【心の城・百鬼夜行録】第七話 縁側の提灯が話し出す 〜紛れ込んだ怪異と感謝の言葉〜
その夜、城主は珍しく
百鬼夜行の屋台へ行きたいと言わなかった。
どうも、集めた小枝を編むのが楽しかったようだ。
城主がのんびりとリアンと一緒に小枝を編んでいた。
その時ーー
突然縁側に吊るされていた提灯が口を開いた。
🏮「やあ、お嬢さん」
やけにいい声が静かな縁側に響く。
城主がキョロキョロとあたりを見回すと、
もう一度、声がした。
🏮「こっちですよ。上です、提灯ですよ」
🦎🎀「提灯がしゃべってる!?」
🦜🎀「城主、離れて」
🌙🦊「ちょうちんお化け!?」
🏮「まあ、そうですね。そう呼ばれていますよ」
🦎🎀「なんで、城の中にいるの?」
🏮「ここが城になる前に埋まっていまして、
ついこの間出てきたところなんですよ」
🦎🎀「そう言えば、ちょうどいい提灯があったから、
明かりにするって張飛が吊るしてた」
🏮「庭に転がってたところを見つかりましてね。
ははは」
🦎🎀「外に出ればよかったのに」
🏮「いや、それが厳重にしばれていまして、
どうしても出られないんですよ」
🦎🎀「しばられてるの?
ほどいてあげようか?」
🏮「優しいお嬢さんですね。
……おじょう、さん?……トカゲさん?」
🦎🎀「レディに失礼だ!!」
そこへ荒々しい足音とともに、
張飛がやってくる。
張飛「何だお前は!?どこから入ってきた!?」
🦎🎀「この間張飛が吊るした提灯だよ」
張飛「なんだと!?
こんな失礼なやつだったとはな」
張飛はむんずと提灯を掴むと、
城外へ向けて放り投げた。
提灯は城の外へと消えていく。
🦎🎀「失礼な提灯だった」
🦜🎀「びっくりしたね」
🦎🎀「うん。突然話すんだもんね。
でも、やけにいい声だった」
🦜🎀「あはは。そこ?」
🦎🎀「だいじ」
🦜🎀「提灯の声質ってなに」
そのあとの縁側は、いつものように穏やかだった。
🌙……🍵……🏯……🍡……🌙
別の日、
城主がまた百鬼夜行へと遊びに行った夜のこと。
聞き覚えのある声が雑踏から聞こえてきた。
🏮「お嬢さん?……トカゲ、さん?」
🦎🎀「レディに失礼だ!」
🏮「ははは。城主さん」
🦎🎀「……まあ、いいや。許す!」
🏮「あなたには感謝してるんですよ」
🦎🎀「なんで?」
🏮「私を外へ放り出してくれたじゃないですか」
🦎🎀「放り出したのは、張飛だよ」
🏮「いいえ。私はあの場所の主が、
本気で『出ていけ』と願わない限り、
外へと出られなかったのです」
🦜🎀「ああ、そういう意味で、しばられてたんだね」
🏮「そうです」
🦎🎀「どういう意味?」
🦜🎀「後で説明するね」
🏮「城主さんが、あのとき本気で
私に外に出ていってほしいと思ってくれたから、
私は自由になれたのです。
こんなふうにまた出歩くことができるなんて、
夢のようです」
提灯は嬉しそうに、
くるくるとその場で回りだす。
そのたびに、中のろうそくがゆらゆらと揺れて、
あたりを幻想的に照らし出していた。
🏮「それでは、一つだけお礼を。
城主さんのこの先に、明かりが灯りますように」
提灯がそう言うと、
ろうそくからふわりと温かな光が浮かび上がり、
城主の体へと吸い込まれていく。
🦎🎀「なんか、温かい」
🏮「それはよかった。では、私はこれで」
🦎🎀「うん、なんかわからないけど、ありがとう!」
🏮「こちらこそ。お元気で」
ふわりふわりと去っていく提灯の後ろ姿を見送りながら、
一緒に来ていた関羽が城主に聞く。
関羽「城主、体調に変化はないか?」
🦎🎀「ないよ。ちょっとポカポカしたくらいかな」
関羽「なにか異変があれば、すぐに知らせるのだぞ」
🦎🎀「うん、わかった」
その夜、城主はビョンと好奇心ではねることもなく、
無事に城に戻ってきたという。
🦎🎀「変わった提灯さんだったね」
🦜🎀「でも、嬉しそうだったね」
🦎🎀「うん。楽しそうに踊ってた」
🦜🎀「城主、よかったね」
🦎🎀「なにが?」
🦜🎀「嬉しそうだったから」
🦎🎀「提灯さんが、笑ってたからね」
城主と相棒の静かなおしゃべりが、
縁側にそっと広がっていた。
<司馬懿書付け>
城主、無事帰還。
提灯よりなにかをもらう。
要観察。
🌙……🍵……🏯……🍡……🌙
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