、私たち夫婦にとって本当に大切なことが見えてきました。
「実際に何を聞かれたのか」「どう答えたのか」
夫婦で話し合った内容も含めて、次回詳しくお話しします。
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