【番外編1】居酒屋×戦術論×ガンダム
※注意※
完全に読者置いてけぼりの内容です
好きな人には間違いなくハマるけど…
興味のある方はどうぞ。
「…まさかぺぇさんが、ここまでガンダムを語るとはな」
いつもの居酒屋で、田村が呆れたようにビールを傾ける。僕は気にせず、手元のフライドポテトを頬張りながら、目を輝かせていた。
「だから監督!言ったじゃないっすか!こいつにガンダムネタ振っちゃダメって!」
「何を言っている田村?ガンダムは男の子の憧れだぞ?」
「まさか…監督も!?」
「さすが、先生!」
「ふん。俺は世代だからな。」
「なんで二人してこんな熱いの!?ただのロボットアニメだろ!?」
「おいおい、何言ってんだよ。ガンダムはな、単なるロボットアニメじゃねえんだぜ?そこには、人類が培ってきた『戦略』と『戦術』の全てが詰まっているんだ」
横にいる田中監督が、興味深そうに腕を組んだ。
「確かに…戦略か。そういう目線で見る事は無かったな」
「ええ。まさに、先日先生にお渡しした『ランチェスター戦略』や『孫子の兵法』が、あの世界ではリアルに繰り広げられているんです」
田村が「マジかよ」と呟く。
「じゃあ、今日は特別講義だ。ランチェスターと孫子で見るガンダム戦記、始めようか」
田村が「マジかよ」と嘆く。
第一部
ランチェスター戦略で見る「弱者の戦い」
「まずは、ランチェスター戦略だ。これは簡単に言えば、『強者』と『弱者』の戦い方を説いたもの。量で圧倒する強者と、質で勝負する弱者の違いを教えてくれる」
僕はそう言って、箸を指差した。
「例えば、『一年戦争』初期のジオン公国軍。地球連邦軍に比べて、物資も兵力も圧倒的に劣る『弱者』だった。でも、彼らは『ザク』というモビルスーツで、一時的に連邦を圧倒した。これはなぜか?」
田中監督が考える。
「…モビルスーツの性能か?」
「それもあります。だが、一番は『一点集中』。ザクは宇宙空間での機動性に優れ、地球降下作戦では局地的に戦力を集中した。これが、ランチェスターの第一法則『一騎打ちの法則』が有利に働く『局地戦』に持ち込んだ結果です」
田中監督が頷く。
「なるほど。一対一なら、数の暴力が効かないってことか」
「そうです。そして、弱者の戦略の真骨頂は『差別化』です。連邦が旧来の兵器で広範囲をカバーしようとする中、ジオンはモビルスーツという新兵器を投入し、特定の戦場で圧倒的な性能差を見せつけた。これが、初期のジオンの強さの秘密」
「なるほど。前にぺぇさんが言ってた、バスケ部で言えば、高さがないから全員同じ練習じゃなくて、スピードや個々の役割に特化させたってことに繋がるのか」
田中監督が前のめりになる。
「そういうことです。そして、弱者の戦略を語る上で、外せない戦いがあります」
僕はグラスを置いた。
「ノリス・パッカードの「弱者逆転」戦術です」
「ノリス…?」
「監督、シロー・アマダは分かります?」
「シローは知ってるぞ。最近息子が見ててな。その話に出てくるプラモも作っていたな」
「そうです!そのシローの敵で、グフ・カスタムのパイロットです!その息子さん分かってますね!
