役職定年制を変更することは妥当か?(平成26年1月24日熊本地裁)
概要
被告・信用金庫との間で労働契約を締結しその後退職した原告らが、被告が導入した役職定年制に伴う就業規則の変更は無効であると主張し、被告に対して、労働契約に基づき役職定年制が適用されなかった場合の給与、賞与及び退職金と原告らに実際に支払われた給与等との差額及びこれに対する遅延損害金の支払いをそれぞれ求め、さらに原告のうち1名は、不法行為に基づき、実際に支払われた雇用保険手当の基本手当との差額及び遅延損害金の支払いを求めた。
結論
一部認容、一部棄却
要旨
本件就業規則の変更は,労働者の受ける不利益の程度が極めて大きく,労働条件の変更の必要性の程度が信用金庫の破綻等の危険が差し迫っているほど高度なものではなく,代替措置も不十分であり,職員らに対する意見聴取や説明の経緯,多くの職員が本件就業規則の変更に同意していること等の事情を考慮しても,合理的なものと認められない。
しかしながら、合理性がない就業規則の変更であっても,当該就業規則の変更について労働者の個別の同意がある場合には,当該労働者との間では就業規則の変更によって労働条件は有効に変更されるが,この同意は労働者が当該就業規則の変更によって生じる不利益性について十分に認識した上で,自由な意思に基づきその意思を表明した場合に限って認められる。
本件就業規則の変更に際して適法な手続きでなく,また職員らにおいて正確な賃金額を把握することが困難であったとしても,消滅時効の援用が権利の濫用に当たらないが、本件就業規則の変更が合理性を欠き無効と判断されることは,信用金庫において判例に照らして予見し得たというべきであるから,信用金庫には過失があり不法行為が成立する。
