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ミシュナ『Me'ilah』研究 第6回:minchah(穀物の献げ物)の法理構造――kli shareitによる聖別からkometz(コメツ:一掴み分)のhaktarah(ハクタラー:焼くこと)、及び灰の場所(beit hadeshen)に到るまでのme'ilahの適用と解放のタイムライン

*本稿は口伝律法ミシュナ第5部『Kodashim(コダシーム)』に属する『Me'ilah』の第6回目の解説である。

 今回は『Me'ilah(メイラー)』第2章8節の法理を取り上げ、穀物の献げ物(minchah:ミンハー)がkli shareit(奉仕の器)によって聖別され、「本質的な聖性(Kedushat HaGuf)」を帯びる瞬間から、tevul yomやmechussar kippurim、linah(時間経過)による不適格化までの法理構造を詳解。

 更にkometz(コメツ:一掴み分)のhaktarah(ハクタラー:祭壇で焼くこと)が家畜のいけにえにおけるzerikah(血の振りかけ)に相当するハラーハー的意義、そしてエルサレム城壁外の「灰の場所(Beit HaDeshen)」への移送によるme'ilah解放の最終タイムラインまでを、緻密な一次資料(トーラ、ミシュナ、関連文献)に基づいて論証する。


前回の振り返り:shtei halechemとlechem hapanimにおけるKedushat HaDamimからKedushat HaGufへの変容プロセスとme'ilah解放トリガーの再確認


 前回は、ミシュナ『Me'ilah』第2章6節~7節を取り上げ、七週祭(Shavuot)の「shtei halechem(2つのパン)」と、安息日ごとに交換する聖所の「lechem hapanim(供えのパン)」という2種類の穀物の献げ物を扱い、me'ilahが適用されるタイミングと、me'ilahから解放されるタイミングについて解説した。

 主な内容は以下の通りである。

【1】shtei halechem(2つのパン)の法理構造

 Shavuotにおいて2匹の和解の献げ物(shelamim)の子羊と共に献げられるパンについての規定である。

①me'ilahの適用開始

 パンの原材料が神殿の資金で購入された瞬間からme'ilahの対象となる。

②「パン」としての地位確定

 オーブンで焼かれ表面が固まると、単なる「生地」から「パン」へとステータスが変化する。この段階に達すると、tevul yomやmechussar kippurimとの接触によって不適格(失格)になる法的性質を担う。

③me'ilahからの解放

 伴う子羊が屠殺され、その血が祭壇に振りかけられる(zerikah)と、パンは祭司が食べられる状態になる。この瞬間、me'ilahの対象から外れ、代わりに不適切な意図(piggul)や残り物(nosar)などについて有責性が生じる。

【2】lechem hapanim(供えのパン)の奉仕段階

 聖所の「金の机(Shulchan)」の上に置かれる12個のパンについての規定である。

①me'ilahの適用と不適格化

 shtei halechemと同様、原材料の購入時からme'ilahに従い、オーブンで焼成されることで「パン」としての地位を得て、不適格化の条件が整う。

②乳香(levonah)の役割

 パンと共に置かれた乳香が祭壇で焼かれることが、me'ilah解放のトリガーとなる。

③解放のタイミング

 新しいパンが供えられる安息日に、古いlevonahが祭壇で燃やされることで、古いパンは祭司の食用として許可され、me'ilahから解放される。

【3】聖性の分類と共通の法理

①聖性の違い

 家畜や鳥は「本質的な聖性(Kedushat HaGuf)」を持つのに対し、穀物の献げ物であるこれらのパンは「金銭的価値の聖性(Kedushat HaDamim)」を持つと分類される。

②共通の分岐点

 どちらのパンも、「表面の固まり(焼成)」によって「本質的な聖性(Kedushat HaGuf)」を持つようになり、不適格化の準備が整う。

 また「奉仕の完了(血の振りかけ、またはlevonahの焼くこと)」によって、神のものから祭司のものへと移り、me'ilahから解放されるという共通のタイムラインを持っている。

 以上の内容に不安を感じる方は、下のリンクから確認して欲しい。

◉ミシュナ『Me'ilah』研究 第5回:「shtei halechem」と「lechem hapanim」の聖別構造――「生地」から「パン」への変容がもたらす不適格化とme'ilah解放のタイムライン

https://note.com/mishnah/n/n531020a0951e


ミシュナ『Me'ilah』2章8節:minchahの聖別、kli shareitによる不適格化因子の発生、kometzおよび残余部分におけるme'ilahの非対称的適用規定


 今回はその続きで、「Me'ilah」2章8節からである。まずは本文を引用する。

 minchahは聖別してからme'ilahに従う。一端kli shareitで聖別されると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過によって不適格になるものとなる。kometzが祭壇の上に献げられると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になる。残りのものはme'ilahに従わない。しかしkometzはme'ilahに従い続ける、灰の場所に着くまでは。

(Me'ilah 2:8)

