「ブレッド&バターピクルス」の甘酸っぱさがやみつきに。ファイヤーキングのボウルで保存食作り
7月も後半になると、カナダのスーパーやファーマーズマーケットには、ピクルス用の小ぶりで太めのきゅうりが並び始めます。それと同時に、保存瓶の「メイソンジャー」が店頭に山積みに。

この光景を見ると、「ああ、今年もピクルス仕込みの時期が来たんだな。」と感じます。ご近所さんと交わす世間話でも「ところで、ピクルスもう作った?」という具合です。
そうなんです。日本の「梅仕事」のように、こちらではピクルス作りが夏の風物詩でもあります。
短いずんぐりむっくりのピクルス用のきゅうりが市場に出回るのは、ほんの1ヶ月程。この短い旬を逃すまいと、多くの家庭がピクルス作りにいそしむのです。
先日、焼きたてのクッキーを手にカナダのお母さん的存在のメルママの家を訪ねると、キッチンは甘酸っぱい香りに満ち、「ブレッド&バターピクルス」とレリッシュ(きゅうりの刻みピクルス)の仕込みの真っ最中でした。
カウンターには出来立てほやほやのジャーがずらり。
その光景は、私にとって夏の始まりの合図のようなもの。
「今年は早めに仕込んでるの。」とメルママ。
「そうそう、これこれ!」と思わず声が出てしまいました。
何度となく、このキッチンでお手伝いしましたので。

出来立てのピクルスが並んでいました。
レリッシュも同時進行で仕込み中。
写真:筆者
その光景に触発され、初めて教わってからずっと作り続けている、メルママ直伝のレシピで我が家でも恒例のピクルス作りが始まりました。
3年分を仕込む、うちのピクルス仕事

写真:筆者
我が家では、一度に3年分の「ブレッド&バターピクルス」を仕込みます。
夫婦二人暮らしなのにどうしてそんなに沢山?と思われるかもしれません。
実は、クリスマスなどに気の置けない友人への、ちょっとしたおくりものにも喜ばれるからです。
かわいい布を蓋にかぶせてリボンを結べば、手作りのこころづくしにもなりますし、わたしも手作りピクルスをクリスマスプレゼントでもらうことも少なくありません。

ブライン液は沸騰するまで煮詰めます。
写真:筆者
ピクルスの味のベースとなるブライン液。
酢と砂糖などをベースに、マスタードシードなどのスパイスやハーブを加えた漬け汁のことで、こちらでは“brine”と言います。

Fire-Kingの大きなミキシングボウルで

1950年代前半頃製造
写真:筆者
ピクルス作りには、愛用のヴィンテージ食器も活躍します。
1950年代に作られたFire-Kingの大きなミキシングボウルは、厚手のミルクガラスで安定感抜群。重たいけれど、昔の道具ならではの丈夫さが頼もしい存在です。たくさんのきゅうりも丁度よく収まります。
お気に入りの道具に囲まれて作業する時間も、この季節仕事を愛する理由の一つです。
カナダの食卓の、お漬物のような存在

カナダの食卓において、ピクルスは日本の「お漬物」のように欠かせない名脇役といえるでしょう。
ハンバーガーやサンドイッチにはもちろん、肉料理の付け合わせとして「好きなだけどうぞ」と、テーブルに常備されていることも珍しくありません。
厳しい冬が長いこの国では、夏に採れた野菜を保存食にして一年中楽しむ知恵が根付いているように思います。
メルママ直伝「ブレッド&バターピクルス」のレシピ
このレシピの嬉しいところは、瓶ごと煮沸する工程がないので、とても手軽なこと。ここでは作りやすい分量でご紹介します。
日本の長いきゅうりでも美味しく作れますよ。
おいしさの秘訣:メルママの知恵袋
① なぜ氷を使うの?
塩と一緒に氷をきゅうりに加えるのは、浸透圧で余分な水分を抜き、氷の冷たさで組織を引き締めるため。このひと手間で、時間が経っても「ポリポリ、カリカリ」の小気味よい食感が保たれます。
ちなみに氷を使う手法はレアとのこと。
② なぜ瓶の煮沸が不要なの?
熱湯消毒した瓶に、沸騰直後の熱々の漬け汁を注いで素早く蓋をすることで、瓶の中が真空状態になります。これにより雑菌の侵入を防ぎ、常温での長期保存が可能になるのです。
作りやすい分量で作る ブレッド&バターピクルスのレシピ

