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愛犬の「5つの自由」守れていますか?お口のSOSを見逃さないための正しいデンタルケアと病院選び

こんにちは!犬猫のオーラルケア・ドッグインストラクターとして活動しているKです。

「全身麻酔が必要なのはなんとなく頭ではわかっている。でも、やっぱり怖い。もし合法で麻酔なしでできる歯石取りがあるなら、そっちを選んであげたい……」

これは、私が日々ご相談を受ける中で、本当によく耳にする飼い主さんの切実な本音です。愛犬を想うからこそのそのお気持ち、痛いほどよくわかります。

しかし、「今のところ大きな問題はなさそうだから」「獣医さんにも特に何も言われていないから」という理由で、口の中のSOSを見逃してしまっているケースが実は少なくありません。

先日、私の過去の記事を読んでくださったある飼い主さんから、こんなご報告を受けました。

「記事を読んで、念のため『歯科に強い』動物病院へ行ってみたんです。そうしたら、もう7歳になるのに、なんと乳歯が5本も残っていることが発覚しました……」

今回はたまたま悪さをしない位置にあったから良かったものの、本来であれば、生後4ヶ月や6ヶ月といったパピー期の段階で適切にアプローチしていれば、正しく永久歯が生え揃うチャンスがあったかもしれません。あるいは、残った乳歯と永久歯の隙間に汚れが溜まり、そこから重篤な歯周病へと進行してしまう大きなリスクも孕んでいました。

7歳になるまで、何度も動物病院に通い、身体検査を受けてきたはずなのに、なぜ5本もの乳歯が見過ごされてしまったのでしょうか?

実はここに、現在の獣医療における「ある構造的な問題」が隠れています。そして、スケーラーを使わない無麻酔の歯石除去が「合法だから安全」とは言い切れない理由も、ここにつながってくるのです。

今回は、動物福祉の基本である「5つの自由」の視点、そして人間の歯科医療の歴史も交えながら、愛犬の歯を本当に守るための「チーム医療」と「病院選びのポイント」についてお話しします。

少し長くなりますが、愛犬の「おいしくご飯が食べられる毎日」を守るために、ぜひ最後まで読んでみてください。


1. 獣医さんは万能じゃない?人間と動物の「医療構造」の違い

皆さんは、動物病院の先生がどれほど幅広い分野を診ているか、想像したことはありますか? 内科、外科、皮膚科、眼科……人間であればそれぞれ専門の科が分かれているものを、獣医さんはすべて一人で診察しています。まさに全身を診る「総合診療のプロ」であり、命を預かる総監督です。

一方で、人間の医療を思い浮かべてみてください。「医師」と「歯科医師」は、全く別の国家資格として分かれていますよね。それだけ「歯や口腔内」という分野は、深い解剖学的な知識や専門的な技術を要する独立した領域なのです。

しかし、動物の世界に「歯科医師」という独立した国家資格はありません。獣医学部のカリキュラムでは、あらゆる動物種の全身の疾患を学ぶ必要があるため、実は「歯科学」に割かれる時間はごくわずかです。

だからこそ、日々の膨大な診察の中で、専門的な歯科のトレーニングを十分に積んでいない場合、先ほどの「7歳で乳歯が5本残っていた」というような見落としが構造上どうしても起こりやすくなってしまうのです。これは獣医さんが悪いのではなく、獣医師ひとりにすべての専門領域を完璧にカバーさせること自体に無理があるということです。

2. 「痛くなってから」では遅い。動物たちも予防歯科の時代へ

人間の歯科医療の歴史を振り返ってみましょう。 昔の日本の歯医者さんは「虫歯になって、痛くなったら行く場所」でした。しかし今は「痛くならないように、定期的にクリーニングとチェックに行く場所」へとパラダイムシフトが起きています。

実は、寿命が延びた現在の犬や猫たちも、全く同じ時代を迎えています。

一度壊されてしまった歯周組織(歯を支える骨やシャーピー線維など)を元に戻すのは、人間でも動物でも非常に困難です。「悪くなってから治療する」のでは遅いのです。

だからこそ、「何か異常があったら行く」のではなく、生後4ヶ月や6ヶ月といったパピー期の段階から、定期的に「プロの目」によるチェックを受けることが、一生の歯を守る分水嶺になります。

3. 「5つの自由」から考える。表面をきれいにするだけで「適切な治療」と言えるのか?

