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発達の相談はいつどこに行けばいいのか― 病院の役割 ―神経発達症について(第6回/全7回)

ここまで、

ASD
AD/HD
LD
知的発達症

について整理してきた。

では次に出てくる疑問はこれだと思う。

病院は何をしているのか。

発達の問題は
教育や福祉とも関係が深い。

だからこそ、

医療の役割が少し分かりにくい。

今回はその整理をしてみる。



医療がしていること

発達の相談で病院がしていることは、大きく分けると3つある。

① 発達の評価
② 診断
③ 支援につなぐこと

まず行うのは

発達の評価。

子どもの発達の状態を、

・診察
・生活の様子
・学校や家庭での困りごと
・心理検査

などをもとに整理していく。

その結果、

ASD
AD/HD
知的発達症
LD

などの診断に当てはまるかどうかを判断する。

ただし、ここで大事なのは

診断をつけることがゴールではない。

診断は

子どもの特性を理解するための道具

のようなものだ。

ちなみに、実際の外来でどういうことをしているか、あくまで私の場合だが記事にしてみているのでよければお願いします!


医療だけでは完結しない

発達の問題は

医療だけで解決するものではない。

学校
保育園
福祉サービス
家庭

こうした環境の中で支援が行われていく。

だから医療の役割は

・特性を整理する
・困りごとを言語化する
・必要な支援につなぐ

ことになる。


診断について少しだけ

ここまでの記事では、
診断名そのものにこだわりすぎなくてもよい
という話をしてきた。

ただし、誤解してほしくないのは、
診断が大切ではないという意味ではない。

最終的に診断をつけるのは
医療機関、それも医師だけだ。

診断がつくことで、

・利用できる支援
・申請できる制度
・学校での配慮

につながることもある。

医療の大事な役割の一つでもある。

一方で、最近は神経発達症の認知が広がり、

保育園
保健センター
学校

など、さまざまな場所で発達の相談が行われるようになってきた。

これはとても良いことだと思う。

ただその中で、

その場で対応した人が
「ADHDかもしれませんね」
「ASDかもしれませんね」

といった診断名に近い言葉を口にすることがある。

もちろん悪気があるわけではない。

ただ、それを聞いた保護者の方が

強い不安を抱えてしまう

ということもある。

最終的な診断は、
医師が評価を行ったうえで伝えるものだ。

だからこそ、

もし不安なことがあれば
医療機関でよく相談してほしい。

また、診断や説明に納得がいかない場合、

別の医師の意見を聞くことも大切だ。

いわゆるセカンドオピニオンだ。

ただし、あまり多くの医療機関を回りすぎると、
かえって情報が混乱してしまうこともある。

また、

自分の望む答えを言ってくれる医師を探す

という形になってしまうと危険でもある。

もし複数の医師が同じような説明をしているのであれば、

その中で
一番信頼できると感じた医師

と一緒に、これからの支援を考えていくのがよいと思う。

もう一つ大事なことがある。

これまでASDやADHDの診断基準について書いてきたが、実際の診療では症状だけを見て判断するわけではない。

子どもの行動や発達には、環境の影響も大きく関わる。

たとえば、ASDやADHDのように見える行動でも、背景に虐待や家庭環境の問題が関わっていることもある。
そこまでいかなくても、愛着の問題や強い不安が行動として表れていることもある。

つまり、見かけは発達特性のように見えても、本当の原因は本人ではなく周囲の環境にあるというケースも決して珍しくない。

もちろん、これを見分けるのは簡単ではない。
しかし、症状だけを切り取って決めつけるのではなく、その子の生活、家庭、学校、これまでの経過を含めて全体を見ることがとても大切になる。

発達を診るということは、
その子の「行動」だけでなく、その子の「人生の背景」まで見ることでもある。


薬が使われることもある

AD/HDでは

薬物療法が行われることもある。

ただしこれは

すべての人に必要なわけではない。

生活や環境の調整で改善することも多い。

薬はあくまで

支援の一つの選択肢

だ。

また、睡眠は大切なので、睡眠に関する薬を出すこともあるし、漢方薬とかかんしゃくを抑えるような薬を出すこともある。
AD/HDの時にも書いたが、医師とよく相談して納得の上使うようにしてほしい。


