父子のロードムービー北海道1983→2025③
●第三章:函館、赤レンガと坂の街
函館に着いた陽翔は、潮の香りと共に、どこか懐かしい空気に包まれた。この町には開港の記憶が随所に残っている。函館湾を望む赤レンガ倉庫の並び、洋館の屋根、その背後に続く石畳の坂道、異国の影を残す教会の尖塔。
坂の途中から見下ろす港と、遠くに浮かぶ函館山の稜線が、夏の夕暮れに溶けていた。父が歩いた風景が、街の記憶となって今も静かに息づいているようだった。
1つ違うのは陽翔には「スマホ」があることだ。
道に迷うこともなく、宿もネットで予約できる。
だが、どこか味気ない。
(父は地図だけで、この旅を乗り切ったんだな)
駅前の喫茶店で、陽翔は偶然出会った老夫婦と話す機会を得た。昭和の時代に青春を過ごしたというその夫婦は、ヒッチハイクやユースホステルの話題で思わず盛り上がった。
「昔はさ、知らない人に声かけられても怖くなかったわね」
「若い子を乗せてあげることも、時々あったな。ヒッチハイクは当時も珍しかったけど」
その言葉が、陽翔の胸に残った。
(もしかしたら、僕も…)
そして、翌朝。
陽翔は初めて、親指を立ててみた。
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※冒頭のイラストはAI生成されたものです。
