【MOBI6】ものづくり企業の次の一手は?毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
※この記事は、2016年11月4日に公開された内容です。
ものづくり企業の次の一手は?
毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
ものづくり技術は人を喜ばせるためのもの 「あたたかいを造る」金属加工業
東日本大震災から5年目を迎えた今年3月、岩手県大槌町安渡(あんど)地区にて津波避難訓練が開催された。
この訓練では高齢者など要援護者の高台避難に重点を置き、車椅子を改造し前から引く「人引車®(じんびきしゃ)」や、高台への避難路を簡単に作ることのできる「簡易設置式くさり階段」が導入された。
これらの避難用具を製作したのは、マツモラ産業の代表取締役会長の松茂良興治氏。
同社は順送プレス・単発プレスなどの金属プレス加工の試作から量産まで一貫製造する、高い加工技術で知られる会社だ。
この避難用具を作り始めたきっかけを松茂良会長はこう振り返る。
「東日本大震災での津波被害を目の当たりにし、安心安全に避難できる階段を、できる限り費用を抑えて提供することができないかと開発に至りました」。
くさり階段「逃げるんだ・登るんだ」は、複雑な地形にも設置可能で女性・高齢者も登りやすい階段構造になっている。
過酷な現場でも大人2人で支柱を打ち込むだけで簡単に設置ができる専用工具を開発。
くさりは何mでも延長可能で、荷重は杭に分散されるため大人数で同時に使用することができる。
その高い機能性が評価され、平成27年度中小企業新商品購入制度による認定を受け、大阪府でも活用されている。
いっぽう足の不自由な人や高齢者の避難をサポートする「人引車®」は、くさり階段の開発過程で、足の不自由な人が避難施設まで逃げることの難しさを知り開発をスタート。
「大八車」から「押すではなく引く」イメージから発案したという。
「押される」ことに対する恐怖心を排除し、「引く」力の作用が活用されている。
「一般社団法人災害避難研究所」を設立し、所長も務める松茂良会長は東福島・石巻・気仙沼・陸前高田などに直接出向き、この「人引車®」を寄贈している。
また、本業の金属加工においても、技術の向上をめざしている。
プレス用金型の取り替えは早くても15分程度かかるが、同社が考案した「ワンタッチ式金型」であれば2、3分で取り付け完了。
このような現場の創意工夫による短納期対応等が評価され、昨年「大阪ものづくり優良企業賞2015」技術力部門賞を受賞した。
MOBIO-Cafeのセミナーなどで精力的に情報収集する木村欣祐取締役社長曰く、「顧客とパートナー感覚で仕事ができるよう、将来的にはOEMからODMをめざしていきたい」。
工場の隣には巨大な観音像が鎮座する。
「日本一小さいお寺の住職でもあります」と松茂良会長は笑う。
本業は加工業であり、この避難用具は金儲けのためではないとも。
「高齢者や身体障がい者の方で、これらが必要な人は何百万人といます。だから価格を抑えて提供します」。
この避難用具は同社の「技術」と「人のため」という考えが合致した製品である。
「利益より仕事が増えることが嬉しい。人様に喜んでもらわなければ、ものづくりの喜びもありませんから」。
同社の名刺には社名の上に「あたたかい金属部品加工」の文字が添えられている。
金属加工は冷たい素材を扱うが、作られたものは人々の心を温めるものでありたい。そんな想いが込められている。


