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kobunsha_shinsho
本棚の他人 #シロクマ文芸部
古本を手に入れるのが好きだ。
手にとって、パラパラとページをめくる。
痕跡を探すのだ。前の持ち主の痕跡を。紙の隙間に残る、知らない誰かの暮らしを、そこに見る。
シミを見つける。
どうやらお菓子を食べながら読んでいたらしい。
スナック菓子だろうか。それともクッキーだろうか。
飲み物はなにを? コーヒーだろうか。ジュースだろうか。
けれど、途中から小さなシミは消えた。
お菓子を食べることもやめて、熱中したのだろうか。
それとも、読むことをやめたのだろうか。
書き込みを見つける。
律儀な字が並んでいる。
疑問、賛成意見、反対意見、自分がどうするべきか、なにをしないのか。
勉強熱心な人だったのだろう。
この本は、持ち主の人生を変えただろうか。挫折を与えただろうか。
なんとなく、うまくいっていてほしいなと願う。
マーカーで線が引かれているのを見つける。
ページの端が折られている。
ページの半分ほどが破られている。
子どもが好きそうなキャラクターのシールが貼られている。
気づけば、本の内容はまるで頭に入ってこない。
ただひっそりと、前の持ち主の暮らしを見る。
他人の暮らしを堪能して、自分の本棚に収める。
自分のものになったはずなのに、それでもまだどこか他人行儀だった。
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2025.09.23 もげら
