『静寂』
600文字
一月十七日の僕へ
『静寂』
ぼくはあのとき
確かに息絶えた
ぼくはあのとき
もうダメだと覚悟した
ぼくはあのとき
つぶやいた 何度も何度も
祈りのようだった
生きたいのだと
ぼくはあのとき
深呼吸した
ふかくふかく
冷たい手を ただみつめていた
ぼくはあのとき
だから手のひらを愛しく思った
その手につかむ生を感じて
夜が明けるまでのこと
ぼくはあのとき覚悟した
もう二度と会えぬかと
心配かけてしまった
ごめん、と謝った
ぼくはあのとき決意した
必ず生きぬいて
誰かに会いたい
まだ見ぬ君に
ぼくはあのとき知らずにいた
たくさんの人が待っていること
三十年後に会えること
微塵も知らずにいたことを
ぼくはあのとき 忘れたかった
炎のなかに悲愴と泣き顔
瓦礫に目を背けたこと
交錯しているこの世界
明日の希望はどこにあるのか
疑って 絶望してもなお
やがてぼくは
君に頼った
食料を届けてくれたね
手紙を ありがとう
確かにぼくは生かされた
極限を生きていた
ぼくはあのとき
泣きながら感謝した
みんながいてくれた
何もできないぼくにさえ
君は微笑んだ
ぼくはあのとき
命を知った
自分だけのものではない命
たくさんの祈りを
自分の願いは綺麗事じゃないんだ と
乗り越えた命の余生の叫びで
ぼくは今日も生きている
青空に響きわたる命なら
誰もが美しくて尊くて
いま 生かされている
今日もここにいる
公園に花が咲いたらいいな
君を感じて生きている
君を大切に思って生きている
今日もあの日の空を見上げている
平穏無事で と願う心は
ぼくの魂の歌だと伝えている
ぼくはあのときからだった
ぼくになったのは
一月十七日、まだ何者でもない君へ贈る
ⓒべじさん
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