前年10月の消費マイナス3%を、秋の失速と読んではいけない【月刊販促設計 2026年10月号 第1回】
このシリーズについて
「月刊販促設計」は、総務省統計局が毎月発表する家計調査データと気象庁の気象データを活用し、3か月先の販促計画を立案するための実践的な情報を提供するシリーズです。
こんにちは。ミタカ販促設計ラボ室長のサタケです。
直近の投稿として、4月号の検証記事を公開しました。これまでの検証記事とは形式を変え、5項目採点から「家計調査から学べること」という形式に切り替えました。その中で改めて確認したのは、「名目と実質は別物として読む」「大口費目の振れに引っ張られない」「前年の急伸・急落は翌年のベースになる」という3点でした。
今号では、この3点がすべて同時に当てはまる月として、2025年10月のデータを読み解きます。
まず結論から言います。
2025年10月の消費支出は実質3.0%の減少でした。6か月ぶりの実質減少という数字は、一見すると「秋消費の失速」に見えます。しかし中身を確認すると、失速ではなく「特定の費目の急落」と「気象の二極構造」が重なった結果でした。
このシリーズで使っているのは前年同月の家計調査データです。2025年10月に何が起きたかを確認することと、2026年10月にどう設計するかは別の話です。この前提を維持したまま進めます。
2025年10月に何が起きたか
全体像
2025年10月の消費支出は306,872円で、前年同月比で実質3.0%の減少、名目0.3%の増加でした。前月比(季節調整値)は実質3.5%の減少で、2025年9月の0.7%減からさらに大きく落ちました。6か月ぶりの実質減少という結果でした。
勤労者世帯の実収入は実質0.1%の減少でした。2025年9月の±0.0%から再びわずかにマイナスに転じました。可処分所得は実質0.4%の減少でした。平均消費性向は67.9%で、前年同月(67.6%)より0.3ポイント高い水準でした。2025年9月の82.1%と比較すると14.2ポイントの急落であり、9月にSW需要で高まっていた消費性向が10月に大きく引き締まったことが確認できます。
何が動いたか
被服及び履物は6.3%の増加で、2か月ぶりの実質増加でした。2025年9月の7.4%減から方向が反転しました。
保健医療は3.6%の増加で、5か月連続の実質増加が続きました。
教育は7.6%の増加で、2か月ぶりの実質増加でした。
教養娯楽用品はパソコンを含む形で0.31ポイントの寄与度を示しました。
何が止まったか
交通・通信は9.2%の減少で、9か月ぶりの実質減少に転じました。この費目を最も大きく引き下げたのは自動車等購入で、前年比25.3%の減少(寄与度マイナス0.86ポイント)でした。2025年9月に52.3%増だった費目が、翌月に25.3%減へと急落した形です。
通信は14.5%の減少(寄与度マイナス0.58ポイント)でした。携帯電話通信料が主な要因です。
教養娯楽は0.6%の減少で、3か月ぶりの実質減少でした。内訳を見ると、宿泊料が大幅に減少しています。2025年9月のSW需要で動いた旅行費が、10月に引き締まった動きとして読み取れます。
食料は1.1%の減少で5か月連続の実質減少が続きました。住居は9.1%の減少で4か月連続の実質減少でした。光熱・水道は3.2%の減少で2か月連続の実質減少でした。
2025年10月の消費全体への寄与度の構造
消費支出全体のマイナス3.0%を費目別の寄与度で見ると、自動車等関係費(マイナス0.82ポイント)と通信(マイナス0.58ポイント)の2費目だけで、マイナス1.4ポイントを占めていました。次いでその他の消費支出(マイナス1.09ポイント)が続きます。
逆に言えば、これらの費目を除いた日常消費の領域は、全体ほど大きく落ちていませんでした。
「秋の失速」という読み方が外れる理由
2025年10月を「秋消費が失速した月」と読むと、設計の方向を誤ります。
失速したのは「秋消費」ではなく、自動車購入という変動性の高い費目と、通信費という構造的な変化を含む費目でした。この2つは、スーパー・ドラッグストア・ホームセンターといった日常消費に近い業態と直接的な関係を持ちません。
