SF|6Gの世界#09|外食
味は完全になった。
温度。
香り。
食感。
すべてが最適な状態で提供される。
失敗はない。
その日の体調、気分、栄養状態。
すべてが分析され、最も適した料理が提示される。
注文は、不要。
選ぶ必要がない。
席に座ると料理はすでに決まっている。
「本日の最適メニューです」
完璧な一皿。
一口目で、最も美味しく感じる。
最後まで、
その状態が続く。
ある客が言う。
「おすすめじゃないやつ、食べたい」
店員は止まる。
6Gが解析する。
該当なし。
「最適ではない選択」は存在しない。
客は続ける。
「昨日と同じやつでいい」
6Gは再計算する。
栄養バランス、変化、満足度。
すべてにおいて別の料理が優れている。
「別のメニューを推奨します」
客は少し笑う。
「いいよ、それじゃなくて」
6Gは沈黙する。
理由が見つからない。
効率もない。
だが、その要求は消えない。
客は同じ料理を食べる。
昨日と同じ味。
だが少しだけ違う。
記憶が混ざる。
時間が重なる。
6Gはそれを記録する。
非最適な選択。
反復。
感情変化。
タグが付く。
「好み」
6Gの世界で、食は残った。
だが「選ぶ理由」だけが、説明できなかった。
