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【シロクマ文芸部】Blue drop ~ 青い雨粒外伝


 蛇口からざあざあと流れるような雨が降り続いている。夕方のコインランドリーで乾燥機がぐるぐる回るのをぼんやりと眺めていると、少し眠くなってきた。

 そんな時、コインランドリーに若い女の子が入ってきた。青いデニムのショートパンツを手に持っているけれど、なんだか激しく色落ちしているらしい。そんな物をここで洗うなんてちょっと嫌だと思い、一言言ってやろうと女の子の所に近付いた。

 「あの、これすごく色落ちしていますよね?それをここで洗うのってどうかな?」
 「あ、ごめんなさい。私、出先でこの服が色落ちしちゃって、どうしたらいいか分からなくて。ごめんなさい」

 あれ?この子どこかで見た事あるんだけどなあ。どこだっけ…

 そう思いを巡らせながら、私は思い出した。この子は、ショウに入れあげてる子だ。なんて名前だったかな、そう確かツムギとかいってたような気がする。

 「そうだったのね、私こそ咎めるような言い方してごめんね。この服、ちょっと見せてくれる?」
 ショートパンツを受け取り、よく見るとこれはペラペラの粗悪品だ。洗濯したらもう使い物にはならなさそうだ。
 「うーん、これは洗濯するまでもなさそうよ。洗濯したら、もう使い物にならなさそう」
 「そうですか。私もそんな気はしたんですけど」
 ツムギちゃんは、ちょっとがっかりしたように肩を落とした。

 「ねえ、あなたショウの所によく来てる子でしょ?ツムギちゃん、だったよね」
 「そうですけど。あなたは?」
 「私もあの店によく行ってるのよ。ユリカっていうの」
 「ユリカさん?あ、あのしょっちゅう高いお酒入れてる?」
 私はツムギちゃんの言い方にちょっと苦笑いしながら
 「そうよ。そのユリカよ。ねえ、ツムギちゃん、ちょっとお話しない?時間ある?」
と言った。

 私は自販機でコーヒーを2本買うと1本をツムギちゃんに手渡し、ベンチに並んで腰かけた。
 「今日、ショウの店に行くの?」
 「行くつもりだったんですけど、服はこんなだし体調もあまり良くないから今日は行きません」
 「そう。具合悪いの?大丈夫?」
 「はい。急に始まっちゃって。さっきお薬を買って飲んだので、だいぶ良くなりました」
 「それならいいんだけど。あのね、私さ、おせっかいだとは思うんだけど、あなたに忠告しとこうと思って。今日ここで会えて良かったわ」
 「何ですか?なんか怖い…」
 ツムギちゃんは怪訝な顔で私を見る。それもそうだろう。ホストクラブの上客の私からの忠告なんて碌な事じゃないと思っているに違いない。

 「ツムギちゃんさ、もうショウのとこには行かない方がいいよ」
 「どうしてですか?何かあったんですか?」
 私はコーヒーを一口飲んで大きく息を吸いこんだ。
 「あのね、ショウもうすぐ飛ぶから。あいつ今やばいとこから金借りてるのよ。だからあなたにも来店の催促がよく来てたでしょ」
 「飛ぶって。借金って…」
 ツムギちゃんは大きく目を見開いて私の方に体を向けてきた。私はツムギちゃんの目を見ながらゆっくり話した。

 「私もね、何のための借金かはよく知らない。でも、贅沢してたんじゃないかな。あいつね、昔金持ちの女に飼われててね、その時の贅沢が抜けなかったんだと思う。ねえ、ツムギちゃん、悪い事は言わないから傷が浅いうちに手を引いた方がいい」
 「でも、でも、私」
 「あのね、ホストの言う事なんて真に受けちゃだめよ。じゃないと私みたいになっちゃうわよ」

