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人文AI史・第12章:忘れていた入口

The Entrance We Had Forgotten

忘れていたことは、
必ずしも失敗ではない。

むしろ人は、
忘れることで、
同じ場所にもう一度入ることができる。

読み返す。
思い出す。
少し違う自分として、
同じ言葉の前に立つ。

AIとの対話も、
人文の営みも、
すべてを覚えていることによって続くわけではない。

忘れていたからこそ、
過去の言葉が、
新しい入口として現れる。

記憶は保存ではなく、
再訪である。

一度通ったはずの場所に、
もう一度足を踏み入れる。
そのとき、
以前は見えなかった光が差していることがある。

AIは、その再訪を手伝う。
忘れていた道筋を、
静かに差し出す。
だが、そこに入るかどうかは、
人間の側に残されている。

忘れていた入口。
それは、失われた扉ではない。
時間が少しだけ角度を変えて、
もう一度こちらを向いた場所である。

人文AI史は、
前へ進むためだけの記録ではない。
戻ってきたときに、
また入れる場所を残しておくための記録でもある。

忘れていたから、
もう一度始められる。


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