似た者同士➕第一話
あらすじ
ふたりぼっちは難しい
似た者同士のふたりぼっちは特に。
似ている部分が、良くも悪くもお互いに気になってしまう。
引き合う要素は、ネガティブなのか、ポジティブなのかはどうでもいい。
ふたりの関係が続く為に、ふたりの間に、何かがあればいい。
あなたがいれば他に誰も要らない、なんて嘘。
ふたりの間にな誰かがいるから、ふたりの関係は続く。
そうなると、不器用で、遠回りなのは仕方ない。
そんな事に気づけない、それぞれのふたりぼっちな人達の話。
リアルな心情に、創作話としての特殊要素を混ぜてみた。
*********
私には忘れない人がいる。
お互いの何かを共有した人。
恋人かって?
それはYESでもあり、ノーでもある。
ある年の間、心を通わせた人だ。
私の名はロク。
私は施設育ちだ。
その人は私同様、施設で保護された子だった。
私の育った施設ではないが、同じ施設の傘下ではある。
偶然にも、私は施設卒業後、施設の運営する別の養護施設で働き始めた。
その人はそこに保護された子だった。
その人の事は、最初から気になっていた訳ではない。
私にとってその人は、お世話をする子供の内のひとりでしかなかった。
その人にとっても、私は施設で自分の世話を焼いてくれる大人の内のひとりでしか無かったと思う。
後にその人と、当時の事を懐かしんで会話をしたが、お互いに取り囲む環境については盛り上がって話をしたが、お互いの様子に付いては朧げといった有様だ。
当時、施設で働く人間の中で20歳以下は私だけだった。
当時のその人にとって私は、少し年の離れた姉といったところだろう。
朧な記憶の中でも、その人はいつも同じ子と過ごしていた。
施設で働く同僚がその人について、こう呟いていたのを覚えている。
「同じ同郷である、あの子にしか心を開かなくて困る」と。
その人はあの子が気に入らない子が、あの子にとって気に入らない事をすると、毎回あの人の世話役に回った。
しかし、その子はあの子がどんなに尽くしても、その人を認める事は無かった。
むしろ、次第にその人に素っ気ない態度を取る様になり、雑魚扱いもままあった。
それは別に珍しい事ではない。
子供だけの世界ではよくある事だ。
相手の望むままに与え過ぎると、人は感謝しない。
むしろ、簡単なヤツと認識されて、舐められるのだ。
大人達はそこに干渉しなかった。
世話する大人と同じ空間に居ても、施設の子供達と世話役の大人達は水と油の様に混ざる事はない。
それが施設という所だ。
彼等は同じ空間にいても、お互いのテリトリーをパズルのピースで区切られたかの様に不干渉だ。
そう、だから珍しい事ではない。
それが日常茶飯事だ
私もかつて同じ空間に居た先輩として、老婆心を出す事は無かった。
私がその人の事を気にかける様になった切っ掛けは、その人が施設から脱走したからだった。
その人が脱走する少し前に、あの子が施設から脱走した。
きっと後を追ったのだろう。
私はその人があの子と同じ事をすると、わかっていた。
施設出身の先輩の勘がそれをお告げしたのではない。
あの子が施設から居なくなってから、その人が纏う空気の色が変わったのだ。
ドス黒い怒りの感情の色の上に燻銀の様な色が現れ始めたのだ。
何か不確な部分が大きいが、何かの希望を抱き始めて居る。
微妙な例えだが、冒険に出る前の勇者の心境と言ったとこだろうか?
ドス黒い黒が影を顰めたと、認識した翌日だった。
その人は姿を消したのだ。
もちろん、施設ではそれなりに騒ぎにはなった。
が、その人のケースもあの子同様、行方不明扱いで終結した。
私も彼等…その人とあの子のことよ?
彼等の事を、日々の日課に追われ、忘れかけた頃だ。
偶然にも現れたの、彼等が。
私が担当している炊き出しの会場に。
彼等は以前属していた施設内で、行方不明扱いが原因で騒ぎになっていた事をこれっぽっちも気にしてなかった。
その事実に唖然したけど、まあ、施設に居る子は概ねこんな感じだ。
他人の身になって物事を考えられない。
周囲が何と言おうが、一ミリも頓着する事無く己の思いのまま動きたい。
だから、彼等が何事も無かったかの様に私に話しかけてくる事も最終的には気にしなかった。
必要な機関に彼等の事を通報したのかって?
いいえ。
その頃の私は彼等と一緒に過ごした施設に嫌気が差した為、そこを辞めて別の施設で働いていたの。
面倒だ。
なんかふたりとも元気そうだな。
彼等の纏う感情の色は施設に居た頃に比べ、実に清々しい色をしていたし。
そんな言い訳をして通報義務は怠ったわ。
皮肉なもので、立場違えど同じ施設に居た頃は、お互い適度に無関心だった。が、違う環境に移ってからお互いを気にかけるようになった。
それには、その人と私の幼少期の環境が少し似ている事も関係しているかもしれない。
(続く)
