財務省の長期国債利回り急上昇への対応
2025年5月27日、財務省が長期ゾーンの国債利回り急上昇に対して動き始めました。これまでも一部の機関投資家が大きな含み損を抱えていることが話題となっていましたが、ついに政府が対応の姿勢を見せた格好です。
この利回り急上昇の問題については、財政危機といった見方もありましたが、実際には発行年ごとの需要と供給のバランスが原因であり、財務省が発行計画を調整すれば対処可能な問題だと以前から指摘されてきました。
現在の長期国債の利回り上昇は、財政危機の兆候ではなく、需給のミスマッチや政策変更に伴う一時的な市場調整の結果と考えるべきです。今後も一部の局面で市場が荒れる可能性はありますが、それをもって財政破綻だと結論づけるのは早計です。
超長期国債利回りの動き
5月27日の朝、日本市場では超長期国債の買い気配が急激に強まり、利回りが急低下してマーケットが始まりました。前日はニューヨークとロンドンの市場が休場だったため、債券利回りに影響するような材料は見当たらず、不自然な動きと受け止められていました。

その後、午後になってブルームバーグなどの報道で、財務省が市場関係者にアンケートを送付していたことが明らかになりました。アンケートは5月26日に送られており、国債の発行額が適切かどうかを問う内容で、証券会社や主要な機関投資家に送られていたのです。
発行年の偏り問題と財務省の対応
発行額が適切でないとすれば、問題のあるゾーンは長期ゾーンである可能性が高い。発行年の偏りによって超長期債だけ供給過多となり、需要が乏しいという構造的な問題です。そのため、長期ゾーンの発行を減らし、中期や短期ゾーンを増やすことで調整が可能です。
このタイミングで財務省が動くとは思いませんでした。財務省も色々叩かれているので、焦りもあるのかもしれませんね
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) May 27, 2025
このような柔軟な対応をすぐに財務省が取るとは思われていませんでしたが、意外にも素早く動いたのは、近年のデモや批判を受けて「財務省はしっかり仕事をしている」と世論にアピールする意図もあったのかもしれません。
利回り上昇の沈静化
今後、発行額の調整が行われれば、超長期ゾーンだけが極端に金利上昇する状況は改善され、利回りは適度な水準に戻ることが期待されます。ただし、これは日銀が国債買入れを段階的に減らす過程で起こっていることであり、今後も似た問題が繰り返される可能性は高いでしょう。
10年にわたる異次元緩和の影響で投資家が一度離れた市場であるため、今後もこうした発行年の調整は必要となっていくと見られます。
減損リスクと金融機関への影響
財務省が動いたもう一つの背景には、生命保険会社などを中心に減損リスクが表面化し始めたことがあります。会計上、満期保有目的の債券であっても価格が50%以上下落すると「著しく価格が下落した」として損失を実現して認識しなければなりません。
債券は満期まで保有すれば価格下落は問題にならないという意見もありますが、これは価格の下落が50%未満にとどまる場合の話です。最近では減損の可能性がある企業が増えており、財務省としてもこれ以上の金利上昇は金融機関の経営に悪影響を与えると判断した可能性があります。
社債の下落
5月23日時点で、30年債の利回りは3.2%、40年債は3.7%を記録しましたが、この時点で既に国債価格の大幅下落が進んでいました。例えば、2020年4月発行の40年債(第13回)は、発行時に比べて約54%も価格が下落し、45.99となっています。
また、社債ではさらに大幅な価格下落が見られます。特に50年社債を発行している鉄道会社などの公益セクターがその代表例です。JR東日本が2019年に発行した50年債(利率0.809%)は35.48と、65%程度の下落。JR西日本の2020年発行の50年債(利率1.031%)は39.55まで下がっています。
公益・不動産セクターの社債下落
その他にも大阪ガス(2019年発行、利率0.7%)は33.02、東京ガス(2020年発行、利率0.988%)は38.52、東京メトロ(2020年発行、利率0.937%)は37.94と、いずれも大幅な下落です。
不動産セクターでは三井不動産(2020年発行、利率1.03%)が39.56、三菱地所(2019年発行、利率1.132%)が42.21となっています。さらにUR都市機構や日本政策投資銀行といった公的機関も50年債を発行しており、同様の下落が確認されています。
これらの債券価格は日本証券業協会のウェブサイトで確認できます。
固定金利債と永久債
なお、社債の中には永久債というさらに長い債券もありますが、こちらは変動金利であることが多く、利回りが動いても利率自体が変動するため、価格変動は小さく抑えられています。そのため、今回のような価格下落が著しいのは主に固定金利の長期債であると言えます。
財務省の対応と市場の見通し
すでに社債では発行価格の半分以下になっているものが数多く存在しており、今後は国債においても同様の傾向が強まる可能性があります。そうした中で財務省がついに対応に動き出したことで、5月23日に記録した利回り水準(30年債の利回り3.2%、40年債の利回り3.7%)が当面のピークになる可能性も出てきました。
財務省が利回り急騰への対応姿勢を示したことで、一旦は市場の混乱が落ち着く見通しです。今後も国債市場と社債市場の動向に注視しつつ、情報をお届けしたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考
日銀が利上げを進める中で、金利水準がある程度上がってきたことで、海外投資家の保有を再び増やし、「保有構造の多様化」を進めていこうというのが、今の財務省の考え方だと思われます。
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