穀物の献げ物(minchah)における奉仕手順


 本節を理解する為には、穀物の献げ物(minchah:ミンハー)について復習する必要がある。

 minchahにはその全てが祭壇で焼かれるものと、kometz(コメツ)と呼ばれる分量のみ祭壇で焼かれるものがある。本節で扱うのは、kometzと呼ばれる分量のみ祭壇で焼かれるminchahである。

 minchahの奉仕手順は以下の通りである。

①個人が自宅から minchah を持参し、中庭(azarah:アザラー)に到着した際にそれを kli shareit(クリ・シャーレット)に入れる。

 kli shareitは文字通りには「奉仕の器」を指す。

②minchahの上に油と levonah を置き、それを祭司の元へ持って行く。

③祭司は minchah の入った器を祭壇の南西の角へ運ぶ。

④祭司はminchah の一部を[指で]一掴み分すくい取り(これを kometz と呼ぶ)、その kometz を2番目の kli shareit に入れる。

⑤levonah を集めて kometz の上に置き、それらを祭壇の頂上へ運んで焼き尽くす。

⑥kometz が献げられた後、minchah の残りの部分は食べる。

穀物奉仕の4大要素(kemitzah・配置・holachah・haktarah)と家畜のいけにえにおける「血の奉仕」との構造的相同性


 さて、minchahの奉仕には4つの不可欠なステップがあり、これらは家畜の献げ物における血の奉仕の4つの不可欠なステップに対応している。

(1)kemitzah(ケミツァー)

 祭司が手で minchah の一部(kometz)をすくい取ること。これは動物のshechitah(シェヒター:屠殺)に対応する。

(2)配置

 kometz を 2番目のkli shareit に入れること。これは動物の血を kli shareit で受けるカバラ(kabbalah)に対応する。

(3)holachah(ホラハー)

 祭司が kometz を祭壇まで運ぶこと。これは家畜のいけにえの血を祭壇まで運ぶことに対応する。

 家畜のいけにえの場合もholachahと呼ぶ。

(4)haktarah(ハクタラー)

 祭司が祭壇の上で kometz を焼くこと。これは動物の血を祭壇に注ぐゼリカー(zerikah)に対応する。

 祭壇でkometzを焼くことは、家畜のいけにえを焼くことに対応しているのではなく、zerikahに対応している点に注意を要する。つまりkometzはいけにえの血に相当することになる。

 ただし、Rambamは、kometzはemurin(祭壇で焼く脂肪部分)に対応していると主張する。

 以上の前提をもって、再度ミシュナ本文を引用する。

口頭宣言による聖別、kli shareitによるKedushat HaGuf、および不適格化(linah・tevul yom・mechussar kippurim)のハラーハー的条件

 minchahは聖別してからme'ilahに従う。一端kli shareitで聖別されると、tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過によって不適格になるものとなる。kometzが祭壇の上に献げられると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になる。残りのものはme'ilahに従わない。しかしkometzはme'ilahに従い続ける、灰の場所に着くまでは。

(Me'ilah 2:8)

 冒頭の「minchahは聖別してからme'ilahに従う」の「聖別」は口頭による宣言で足りる。

 上で復習した通り、口頭での聖別が行われた後、minchahの小麦粉と油はkli shareit(聖なる奉仕の器)に入れられる。

 これにより、minchah は「本質的な聖性(Kedushat HaGuf:クドゥシャット・ハグフ)」を帯びることになり、tevul yom、mechussar kippurim、あるいはlinah(リナー:規定された時間を経過すること)による失格の影響を受けるようになる。

 ここで細かい点であるが、以下の点を注記しなくてはならない。

調理済みパン(challot・rekikin・minchat machavat・minchat marcheshet)の破砕とkemitzah


 上ではkometz の内容は小麦粉と油の混合物として記述しており、レビ記2章1~3節のminchat soletto(ミンハット・ソレット)の場合である。

 その他の穀物の献げ物であるレビ記2章4~9節の場合、すなわち下の4つの場合は、献げる者が調理されたパンを祭司のもとへ持って行く。その後に祭司はパンを砕き、kemitzahの際にその破片をすくい取る。

①challot(ハロット):レビ記2章4節

②rekikin(レキキン):レビ記2章4節

③minchat machavat(ミンハット・マハヴァット):レビ記2章5~6節

④minchat marcheshet(ミンハット・マルヘシェット):レビ記2章7~9節

 これら4つの場合、パンがkli shareitに入れられた時、「tevul yom、mechussar kippurim、時間の経過によって不適格になるものとなる」。

 次の「kometzが祭壇の上で献げられると、それらはpiggul、nosar、tameiの為に有責になる。残りのものはme'ilahに従わない」について解説する。

 上で述べた通り、kometzが祭壇の上で焼かれることは、家畜のいけにえのzerikahに対応する。この時に祭司は残りのパンを食べることが出来る。

 そこでkometzが焼かれる時、祭司が食べる分はme'ilahから解放される。他方でpiggul、nosar、tameiについて問題になる。

me'ilah解放の終着点:エルサレム城壁外の「灰の場所(Beit HaDeshen)」への移送プロセス及び「内側のchatat(贖罪の献げ物)」とのハラーハー的共通性


 最後に「kometzはme'ilahに従い続ける、灰の場所に着くまでは」とある。祭司が食べる分は、kometzが祭壇で献げられるとme'ilahから解放されるが、kometzの方はまだ解放されていない。

 以前の記事で、例えばYom Kippurにおいて、大祭司と祭司の贖いの為に献げられる贖罪の献げ物のように、「内側のchatat」の肉の部分は「灰の場所」で焼かれることを学んだ。

 この場所はエルサレムの城壁の外であった。本節のミシュナの「灰の場所」はこの「エルサレムの城壁の外の灰の場所」である。祭壇上の灰が溜まった時、随時この場所へ運ばれる。kometzが焼かれて灰になり、ここへ運ばれた時にme'ilahから解放されることになる。

 今回の内容は以上である。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を進めるためのご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉【シリーズ目次】ミシュナ『Me'ilah』法理研究

https://note.com/mishnah/n/n8ab1e0588261


 全記事の目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.2】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.201〜No.300)

https://note.com/mishnah/n/na80e65fb273e


◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334

(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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