ナイトバードに連理を Day 7 - A - 2
(652字)
茶賣は基地の端を目視したところで四隻の車列を止めた。太陽はほぼ頂点。だが早矢は空腹を全く感じなかった。朝食として飲み込んだ餅とは別に、消化できない石か何かが胃の中に詰まっているような気分だった。
清心が鵺の助けを呼ぶ狢たちを介して大獣の襲撃を視たのが約二十時間前。清心は早矢が眠りに落ちる寸前まで連絡を送ってきたが、大獣が消滅したという情報はなかった。何も視えてこない。鵺の名を呼ぶ声は上がらない。それが清心からの最後のメッセージだった。
生物を食べるわけではなく、門石の放射成分を摂取する大獣の形質から考えても都合のいい想像は難しい。早矢は茶賣にその通り警告した。
「となると鉱山の中か、面倒だな。生き残りがいるとしても隠れる空間は中にしかない。手遅れだと思うがどうしてもやるのか、夜目殿?」
早矢は茶賣の推測を否定しなかった。双眼鏡から望む基地に生物の動きはなかった。見えるのはなぎ倒された無数のテントと、踏み潰されたようにへしゃげた二隻のコーデックボート、折れ崩れた獣除けの石柱だけだった。
早矢は悲惨な想像を意識から追い出そうと努力した。茶賣の言う隠れる空間こそ近衛が匿われていた場所であることは間違いない。つまり近衛はそこに残っているか、基地から脱出していることになる。
だが茶賣は本当に近衛を――狢たちと甘医師すら――助ける気がないらしい。早矢が何も言わずに睨みつけると、茶賣は肩をすくめた。
「仰せのままに。アマフリ、叩き起こしてやれ」
茶賣の言葉と同時にトレーラーの背部が開き、青空の下にアマフリが立ち上がった。 【Day 7 - A - 3に続く】
