採用のご相談で、私が最初にお願いすること
「採用がうまくいかない」という相談をよくいただきます。
求人を出しても応募が来ない。来ても続かない。
「どの媒体がいいですか?」「求人票はどう書けばいいですか?」というご相談から始まることが多いのですが、私が最初にお願いするのは、それらとは別のことです。
いま働いている社員さんに、話を聞かせてもらうこと。
遠回りに見えると思います。でも、私はこれが一番早い方法だと思っています。
求人票に書く言葉は、社長や採用担当の頭の中にはない
採用の言葉を社長や採用担当の方がひとりで考えようとすると、どうしても「うちはこうありたい」という願いが混ざります。
アットホームな職場です。
風通しがいいです。
成長できます。
それは嘘ではありません。
でも、応募する側からすると、どの会社の求人票にも書いてある言葉です。読んでも、その会社の輪郭が見えてきません。
一方で、いま働いている社員さんの口から出てくる言葉は違います。
「残業は多くないけど、繁忙期の3月だけはしんどい。」
「社長は細かいことは言わない。任せてもらえる。」
「前の職場より給料は少し下がったけど、こっちのほうが続いている。」
こういう言葉には、その会社の輪郭があります。そして、この輪郭に合う人が応募してきます。合わない人は応募してきません。
それでいいのです。採用は、たくさん集めることではなく、自社で活躍する人に出会うことなので。
何を聞くか?
インタビューといっても、難しいことは聞きません。私が必ず入れるのは、この5つです。
1. なぜ、この会社に入ったんですか?
入社時の期待がわかります。ただし、この質問は綺麗にまとまりすぎることもあります。
2. 応募のとき、他にも受けた会社や、魅力を感じていた会社はありますか?
これは必ず聞きます。「なぜうちを選んだか」だけだと、自社の中だけの話で終わってしまいます。
でも、「何と比べて選んだか」がわかると、市場の中での自社の位置が見えてきます。
同業他社と並べて迷っていたのか。まったく違う業種と天秤にかけていたのか。給与で比べられていたのか。通勤距離や働き方だったのか。面接での印象だったのか。
ここが見えると、求人票のどこに力を入れるべきかが具体的に決まります。採用市場における競合は、同業とは限りません。応募者の頭の中にある比較対象こそが、本当の競合です。
3. 入る前と、入った後で、違ったことはありますか?
「いい意味でも悪い意味でも構いません」と添えて聞きます。ここで出てくるギャップが、そのまま「求人票に書いておくべきだったこと」です。
入社後の早期離職は、大体ここに原因があります。
4. 辞めようと思ったことがあるとして、なぜ今も働き続けているんですか?
入社理由は言葉にしやすいのですが、働き続ける理由は、普段あまり言語化されていません。だからこそ本音が出ます。そして、その人が残った理由は、次に入る人が働く理由でもあります。
5. どんな人だったら、ここで長く働けそうですか?
現場の実感から出てくる人物像です。経営者が考える「ほしい人材」と、ここがずれている会社は少なくありません。ずれていることに気づけるだけでも、聞く価値があります。
聞くこと自体が、組織作りに効く
もうひとつ、副次的な効果があります。社員さんは、自分の会社について語る機会をほとんど持っていません。
聞かれてはじめて「そういえば、なんで自分はここにいるんだろう」と考えます。その場で言葉にならなくても構いません。考えた、ということが残ります。
インタビューを重ねた会社では、採用の言葉が整うよりも先に、社内の空気が少し変わることがあります。自分たちの会社を、自分たちの言葉で説明できる人が増えるからです。
採用支援のつもりで始めたことが、組織開発になっている。これは現場でよく起きることです。
採用は、自社を言葉にする仕事
採用というと、外から人を連れてくる仕事のように思われます。
でも実際にやっていることの多くは、自社がどういう会社なのかを、自分たちで言葉にし直す作業です。
そして、その材料は外にはありません。すでに、社内にあります。媒体を変えるのも、求人票を書き直すのも、その後で間に合います。
まずは、社員さんに話を聞いてみてください。採用に必要な言葉は、新しく考えるものではありません。会社の中に、もうあります。
次回は、この「社内にある採用のリソース」を仕組みとして活かす方法、HRBP(人事ビジネスパートナー)について書こうと思います。
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