4月号の検証記事で確認した「大口費目の振れに引っ張られない」という視点をここで当てはめると、2025年10月の3.0%減は業態によって受け止め方がまったく異なります。自動車販売業は直撃を受けた月でしたが、食品・日用品を主体とする小売業にとっては、「自動車購入の急落が全体を引き下げた月」であって、「日常消費が失速した月」とは別の話です。
家計調査全体の増減率だけを見て、自分の業態の状況を判断することは、2025年10月には危険な読み方です。
自動車購入の急落は予測できたか
4月号の検証記事で確認した「前年の急伸・急落は翌年のベースになる」という視点を、ここで時系列に当てはめます。
2025年8月の自動車等購入:前年比+162.1%
2025年9月の自動車等購入:前年比+52.3%
2025年10月の自動車等購入:前年比▲25.3%
8月・9月と連続して大幅に伸びていた費目が、10月に急落しました。9月号の第3回で「自動車購入は変動性の高い費目として扱い、8月・9月の大幅増が2026年の比較ベースを高くする」という示唆を示しました。前年(2025年)の実績として見ると、8月・9月に急伸した後、10月に25.3%の急落が起きたことが確認できました。この流れは、3月号検証(42点)で学んだ「急伸した費目の翌年は反動リスクを持つ」という教訓と同じ構造です。
2026年の設計において、この10月の急落(▲25.3%)が今度は2026年10月の比較ベースを低くします。2026年10月は自動車購入がプラスに出やすい条件が揃う可能性があります。ただし変動性の高い費目であることは変わらず、過信は禁物です。
気象との関係:二極化した10月
2025年10月の気象は「上旬・中旬の記録的な残暑」と「下旬の急寒」という二極構造でした。
上旬の平均気温は全国的にかなり高く、北日本で平年より2.2℃高、西日本で3.0℃高、沖縄・奄美で2.9℃高で、1946年以降の10月上旬として1位または1位タイの高温でした。中旬は西日本で平年より4.6℃高で、10月中旬として1946年以降1位の高温でした。12日には鹿児島県の肝付前田で歴代最も遅い猛暑日が観測されています。
一方、下旬は北・東日本でかなり低く、シベリア高気圧が顕著に強まりました。
この二極構造が消費行動にどう影響したかを、被服の動きで確認できます。2025年9月に7.4%減だった被服が、2025年10月には6.3%増へと反転しました。上旬・中旬の残暑が続く中では秋物は動きにくく、下旬の急な寒さが到来したタイミングで秋物が動いた可能性があります。「10月になれば秋物が動く」という前提ではなく、「気温が十分に下がったときに動く」という実態が、前年データで確認できました。
2025年10月の構造をひとことで言えば
消費支出全体は実質3.0%の減少でしたが、その大部分は自動車購入の急落と通信費の減少という、日常消費とは直接関係の薄い費目によって説明できました。被服は9月の大幅減から反転し、保健医療は5か月連続で増加を続けました。気象は上旬・中旬の記録的残暑と下旬の急寒という二極構造で、消費行動への影響が月の中で大きく変化しました。これが2025年10月の実態として前年データから確認できたことです。
次回予告
第2回では「10月は秋物が動く月だと思っている人ほど、タイミングを外す」として、2025年10月の気象二極構造と被服の反転を踏まえ、2026年10月の設計においてどのタイミングで何を判断するかという思考軸を整理します。
プロフィール
室長について
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役
小売・サービス業の現場で、生活者視点を軸にした販促戦略を提案。マーケティングプランナーとしての経験(20年以上)×データ分析×AI活用による「ハイブリッド販促設計」で、「伝わる販促」「来店してもらえる仕掛け」づくりをサポート中。
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チップは今後の調査・記事制作の資金として大切に使わせていただきます。──室長・サタケ