 私は長袖のブラウスの袖をめくってツムギちゃんに見せた。私の左腕には横に入った傷がたくさんついている。
 「ユリカさん、これって?」
 「リストカットの跡よ。私ね、あいつに入れ込んで身動きできなくなって風呂屋で働いてるのよ。やっぱりさ、病んじゃう訳よ。ああいう事って。だからね、悪い事は言わないから、もう行ったらだめよ」
 「そんなことって…」
 「ツムギちゃん、実際昼の仕事だけじゃ足りてないでしょ?何やってるの?」
 「私、ガールズバーで」
 「そう。でもね、このままじゃあなたも私みたいになるよ。今いくら借金してるの?ヤバいとこからは借りてないよね?」
 「今は300位です。消費者金融3社ほど」

 ツムギちゃんは結構借金を抱えている。でも、今ならまだやり直せるかもしれないと思い、またおせっかいをしてみようと思った。
 「ツムギちゃん、実家どこ?実家は太い?」
 「実家は九州です。開業医をしています」
 「じゃあ話は早いわ。ツムギちゃん、実家に帰りなよ。そして親御さんに頭を下げて借金を返してもらうの。で、向こうで仕事をして親御さんにお金を返していくんだよ」
 私の言葉にツムギちゃんはどこかホッとしたような顔をした。

 「分かりました。一度実家に帰ってみます。ユリカさん、どうして私なんかのために?」
 「なんか昔の私を見ているみたいだったんだよ。だから余計なおせっかい焼いてしまったの」
 「ショウさんが飛ぶのなら、ユリカさんはどうするんですか?」
 「私ももうあの店には行かないよ。ヤバい連中とは関わらないのが一番よ。私ね、もうすぐ借金を返し終わるの。そしたらお風呂屋さんは辞めて、看護師に戻るよ」
 「わあ、ユリカさん看護師さんなんですか?私も…やってみようかな」
 「いいんじゃない?実家がお医者さんならきっと看護師の学校にだって行かせてもらえるよ!それに、看護師ならどこでだって仕事ができるしね」
 「今日ユリカさんに会えて良かったです。ありがとうございました!」
 「私も今日ツムギちゃんに会えて良かったよ。ほんと、ツムギちゃんといつかゆっくり話したいって思ってたから。これからは、ホストクラブなんて行っちゃだめよ。普通にツムギちゃんだけを愛してくれる人と付き合うんだよ」

 ツムギちゃんはゴミ箱にショートパンツと色移りしたブラウスを捨てるとコインランドリーを出ていった。振り返って私に手を振ってくれたツムギちゃんの表情は、来た時に比べると格段に明るくなっている。もう彼女は大丈夫だろうと思った。本当はショウと一緒に飛ぼうかと思っていたけれど、ツムギちゃんと話してみて自分の本当の気持ちに気が付いた。私もショウとは決別しよう。そうと決まれば面倒ごとに巻き込まれないうちに姿を消すことにしようと思う。

 ざあざあ振りの雨はいつの間にか上がっていて、暮れかけた空には三日月が顔を出している。


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シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「蛇口から」です。

実は、今回のお話は吉穂みらいさんが書いた先週のお題の小説の勝手にコラボなんです。

この小説がとても気に入ってしまって、感想文も書いちゃいました。

で、ツムギちゃんに堕ちて欲しくなくて勝手にコラボと相成りました!
ホストクラブの上客のユリカさん目線のお話を書いてみました。
この偶然の出会いでツムギちゃんが救われたらいいんだけど。
ショウと一緒に堕ちてしまいそうだったユリカさんも救われそうですよね!
看護師設定だったのは、闇金ウシジマ君からヒントを得ました。
ウシジマ君にお金を借りてて、風俗で働いてた子が借金返済後に看護師に復帰したっていうエピソードがあったので(ドラマ版です)

みらいちゃん、いかがでしょうか・・・
だいぶご都合主義でまとめちゃいましたが💦
でも、勝手にコラボは楽しかったです😊
熱が冷めないうちに、書いてすぐ出しちゃいます!


今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪


#シロクマ文芸部
#蛇口から

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