設置前と設置後では約30%以上の登坂スピードUPを実現している。
マツモラ産業株式会社
八尾市福万寺町南6-1-3
TEL 072-923-8810
究極の滑らかさが求められる人工関節に球面加工のエキスパートが挑戦。
ふだん私たちが目にすることはないが、とても大切なもの。
製造業の現場ではそういったものが多く作られているが、バルブボールもそのひとつ。
これは弁体であるボールをシートリングで挟み込む構造で、ステムを90度回転させることで流体の流れを止めたり流したりすることができる。
流体制御の省力化にもっとも威力を発揮するといわれ、精度の高さから宇宙開発ロケットの燃料ガス補給用にも使われている。
木田バルブ・ボールはその専門メーカーとして半世紀もの製造実績を持ち、球面の切削と研磨技術を駆使し、独自の加工技術を確立してきた。
特にステンレス製バルブボールは国内で60%以上のシェアを誇る。
「物心ついた頃から工場に出入りし、いつか会社を継ぐと思っていたので、違和感もなく入社しました」。
そう語る代表取締役社長の木田浩史氏は10年以上前から、この技術を活かした新たなものづくりを模索。
たどり着いたのが医療用人工関節インプラント部品の製造だ。
人工の股関節は骨盤側のソケットとインサート、大腿骨側のステムと骨頭球(ヘッド)で構成される。
ソケットというカップの中で、大腿骨に固定されるステム先端のヘッドが動くことで股関節の動きを再現する。
システムとしては超高分子量ポリエチレン製のソケットと、コバルトクロム合金やセラミックス製ヘッドとの組合わせで作られることが多い。
同社が手がけるのはこのヘッドの製造だ。
人工関節の耐用年数は15年から20年といわれ、その期間を過ぎたり不具合が生じれば再手術をしなければならない。
今後の課題とされている製品の寿命に大きく影響を及ぼす「耐摩耗性」の改善。それはすなわちヘッドの球体精度を上げることだ。
高分子ポリエチレンが軟骨の代わりとなるため、球体の精度が低かったり少しでも楕円がかかると、摩耗で耐久性も下がり痛みが生じる。
この摩耗によって発生する摩耗粉も体をむしばむ原因となる。
そもそもバルブボールは丸さを追求する「真球度」と表面の「平滑度」の2つの要素が必要だが、同社は「真球精度を保ちながら表面粗さを鏡面に仕上げる」という、高度な技術を両立してきた。
「人工関節は真球度を追求してきた、当社のこれまでの技術の延長線上にあるもの。まさしく私たちの仕事と言えます」(木田社長)。
昨年3月には「医療用人工関節インプラント部品」の開発及び販路開拓をテーマとした経営革新計画が承認された。
金属アレルギーの人でも長年安全に使用できるよう、金属材料を特殊樹脂「炭素繊維強化樹脂」に置き換えた製造開発にも乗り出している。
たとえばCTやMRIといった精密検査では人工関節が金属だと周辺の状態が写りにくいが、この素材であれば周辺組織もクリアに撮影できる。
同社では高品質なものづくりのために加工技術の向上だけでなく、真円度測定器や三次元測定機などによる検査を徹底してきたが、平成27年度ものづくり補助金で、表面の粗さをナノレベルで検査解析するレーザー顕微鏡も導入。
「これほどのハイスペックモデルを中小企業で採用しているのは当社ぐらいだと思います」。
理想の環境を整え、今後も人工関節の高精度化と研磨技術の研究開発をさらに進めていく。

