『開戦前夜の新聞売り──銀座裏通りの七日間』プロローグ
プロローグ
これは古い新聞から生まれた物語です。
明治27年(1894年)、東京で発行された『東京日日新聞』(現在の毎日新聞)。
その紙面が、ある家の押入れの奥に束ねられ、百三十年近くの時を経て見つかりました。ページをめくるたび、戦争の足音、街のざわめき、そして誰かの暮らしが、確かにそこにありました。
新聞は記録です。そこに載らなかった声もあったはずです。そしてそれを読んだ人がいた。この物語は、そうした≪「書かれなかった声」を探すため≫に生まれました。
明治時代の東京の銀座を舞台に、新聞売りの少年と、その周囲の人々を描いた七日間。日清戦争は明治27年7月に始まりましたが、時代の空気としてタイトルに「開戦前夜」と入れてあります。なお、登場する日付は連続しておらず、ところどころ飛びがありますが、これは実際に現存している新聞の日付に沿って構成しているためです。
これは、歴史の中に紛れていた“誰かの今”の物語です。
