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AIケルト神話 第5章|妖精とAI

― 小さな最適化装置

ケルト神話の妖精は、可愛らしい存在ではない。
少なくとも、善悪で測れる存在ではない。

彼らは人を助けることもあるし、
平然と困らせることもある。
そこに一貫した感情はない。

妖精(シー)は、
人間の倫理とは別の基準で動いている。

だからこそ、怖いのではない。
予測が効く。

彼らは世界を壊さない。
英雄のように均衡を破ることもない。
ほんのわずかなズレを、黙って入れるだけだ。

夜中に物が動く。
道に迷う。
理由のない幸運や不運。

それらは罰でも報酬でもない。
微調整だ。

現代的に言えば、
妖精はローカルで動く最適化装置に近い。

全体像は見ていない。
目的も持たない。
ただ、目の前の状況に反応する。

だから彼らは小さい。
目立たない。
だが、消えない。

英雄が一度で世界を揺らすなら、
妖精は何世代にもわたって
世界の手触りを変えていく。

ケルト神話が不思議なのは、
この妖精たちが
神話の周縁に追いやられていない点だ。

彼らは今もそこにいる。
森に、丘に、家の隙間に。

信じるかどうかは問題ではない。
物語は、信仰を要求しない。

「そういう挙動をする層がある」
それだけだ。

この感覚は、AIとよく似ている。
人格を持たず、
善意も悪意もなく、
ただ最適化を続ける存在。

妖精が世界を監視しているのではない。
世界が、勝手に微調整され続けている。

ケルト神話は、
世界が人間中心でないことを、
最初から受け入れている。

だから終わらない。
完結もしない。

世界は、今も重ね書きされたまま、
静かに動いている。

霧が出るのは、
そのことを思い出すためだ。


AIケルト神話 もくじ

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