「限りなくまん丸」「限りなく滑らか」がコア技術。
8mm~1,200mmまでの大きさに対応。

42個の粗さパラメータを自動で数値分離し、業界最高精度で違いをグラフ化する。

メーカー基準値をはるかに超える真球度0.3ミクロンと、
表面粗さRa0.003(3ナノメートル)を達成。
人工関節の長寿命化を実現する。
木田バルブ・ボール株式会社
東大阪市玉串町東3-1-36
TEL 072-963-2441
工作機械には不可欠なツーリングで世界のものづくりを支える。
自動車や航空機用などあらゆる金属を削る工作機械で、機械と刃物をつなぐ役割をしている「ツーリング」(工具保持具)。
1967年設立で間もなく半世紀を迎える大昭和精機は、このツーリングで国内トップシェアを誇る。
スマートフォンやスイスの高級時計、アメリカの航空機などの部品製造に同社のツーリングが選ばれる理由、それは世界トップクラスの品質だ。
工作機械と切削工具の接続は作業効率に直結するため、これらの性能を100%引き出すためにもツーリングには高度な精密性が求められる。
「工作機械自体の主軸のブレ、ヴァイブレーションなどにより加工条件がさまざまに変化します。そのなかで“誰が・どこで・何を使っても”同じような精度の製品を作らなければなりません。そこには設計・製造のノウハウが秘められています」(取締役常務執行役員 内田安彦氏)。
機械や工具に合わせたツーリングが必要となるため、そのアイテム数は38,000点にものぼり、なかには世界初という製品も。
また同社では海外現地法人を中国、米国、ドイツなどに有し、永らくパートナーであったスイスの企業も昨年傘下に収め、さらに積極的な海外展開を進める。
高い知名度を誇る同社の「BIG」ブランドは、創業者である北口良一会長の「大きくなって世界に羽ばたきたい」という想いから名付けたという。
その名の通り、さらなる高みをめざしてトップランナーは走り続ける。

ここにどれだけいい新製品を出せるかが、評価につながる。
11月17日から開催される「JIMTOF2016」でも、
私たちを驚かせる新製品が発表されているはずだ。

最高回転数60,000min-1を可能とし、高回転と高精度の両立を実現した
「メガチャックシリーズ PAT.」
大昭和精機株式会社
東大阪市西石切町3-3-39
TEL 072-982-2312
培われた技術力、そして積み重ねた研究開発が会社の未来をつくる。
私たちの身の周りの多くのものに使われているゴムパッキン。
さまざまな製品に必要とされ、新技術が生まれる度に新たな形状や機能が要求されてきた。
このゴムパッキンメーカーである髙石工業も、取引先の要望に応え、常にチャレンジを続けてきた。
「未来の会社をつくるのが、研究開発だと考えています」。
そう語るのは3代目社長である髙石秀之氏。
2006年に代表取締役に就任後、試作をはじめさまざまな研究開発のプロジェクトを推進してきた。
その成果といえるのが、多くの水素ステーションに採用された「耐水素用ゴム材料」だ。
水素の分子はとても小さく、隙間に入り込んでゴムや金属をもろくする性質がある。
何度も失敗を繰り返したどり着いたのが、水素がゴムに入りにくく抜けやすい構造にした、−40℃から150℃までの温度変化に耐える現在の製品だ。
すでに多くの水素ステーションに使われている。
「水道・ガス・空気関連のゴムパッキンが会社の礎であり今後もそれは変わりませんが、新たに水素や燃料電池、医療関係という分野にも進出したいです」。
チャレンジといえば今夏、ベトナム・ホーチミンに工場を設立。
2014年からはドイツで開催される世界最大級の展示会『ハノーバーメッセ』に毎年出展し、各国の水素関係のパイオニアメーカーとコアなネットワークを築きつつある。
「水素関連事業は、20年・30年先に普及を見据えた息の長い話。社内でも最先端の研究成果なので、今から実績を積んで市場で勝負していきたいですね」