さすがに食感のポリっと感はひかえめになってますが、食べた旦那さん曰く、
「マスタードシードが効いてておいしいね。」と。
写真:筆者
以下は、メルママ伝授のクラシックでシンプルなレシピを元に、作りやすい分量にしました。
味や量は材料や素材の違いで多少差異があるとおもいますので、お好みで微調整していただけたらと思います。
ブレッド&バターピクルスの材料(500ml瓶 1個分)
きゅうり:約300g(日本のきゅうりだと1~2本前後かな?)
玉ねぎ:1/3個
塩:小さじ3
氷:5〜6個
砂糖:100g
酢:ホワイトビネガーまたはアップルサイダービネガー:180~200ml
マスタードシード:小さじ1/2
セロリシード:少々(ひとつまみ程度)
ターメリックパウダー:少々(ひとつまみ程度)
クローブ(ホール):1〜2粒(またはパウダー少々)※あれば
作り方
※あらかじめ瓶と蓋は煮沸滅菌しておきます。
1.きゅうりと玉ねぎを約5mm厚の薄切りにする。
2.ボウルに1.の野菜、塩、氷を入れて混ぜ合わせ、3時間ほど置いて水分を出す。
3.ザルにあけて余分な水分を取り除き、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。この工程で、きゅうりに程よく塩味が染み込んでいます。
4.大きめの底が厚い浅鍋に、砂糖、酢、マスタードシード、セロリシード、ターメリック、クローブを入れて沸騰させます。
(※塩は工程2できゅうりに味付けしているため、ここでは加えませんが、味見して塩味がたりないようならお好みで加えてください。)
5.さきほどの水分をきったきゅうりをここに加え、混ぜながらしっかり再沸騰させます。
全体が沸騰したらそれ以上煮込む必要はありません。
煮込みすぎるときゅうりのポリッとした食感が失われるので注意。
(ここで沸騰するまで高温にしてください。そうでないと瓶詰めしたときに真空状態にならないので、大事なポイントです。)
6.清潔な瓶に沸騰したての5.を詰めます。(きゅうりの温度が下がらないようにできるだけ素早く)瓶の口から1cm下まで注いできます。
7.やけどに注意して固く蓋を閉め、粗熱が取れたら完成。
常温で保存できます。
お好みでガーリックやレッドペッパー、ブラックペッパー(黒コショウの粒)を入れて作る方も多いです。
ピクルスは北米のおふくろの味、各家庭でそれぞれの個性があります。
ちょっと変わった名前「Bread and Butter Pickles」の由来

「パンとバターのピクルス?」と、誰もが不思議に思うこの名前。実は、1920年代のアメリカ大恐慌時代に生まれた、心温まる物語に由来します。
当時、不作で売り物にならない小さなきゅうりに困っていた農家のファニング夫妻が、一族に伝わる甘いレシピでピクルスを作ったところ、これが大評判に。
夫妻は生活のため、このピクルスをパンやバターといった生活必需品と交換するようになったのです。つまり「パンとバターと交換するためのピクルス」だったのですね。
やがてこのピクルスは商標登録され、その美味しさからアメリカ中に広まり、いつしかこの甘い味付けのスタイルそのものが「ブレッド&バターピクルス」と呼ばれるようになりました。

ピクルスを楽しむ簡単アレンジ術

写真:筆者
我が家ではポテトサラダにピクルスのシロップをひと匙加えてかくし味にしたり、みじん切りにして混ぜ込んだりも。程よい甘味でまろやかな味になります。
また、ハンバーガーやホットドッグとの相性も、言わずと知れた鉄板コンビです。ホームパーティーでもよく作るメニューなので、その日はピクルスをお皿に移してテーブルに置いておき、あとは各自、お好きなだけ自由に取ってもらっています。
パンとバターでシンプルに
このピクルスの名前の由来にもなった、最もクラシックな食べ方です。
バターを塗ったパンに乗せて:焼きたてのパンや、少しだけトーストして柔らかさを残したパンに、質の良いバターを塗り、ピクルスを数枚乗せるだけ。
パンの甘みとバターのコク、ピクルスの甘酸っぱさがよく合います。大恐慌時代にはこれだけで立派な食事でした。
定番の組み合わせ:サンドイッチ&バーガー
ピクルスの甘酸っぱさは、肉やチーズの濃厚な味わいを引き立て、さっぱりとさせてくれます。
グリルドチーズサンドイッチ:とろけるチェダーチーズとピクルスの組み合わせは鉄板です。濃厚なチーズの味をピクルスの酸味が引き締めます。
デリ風サンドイッチ:パストラミ、コンビーフ、ローストビーフなど、塩気の効いたお肉との相性は抜群です。
ツナサラダや卵サラダのサンドイッチ:マヨネーズベースのサラダに少しだけ刻んで混ぜ込むと、味に深みと食感のアクセントが生まれます。
ハンバーガーやホットドッグ:ジューシーな肉の旨味を引き立てる、最高の付け合わせです。
おつまみとして:チーズや肉料理と一緒に
食卓の名脇役として、様々なシーンで活躍します。
チーズプラッターに添えて:シャープチェダーチーズやブルーチーズなど、風味の強いチーズと特に相性が良いです。クラッカーにチーズとピクルスを乗せるだけで、簡単でおしゃれな一品になります。
我が家ではお酒のつまみになくてはならない存在です。肉料理の付け合わせに:グリルしたお肉やソーセージの横に添えるだけで、口の中がさっぱりし、食事が進みます。
特にハムとの相性が抜群!刻んでソースやドレッシングに:刻んでマヨネーズと混ぜればタルタルソースに、ポテトサラダやデビルドエッグに加えれば、いつもの味がワンランクアップします。
色々な組み合わせでお気に入りの食べ方を見つけるのも、また楽しいひとときです。個人的にはマスタードシードがかなりいい仕事すると思っています。香り高く、プチッとした食感も最高です。
熱々のピクルス液を瓶に注いで蓋をし、20分ほどすると、「ペコン!」という音が響きます。これは瓶がしっかりと真空になって蓋が引っ張られておこる成功の合図なのですが、また3年後にこの音を聞くのを楽しみに、それまでの間、色々な料理にピクルスを使って食べようと思います。
筆者
桜野ナオミ
プロフィールはこちら
写真クレジット:すべて筆者撮影
(Bread and Butter Picklesの広告画像2点を除く/出典はThe Best Foods Inc.)
