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ナイトバードに連理を Day 5 - A - 8

【前 Day 5 - A - 7】

(1015字)

「もう一人? 聞いてない……いや、そんなはずはない」
「嘘は言わない。あなたを脅してまで水門石を欲しがっているにしては、茶賣の態度に余裕があるとは思わなかった?」
「他に手があるからだってのか。証拠は?」
「天狗の情報網、としか言えない」
「納得できるかよ」

 早矢は七の言葉に素早く反論したが、その内心はひどく混乱していた。七が嘘をついているか、事実を誤認しているという可能性はある。だがもしそこがクリアできるとすれば、問題の焦点は夜目が他にいるという話を清心から聞かされていないことに移る。となれば意図的に伏せたか、あるいは清心自身も知らないのか。もし知らないのだとすれば――

「その人質は本物ですか? つまり、夜目として」

 頼の質問はまさしく早矢の発想と一致したが、その意味合いに差があることも明白だった。他でもない早矢自身、夜目のふりをしているに過ぎない。何をもって本物の夜目と言うかの線引きのズレは訂正しようがなかった。

「確証はない。けど、そう信じているからこそ茶賣は存在を隠している」
「どこに?」
「鉱山の中、茶賣の私室として設けられている空間。茶賣はそこで寝泊まりすらしていないし、出入りにはいつも甘という医者を連れている。間違いないと思う」

 早矢は逡巡し、目を細めた。

「じゃあ、俺だけ口止めしても、そいつが喋ればあんたにとっちゃ意味がないな」
「そうね。私からすれば、どうにかしてその人も助け出す必要がある」
「やはり分かりませんね。それならば、形振り構わず茶賣を始末してしまう方があなたにとっては確実なはずだ」

 頼の疑問を尤もだと思うと同時に、早矢はなぜ自分がそこに引っかからなかったのかに気が付いた。

「無理なんだな?」

 早矢が尋ねると、七は苦々しい顔で頷いた。

「あの男は、水門石を飲んだ。私の知る限りその効果は永遠ではないけれど、今のアレは大獣にも劣らない怪物。死ぬかどうかすら確かじゃない」
「なら、もっと早く殺しちまえば……」
「その通り。そうしてあなたたちモッカも、もう一人の夜目も見捨てるべきだった。いえ、今からでも夜目を皆殺しにするという手はあるけれど。本当のことを言えば、この取引に見込みがなければそうするつもりだった」

 早矢と頼は言葉を失った。二人の沈黙と表情の強張りを観察するように七は数秒の間を置き、ふっと顔を逸らした。

「……言ったでしょ、私にも人の心はある。そこがあの男との違い。手段は選びます」

 七は拗ねた子どものように言った。 【Day 5 - A - 9に続く】



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