で…このノリス。彼の『グフ・カスタム』と、シロー・アマダの『Ez-8』の戦いこそ『弱者逆転戦術』」
田中監督が目を細める。
「あれは、確かに印象的だったな」
「ノリスの目的は、アプサラスⅢの撤退時間を稼ぐこと。そのために、基地の補給部隊を殲滅し、連邦の増援を足止めする必要があった。彼は、たった一機のグフ・カスタムで、数に勝る連邦部隊に挑んだ」
「それこそ、まさにランチェスターの『弱者の戦略』だ」と僕は続けた。
一点集中と目標の明確化
ノリスは「連邦の基地を叩く」のではなく、「ガンタンク部隊の殲滅」に目標を絞った。これは、弱者が限られた戦力で最大の効果を出すための『一点突破』だ。
【局地戦への誘導】
市街地の複雑な地形を利用して、Ez-8を分断し、個別の『一騎打ち』に持ち込んでいる。数の暴力が効かない状況を自ら作り出したんだ。
【情報戦・心理戦】
シローの「仲間を守ろうとする」性格を読み切り、ガンタンクを攻撃することで、シローを誘導。これにより、相手の戦力を分散させ、自分の有利な状況に引き込んでいる。
「ノリスは、命を賭してその任務を完遂した。彼の戦い方は、兵力で劣る弱者が、いかに戦略と戦術を練ることで、局地的な優位を築き、最終目標を達成するかを教えてくれるんだ」
田中監督が、神妙な顔で頷いていた。
第二部
孫子の兵法で見る「戦わずして勝つ」
「そして次は、孫子。『戦わずして勝つ』が有名ですね」
田中監督が口を開く。
「『彼を知り己を知れば百戦危うからず』だな」
「さすが監督!その通りです。ただ、その続きがあります。『彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。』つまり、敵も自分も知っていれば負けることはないが、自分のことしか知らなければ勝ったり負けたり。両方知らなければ、毎回危ない戦いになる、ってこと」
田村が笑う。
「うちのバスケ部、両方知らないようなもんだったなぁ」
「そういうこと。だから、田中監督には『ランチェスター戦略』を渡し、子どもたちを観察して『個の強み』を見つけることに注力してもらった。これが『己を知る』」
「そして、今後は相手チームの分析を深めて『彼を知る』。これらが揃えば、格上相手にも勝機が見える」
「戦わずして勝つ」シャアの戦略
「『戦わずして勝つ』を体現したキャラクターと言えば、シャア・アズナブル」
田中監督が「さすがシャア」と頷く。
「シャアは、常にアムロとの直接対決だけを求めていたわけじゃない。彼は、政治的な駆け引きや、心理的な揺さぶりで、戦局を有利に進めようとした」
「例えば、地球降下作戦でホワイトベースを追撃する際も、無闇に突っ込むのではなく、情報を集め、相手の補給を断ち、消耗させることを狙った。これは、正攻法でぶつかるよりも、相手の戦力を間接的に削ぐという『謀攻篇(ぼうこうへん)』の考えに近い」
田中監督が腕を組み直す。
「彼はまた、『勝ちやすい状況』を自ら作り出すことを得意としていた。これは孫子の『地形篇』や『虚実篇』に通じている。例えば…
【ダカール演説】
世界中のテレビ中継を利用して、自らがジオン・ダイクンの子「シャア・アズナブル」であることを明かし、ティターンズの非道さを暴露することで地球連邦政府を揺さぶり、エゥーゴへの支持を集めた。
【ハマーン・カーンとの駆け引き】
激戦の中、ハマーンの精神的な揺らぎを突き、彼女が抱える苦悩や過去の因縁を利用して、アクシズ(ネオ・ジオン)とエゥーゴの戦いを優位に進めようとした。
…シャアは直接的な戦闘力だけでなく、こうした相手の心理や組織に働きかけて戦意を喪失させたり、自滅させたりすることで勝利を狙う戦略家だったんだ。」
「つまり、バスケ部で言えば、単にスキルを磨くだけでなく、相手チームの弱点を見抜き、それに合わせた戦略を立てたり、相手を揺さぶるような戦術を使うってことか」
田中監督が興奮気味に言う。
「その通りです。そして、『彼を知り己を知る』を徹底することで、自分たちの得意な『一点突破』の形に持ち込み、相手の弱点を突く。これが、『戦わずして勝つ』=『優位な状況で戦う』に繋がります」
第三部
ガンダムから学ぶ、人生の戦略
「ガンダムの戦場は、個々のパイロットの腕前だけでなく、その背後にある戦略が勝敗を分ける。それは、バスケ部の戦いも、僕たちの人生も同じ」
僕はグラスに残ったビールを飲み干した。
「目の前の課題に、ただ根性論でぶつかるんじゃなく、まずは『誰の課題か』を明確にする。そして、自分たちの『強み』を知り、『弱者』としての戦略を立てる。さらに、相手や状況を深く理解し、『戦わずして勝つ』状況を作り出す」
田中監督が感嘆の声を上げる。「なるほど…ガンダムは奥が深いな」
田中監督が静かに頷いていた。
「ていうかさ…」
もくもくと焼き鳥を食べてい田村が、ようやく口を開いた
「…お前、やっぱりガンダムオタクだな」
「否定はしないさ。僕がガチ勢になったのは結果論だけど…その精神が、時には人を救うこともあるんだぜ?」
「ガンダム、なかなか面白いな。今度息子と見てみるか」
「そういえば監督、珍しいですね。息子さんにプラモ買ってあげるなんて」
「いや?リハビリの先生に貰ったって言ってたぞ?」
…おや?
ガンプラと言えば…👇️
【投げられないピッチャーに“ガンダム”で説明してみた話】
【次回】
番外編2-1:最近の若手は…って話
〜「変わった」のは若手か、僕たちか〜
