英国債利回り上昇の理由と影響について
イギリスの30年国債利回りが2025年1月8日時点で5.35%に達しました。この水準は1998年以来の高さであり、市場ではスターマー政権の財政拡張的な政策が国債売りの要因の一つとされています。スターマー政権が誕生した2024年7月以降、国債や通貨の警戒を呼びかけてきましたが、その懸念が現実化しつつあります。
私の考え
労働党の大きな政府を目指す政策は経済にブレーキをかける可能性があると思っています。

市場では、この状況を「2022年のトラスショックの小規模版」とする見方が多いです。今回の事態は2022年ほどの大混乱には発展しない可能性が高いと感じる一方で、国債の利回り上昇がもたらす経済への影響は無視できないほど深刻であると考えています。
10年国債利回りの推移と背景
2024年9月頃まで3.8%程度で推移していたイギリスの10年国債利回りは、同年10月末には4.45%まで上昇しました。この原因として、スターマー政権が発表した予算計画により財政赤字が拡大するとの見方が市場で広まったことが挙げられます。
その後、一時的に上げ幅が縮小したものの、政権が「PLAN FOR CHANGE」という重点政策を発表しました。その中で、警察官の大幅増員やNHS(国民保健サービス)のサービス拡充、住宅建設など、さらなる財政赤字を拡大させる施策が打ち出されました。
この影響で、2024年末には4.57%、2025年1月8日には4.8%に達しました。私は、このような急速な利回り上昇は、スターマー政権の政策が市場に不信感を与えている結果だと考えています。
30年国債の価格変動とそのリスク
30年国債の利回りも1%程度上昇しましたが、価格の下落幅は10年国債よりも大きくなっています。30年国債の価格が銘柄によっては20%以上も下落している状況は「暴落」と言えるでしょう。特に2020年に発行された銘柄が発行価格から65%もの値下がりを記録していることに衝撃を受けました。
2022年のトラスショックと比較すると、短期間での急落幅はやや小さいものの、今回も相当なインパクトがあると私は思います。こうした長期国債の価格下落が市場全体に与える影響は非常に大きいと考えています。
トラスショックとの違いとLDI問題
2022年のトラスショックでは、年金基金が行っていたLDI運用が問題を深刻化させました。当時、低金利時代において年金基金が保有する国債を担保にレバレッジをかけた取引を行っていたため、国債価格が下落すると担保の強制売却が発生し、金融市場が混乱しました。私は、この状況が国債とポンドの暴落を加速させたと考えています。
LDI(Liability Driven Investment 債務重視の運用)
LDIは、金利スワップ等のデリバティブを利用して資産と債務のキャッシュフローを近づける、すなわち、金利スワップで受け取るキャッシュフローを負債にマッチングすることにより、債券や株式等の現物資産では対応できない企業年金特有の複雑で超長期のキャッシュフローを複製することを目的とした手法。
しかし、2022年と比べて現在は金利環境が大きく変化しており、年金基金が備えを整えている可能性が高いです。LDIのポジション解消による市場混乱の再発は限定的だと考えていますが、データが公開されていない以上、完全に安心できる状況ではないとも思います。
スターマー政権の政策とその課題
スターマー政権は増税を回避しつつ、公共サービスを拡充する政策を進めています。私は、この政策が短期的には国民に支持されやすいものの、財政的には無謀なものであると考えています。警察官の増員、NHSの拡充、5年間で150万戸の住宅建設など、巨額の資金を要する施策を実行するには国債発行に頼るしかなく、その結果として利回り上昇が引き起こされていると私は思います。
利回りの上昇は、住宅ローン金利の上昇や経済成長への下押し圧力を招いており、私はこれがイギリス経済にとって深刻な課題であると考えています。また、中央銀行が国債価格の下落を放置するのか、それとも通貨安を容認するのか、政策判断が難しい状況に追い込まれていると感じています。
イギリスの衰退とその影響
イギリスは慢性的な経常収支赤字を抱え、国債の約3割を外国人投資家が保有しています。私は、国内で国債を吸収する余裕が乏しい中で、国債発行の増加がさらなる悪循環を生む可能性が高いと考えています。スターマー政権が政策の軌道修正を行わない限り、この悪循環は止まらないでしょう。
公共サービスの質の低下やインフラの老朽化は、国全体の衰退を象徴しているように思います。この国債利回りの上昇も、イギリスの構造的課題が表面化した一例であると考えています。
結論
スターマー政権の政策が財政的に現実的ではないと感じており、どこかで方針を見直す必要があると考えています。政権がこの問題に適切に対応できない場合、イギリス経済がさらに悪化する可能性が高いでしょう。この先も注視し、今後の展開を見守りたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考
地方財政の課題
地方政府の財政状況が厳しい中では、他に選択肢が少なく、やむを得ない決断を迫られている自治体も少なくありません。
例えば、イギリスでは一部の自治体がゴミ収集の頻度を減らしたり、街灯を消したりすることでコスト削減を行っています。
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