手のひらに乗るようなサイズが9割以上。

今年の5月から社内で「ありがとうカード」を始めた。
更衣室の前に飾られた掲示ボードにたくさんの「ありがとう」が並ぶ。
髙石工業株式会社
茨木市主原町3-18
TEL 072-632-3365
「ものを計る」という根源的な要求に応え規格にない領域「マイクログラム」へも挑戦。
八尾市にある弥生時代の亀井遺跡の出土品の中に国内最古とみられる石の分銅があることが数年前に判明した。
ものを計るという概念は2000年以上も前からあったと推測される。
「ものを計ることは人間の有史以来、今に続く根源的なものです」。
そう語るのは村上衡器製作所4代目社長の村上昇代表取締役。
1906年に創業し、当時から一貫して計量器、特に質量計の製造・修理・販売をおこなってきた。現在の事業の柱は3つ。
まずは上皿天秤や電子天秤などの「秤」の製造、そして「分銅」の製造だ。
これは一般の製造業、特に製薬業などで使用される「精度の高い秤の管理のための分銅」だ。
そしてもう一つの事業が「校正事業」。
国からの認定を受け、顧客の分銅や秤をチェックし、JCSSマーク付の校正証明書を発行するサービス事業である。
現在、日本工業規格(JIS)で定められた分銅の最小質量は1mgだが、製造や研究の現場では1mg未満の計量が求められるようになってきた。
精密電子天秤には1mg未満の測定能力を持つ機種が多数存在しているが、それを確認する1mg未満の分銅はなかった。
そんなエンドユーザーからのニーズに応える形で、1mg未満の質量標準をチタンで実現したのが「サブミリグラム分銅」だ。
「今はそれだけ品質・精度の管理が求められる時代。ものづくりの現場においてもますます、高精度な秤とそれを管理するための分銅が求められます。そういったものづくりの現場を、質量管理という側面から下支えするのが私たちの仕事です」

秤をつくる部門の主要製品として月間2~300台生産。

チタンを箔のように薄くカットするのは手仕事で、
この重さにピタリと合わせるのはまさに職人技。
また加工時には熱で膨張した素材が、
冷えたときの質量を見越して計測するが、これも職人の勘どころだ。
株式会社村上衡器製作所
大阪市旭区赤川2-10-31
TEL 06-6928-7571
「きれいな水」がすべての原点
水の「質」を変えることで人々の健康に貢献。
日本では、未だ水道が整備されておらず湧き水や井戸水を利用している人々が約130万世帯もあるという。
「日本は4つのプレートがひしめき合う火山列島。マグマに含まれる水銀やカドミウム、フッ素、鉛、シアン、ヒ素、放射性物質などの汚染物質が地下水に混入しています」。
1995年にニューメディカ・テックを設立した代表取締役社長の前田芳聰氏は、水質分析器専門メーカーでのエンジニア時代、水道未普及地帯の飲料水質の悪さを目の当たりにする。
以後、地下水汚染地域の井戸水をきれいな水にする浄水システムの開発に従事してきた。
「クリスタル・ヴァレー」は国内初の逆浸透膜方式の浄水器。
濾過の前処理であらゆる有害物質を固めて大きくすることにより膜を通さなくする画期的なアイデアで、浄水器外に排出し天然ミネラルを添加し、安全でおいしい水に変える。
この浄水器は電池でも駆動する。
同社は2006年から宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力し、有機廃棄物を水と無機物に再生する処理システムの開発に成功。
JAXA宇宙オープンラボにおいて宇宙用安全飲料水装置開発リーダーとして、その後も宇宙用飲料水製造装置の開発をJAXAと共同でおこなうなど、その技術は宇宙分野へも広がる。
そのノウハウを活用し、低消費電力で農薬やウイルスに汚染された水から安全な水を作り出せる、小型浄水器の開発に成功。
経済産業省「ものづくり日本大賞」優秀賞も受賞。
また福島第一原発事故の汚染水からヨウ素やセシウムなどの放射性物質を除去する実験にも成功。
熊本地震の際には医療用水として1,250人分の給水装置を2台提供、まさに命をつなぐ水として活躍した。

総合優勝したクリスタル・ヴァレー浄水機。
高機能浄水器として、家庭から保育、医療機関、
日本を代表する老舗料亭やホテルなど全国8,000件以上に普及。

地下水、河川水、海水など、あらゆる水から安全な飲料水をつくりだす。
トランク型の軽量タイプもある。
ニューメディカ・テック株式会社
吹田市川岸町15-8
TEL 06-6318-2281
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エディター
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ライター
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プリンティングディレクター
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2016年11月4日発行
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