ナイトバードに連理を Day 5 - A - 9
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「話は分かった。気持ちとしては取引に乗りたい。乗りたいんだが……」
「でも、方法がない」
曖昧に言う早矢から話を奪い取り、七はため息を吐いた。
「そう、そこは私も同意見。あなたが水門石を見つけられなければ、もう一人の夜目が追い詰められる。それでもだめなら、茶賣はモッカの民を殺してでもあなたを追い詰める。あるいは逆の順番で。茶賣が水門石を見つけることは阻止したいけど、あれを排除する手段はない」
「言いたくないが、無理な話じゃないか、これは」
「かもね」
七はあくまでも明るく、端から諦めているのではないかと早矢が疑うほど気軽に肯定した。
「実際、今の私にも良い案はないの。だから返事の言葉はくれなくていい。作戦を思いついたら改めて手伝ってほしいとお願いするけれど、何もなかったら話はこれきり。その時はできるだけ、あなたたちに迷惑が掛からないようにやってみるから」
七は笑った。早矢は言葉に詰まったが、代わって頼が口を開いた。
「もし、僕たちがあなたの本当の狙いを茶賣に話したら?」
「さあ、どうでしょうね。茶賣を殺すことはできなくても、ひとまず逃げるだけなら難しくないと思うけど。少なくとも、私一人なら」
「なるほど。数々の失礼をお詫びします、アマフリ殿」
「いいえ、私こそ無礼でした。ごめんなさい、モッカ狢の頼」
一転して雑談のように態度を和らげた二人の会話から疎外され、それでも早矢に語る言葉はなかった。今はとにかく、清心と話したいと思った。
「頼」
天幕越しに、新たな声が三人の耳に届いた。名前を呼ばれた頼は「見張りです」と言って立ち上がり、外に顔を出してすぐに振り向いた。
「基地から合図です。茶賣が動きます」
「時間切れね」
七もまた立ち上がり、遅れて腰を上げた早矢に右手を差し出した。
「ともかく話せてよかった。先のことは分からないけど、お互い、生き延びましょう」
早矢は素直に頷いて握手に応じた。
「どうにか手段を考えてみる。無茶はしないでくれ」
早矢は心から真剣に言った。七はふっと笑った。
「今日、この後の流れは?」
「茶賣に出せる情報はない。正直、水門石についてはこっちも何も掴んでないんだ。コーデックの在り処ぐらいは話すかもしれないが」
「そう。じゃあ、あなたの鵺によろしく」
「言っとくよ」
深々と頭を下げた頼に続き、早矢は天幕を出た。見張り二人が何も聞いていないというように厳つい無表情で待っていた。外の空気には香辛料の匂いが全くなく、早矢は異世界に紛れ込んでいたような気分で思わず振り返った。天幕は確かにそこある。早矢はそれでも腑に落ちないまま、丘のふもとに向き直った。二人は丘を下り始め、また数歩の距離を置いて護衛も後に続いた。
「……ところで、水門石ってなんだい?」
「……お前の度胸には恐れ入るよ、マジで」
「こちらの弱点を見せず、向こうの弱点を突く。実力の差は知力と胆力で埋めなくちゃね」
「はったりと気合だろ」 【Day 5 - Bに続く】
