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NPU:究極の生命単位⑩制御的自己協同遷移

続編

文献情報

Ling, G. (2007). Nano-protoplasm: The ultimate unit of life. Physiological Chemistry and Physics and Medical NMR, 39(2), 111–234. https://gilbertling.org/pdf/PCP39-2_ling.pdf

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3.1.2. 制御的自己-協同遷移

  3.1.2.1. ATP含む主要吸着体によるヘム-ヘム相互作用の制御

ヘモグロビンの酸素化と脱酸素化の研究者達は、遥か昔から、溶液中の単離純粋ヘモグロビンと生きた赤血球のヘモグロビンとでは酸素親和性に著しい差異があることに気付いていた。図17の単離ヘモグロビンの酸素結合と、図16挿入図の無傷のヒト赤血球ヘモグロビンの酸素結合曲線を比較すれば、すぐさま同じ結論に達するだろう。すると、図17に於いてヘムサイトの酸素結合が半飽和状態に達する酸素分圧は10mmHgとなる。対する無傷赤血球が半飽和状態に達する酸素分圧は3倍の30mmHgとなる。

言い換えれば、純粋ヘモグロビン溶液は、ミオグロビンが末梢組織への酸素運搬能を持たないことと同じ理由により、肺から末梢組織への酸素運搬はできない。両者とも酸素を強固に保持し過ぎて、必要な場所で放出しないからだ。

即ち、ヘモグロビン溶液は生理的に機能する正常な生きた状態にはない。ナノ原形質を正常な生きた状態に維持するには、図5の通り、ATP(或いは2,3-DPG等の等価物)という適切な主要吸着体との結合が必要となる。

勿論、静止生活状態のヒト赤血球にはATPや2,3-DPGが存在するのは周知の通りだが、ヘムサイトの酸素親和性を低下させるのは実際にATPや2,3-DPG(との結合)だと確認するには、改めて精密な定量実験データが必要となる。

またもや幸運ながら、2,3-DPGとイノシトール6リン酸(IHP)がヒトヘモグロビンの酸素結合に及ぼす影響に関する非常に正確なデータセットを入手することができた[1]。間も無く、両データセットが我々の理論曲線によく適合すると判明した。紙面節約の為、ここでは主要吸着体としてIHPを用いたデータのみを図25に表す。ここでも点は実験値、線は以下の式に基づいて算出された理論値である。

$${\mathrm{[p_i]_{ad}=(g/2)[C]_{ad}Ω_c+(g/2)([F]-[C]_{ad})Ω_0}}$$…⑪

図25. イノシトール6リン酸(IHP)の濃度別ヒトヘモグロビンの酸素吸収
点はBenesch & Benesch(1969)[1]の実験データ、線はYang-Ling吸着等温線に基づく理論値。
端の数字はIHPの濃度
(1) IHPなし
(2) 1.2 x 10⁻⁵M;
(3) 2.4 x 10⁻⁵ M;
(4) 3.5 x 10⁻⁵M;
(5) 4.8 x 10⁻⁵ M;
(6) ∞ IHP.
使用したパラメータの値は以下の通り
K₀ =3.33
Kc =0.67 (mm Hg)⁻¹
−(γ₀/2) = 0.39 kcal/mole
−($${γ_c}$$/2)= 0.21 kcal/mole
c = 4.2 x 10⁻⁴  (M)⁻¹
−(Γ/2) = 0.68 kcal/mole
(文献[2]より)

$${[p_i]_{ad}}$$は溶質i(本例では酸素)の濃度、gは協同的に連結した正規吸着サイト(ヘムサイト)の数、$${[C]_{ad}}$$は主要吸着体が占める主サイトの濃度、$${Ω_c}$$と$${Ω_o}$$は基本的にp.143の式⑧の定義通り、添字cとoはそれぞれ、主要吸着体の支配下にある溶質iの正規吸着サイトと、支配を受けていないサイトを指す。その他の関連情報は図25の凡例を参照のこと。

これら第一級のデータが齎した最重要の発見は、IHPの吸着がヘモグロビンの酸素親和性を劇的に低下させることである。結合の自由エネルギーにすると、酸素結合の自由エネルギーはー6.63kcal/molから僅かー4.71kcal/molにまで低下する。この問題は後述する。

その同等以上に重要な発見は、ATPがヘモグロビンの酸素親和性を低下させる類似の能力を有することである[3, 4]。だが現時点ではBeneschのDPGやIHPに関する定量データに相当するデータは未発見である。とはいえ、図13Bに(2,3-DPGと)IHPで図示した通りにATPが電子吸引性主要吸着体(EWC)として同様の機能を果たすことに疑問の余地はない。

前述の通り、ヘモグロビンにATPase 分解活性はない。この点でATPと2,3-DPGは同格となり、いずれも主要吸着体として同様の基本機能を果たす。そこに、より複雑な形態の原形質が有する特殊な主サイトに於けるATPase活性の複雑性は伴わない。

  3.1.2.2. バルク水の動的構造の制御

このタイトルをテーマにした研究は未発表である。そのため、その本質部分に関する短い要約のみをp.222の「考察」の結論部分に掲載する。

文献

[1]Benesch R, Benesch RE. Intracellular Organic Phosphates as Regulators of Oxygen Release by Haemoglobin. Nature. 1969;221(5181):618-622. doi:10.1038/221618a0
[2]Ling GN. Diphosphoglycerate and Inosine Hexaphosphate Control of Oxygen Binding by Hemoglobin: A Theoretical Interpretation of Experimental Data. Proc Natl Acad Sci USA. 1970;67(1):296-301. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC283202/
[3]Benesch R, Benesch RE. The effect of organic phosphates from the human erythrocyte on the allosteric properties of hemoglobin. Biochem Biophys Res Commun. 1967;26(2):162-167. doi:10.1016/0006-291x(67)90228-8
[4]Chanutin A, Curnish RR. Effect of organic and inorganic phosphates on the oxygen equilibrium of human erythrocytes. Arch Biochem Biophys. 1967;121(1):96-102. doi:10.1016/0003-9861(67)90013-6



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