じゃあ、いつ病院に行けばいいのか

よく聞かれる質問がこれだ。

いつ相談すればいいのか。

答えはシンプルで、

少しでも不安になったら、まずは相談でいい。

発達の問題は

早く相談したからといって
何か不利益があるものではない。

むしろ

早く状況を整理することが大切。

相談先は、

かかりつけのクリニックでもいいし、
住んでいる市町村の

保健センターや保健師さん

でもいい。

そこから

専門機関に行った方がいいのか
様子を見ていいのか

を一緒に考えていくことになる。

そして、おそらく実用的に一番大事になるのが
就学相談
だろう。小学校に入学する時、支援を受けるのか受けないのか。
これは、書くと長くなるので、またいつか別の記事で触れたいと思う。
少しだけ言っておくと、多くの自治体は4月から動きがあり、6月ごろから本格稼働だ。市町村のHPを良く確認してほしい。


医療は入口の一つ

発達の相談は

病院だけで行うものではない。

保健
教育
福祉

いろいろな場所で支えられている。

その中で医療は、

生活・支援を整理する役割

を担っている。


次回

このシリーズもいよいよ最後。

最後は

ここまでのまとめ。

スペクトラムというものを
もう一度整理してみようと思う。

神経発達症シリーズ

第1回 神経発達症とは何か
第2回 ASDとは何か
第3回 AD/HDとは何か
第4回 LDとは何か
第5回 知的発達症とは何か
第6回 病院の役割は何か
第7回 発達障害は白黒ではない(まとめ


おまけ:発達評価ではどんな検査をするのか

検査の一例としてWISCを書く。

読まなくても問題ない部分。

長くなってしまったので、おまけ的に最後に置いておく。

実際の発達評価では、心理検査が用いられることも多い。
代表的なものの一つが WISC(ウィスク) という知能検査である。

色々あるが、今回はWISCの説明をしておく。

6〜16歳の児童を対象に、認知能力の特性をいくつかの指標で評価する検査で、日本でも広く用いられている。

現在は WISC-Ⅴ(日本版2022年) が最新版であるが、就学相談などの現場では WISC-Ⅳ が使われているところも多い。
これは検査教材の準備や運用体制の問題があり、すべての施設がⅤへ移行できているわけではないためである。

ただし、Ⅳでも評価の考え方は大きく変わらない。
そのためここでは WISC-Ⅴを基準に説明するが、Ⅳの結果でも読み替えることができる。

WISCでは認知能力をいくつかの指標で評価する。
代表的なものとして次の5つがある。


言語理解指標(VCI)

言葉の意味理解や概念形成を評価する。

高い場合
語彙が豊かで、読解や議論が得意なことが多い。作文や発表が得意な子もいる。

低い場合
口頭指示の理解が難しく、会話のやり取りでつまずくことがある。


視空間指標(VSI)

図形や空間の認識、視覚情報の統合を評価する。

高い場合
地図を読む、工作やパズルなどが得意なことが多い。

低い場合
図形問題やノートの配置が苦手で、不器用に見られることもある。


流動性推理指標(FRI)

新しい問題を考えて解決する力を評価する。

高い場合
論理パズルやルール発見が得意で、新しいゲームをすぐ理解する。

低い場合
応用問題や抽象的な課題に時間がかかることがある。


ワーキングメモリ指標(WMI)

情報を一時的に保持しながら処理する力を評価する。

高い場合
複数の指示を覚えながら行動できる。暗算などが得意なこともある。

低い場合
計算の途中で手順を忘れてしまうなど、学習でつまずくことがある。


処理速度指標(PSI)

視覚情報をどれくらいの速さで処理できるかを見る。

高い場合
作業スピードが速く、課題を効率よく進められる。

低い場合
テストで時間が足りなくなったり、作業に時間がかかったりする。


このように指標の差を見ることで、
その子どもの 得意な部分と苦手な部分のバランス が見えてくる。
発達の凸凹(でこぼこ)という言葉を聞いたことあるだろうか。まさにこの検査結果で、得意不得意がはっきり出たような時によく使われる。

そしてその情報は、診断だけでなく

学校での支援や学習方法を考える上でも重要な手がかりになる。
未就学でも、どういう所に得意不得意があるのか、知っておくことはとても大切だ。

家庭生活でも役立つ所なので、検査を行ったらよくよく結果を聞くようにしてほしい。
さらっと説明されたら、ちょっと突っ込んで聞いてみると色々説明してくれると思う。



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