愛犬のケアを選ぶ際、動物福祉の世界基準である「5つの自由」を基準に考えてみてください。 多くの飼い主さんが気にするのは「不快からの自由(恐怖やストレスのない環境)」です。もちろん、起きている状態で無理やり処置をされるストレスは大きな問題です。

しかし、私が専門家として最も危惧しているのは「痛み・傷害・病気からの自由(予防や迅速な適切な治療が受けられること)」が奪われてしまうことです。

歯周病の本当の恐ろしさは、目に見える歯石ではなく、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の奥深くに潜む菌にあります。本当に「適切な治療」を行うためには、専用の器具でポケットの深さを測り(プロービング)、歯科用レントゲンで目に見えない顎の骨の状態を「適切に検査」しなければなりません。

動いてしまう状態での表面的な処置では、この「適切な検査」が出来ません。検査ができなければ、根本的な「適切な治療」に結びつくことはありません。 つまり、一時的に見た目を白くしているだけで、水面下で進行する病気を放置し、結果的に「病気からの自由」を奪ってしまっているのです。

4. 犬の「歯医者さん」を探す3つのポイント

では、私たち飼い主は具体的にどう行動すれば良いのでしょうか?

人間が風邪で行く内科と、歯を診てもらう歯科を分けているように、動物たちも「総合診療のかかりつけ医」とは別に「犬の歯医者さん(歯科のかかりつけ医)」を持つことを強くおすすめします。

では、どのような基準で歯科に強い病院を選べばよいのでしょうか。ここで一つ、大切な視点があります。

それは、「歯の治療経験が豊富」という言葉が、獣医療の現場では「悪くなった歯を抜く手技(外科処置)に慣れている」という意味合いになりがちだということです。

しかし、私たちが本当に求めているのは、悪くなった歯を上手に抜いてもらうことではありません。「なぜ歯周病になってしまったのか(原因)」をしっかり理解し、「どうすればこれ以上悪くならないか」を教えてくれることですよね。

悪くなってからの事後処理ではなく、原因や治療、そして維持にまで深くアプローチしてくれる病院を見つけるために、ホームページ等で以下のポイントをチェックしてみてください。

  1. プロフィールや発信内容(原因や予防への姿勢): ただ「処置の件数が多い」だけでなく、歯周病の原因(菌の働きや歯周組織のメカニズムなど)や、予防歯科の重要性についてしっかりと勉強し、発信している先生かどうかが大きな判断基準になります。日本獣医歯科学会のような学会に所属していたり「小動物歯科研究会レベル4」などを修了しているかも、一つの目安になります。(※もちろん、所属がないとかこの資格がないとダメというわけではありません)

  2. 【必須】歯科用レントゲンがあるか :外からは見えない歯根や顎の骨の状態、「歯を支える組織がどれくらい残っているか」を正確に把握するためには、歯科用レントゲンは「必須」の設備です。適切な検査ができなければ、適切な予防も治療もできません

  3. 【理想】マイクロスコープが完備されているか: さらに万全を期すなら、マイクロスコープを導入している病院であれば、より安心です。まだまだ配備している病院は数%と聞いていますが拡大率がまるで違うので歯石除去率が劇的に変わるからです。導入で来ている病院の%から見てもそれだけで力の入れ方もわかりますよね。

5. まとめ:愛犬の歯を守る「チーム医療」をはじめよう

私がこの記事を書いたのは、飼い主さん自身が甘い謳い文句や、法律の穴を突くようなサービスに惑わされないようになってほしいからです。歯周病がどのような病気なのかを正しく理解していれば、「これはおかしいな」とご自身で気が付けるようになるはずです。

その上で大切にしたいのが、愛犬の心と体に負担をかけていないかという「動物福祉」の視点です。これには、ただ優しいだけでなく、愛犬を守るための「強さ」も必要だと考えています。優しさと強さを両立させるのは実はとても難しいことですが、ぜひ一度考えてみてほしいのです。

また、何となく麻酔が怖いからではなく、高齢やアレルギーの子など麻酔を用いた治療をしてあげたいけど出来ないと悩む方はあわせて以下の記事を読んでみてください。

歯の専門的なチェックや治療は、設備と知識の整った「歯科の主治医」にお願いする。そして、ご自宅での正しいデイリーケアは、私たちのようなケアの専門家と一緒に取り組んでいく。

プロのケア(治療) → ホームケア → 定期検診 → プロのケア

このタッグこそが、大切な愛犬の「おいしくご飯が食べられる毎日」を一生涯守っていくための最善の形だと、私は確信しています。

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