スウェーデン・クローナの上昇理由
これまでもスウェーデンの政治について取り上げてきましたが、この記事ではスウェーデン経済、特に通貨「クローナ」の近年の動きについて詳しく解説します。実は、スウェーデン・クローナはこのところ他国通貨に対して軒並み上昇しており、現地の知人のスウェーデン人も「夏の海外旅行が割安になった」と喜んでいるほどです。
なぜスウェーデン・クローナがこれほどまでに上昇しているのでしょうか。その要因を探っていきます。
スウェーデン王国(Kingdom of Sweden):通貨
スウェーデン・クローナ(SEK)
(1クローナ=約14.00円(スウェーデン中央銀行(Riksbank)2024年9月平均値))
スウェーデンの金融政策
スウェーデンはEU加盟国ですが、ユーロは導入しておらず、自国通貨のクローナを維持しています。したがって独自の金融政策を採用していますが、実際には欧州中央銀行(ECB)と似た動きをしています。現在の政策金利はECBと同じく2.25%となっており、その背景にはEUとの地理的近さや、貿易の約6割がEU圏との取引であるという実情があります。

つまり、スウェーデン経済はユーロ圏の影響を強く受けるため、為替の安定性を維持する目的からも、ECBに歩調を合わせるような政策運営が行われているのです。これは、カナダがアメリカの金融政策に似た動きを見せるのと類似した構図といえます。
スウェーデン・クローナの上昇率
2025年現在、スウェーデンクローナは米ドルに対して年初来で約15.4%、ユーロに対しても約5.0%上昇しています。加えて、英ポンド、スイスフラン、ノルウェークローネに対しても上昇しており、総じてクローナは「堅調」と言える状況です。
金融政策以外の要因(経済成長と軍事産業)
この上昇を金融政策だけで説明するのは難しく、その他の要因が複合的に作用していると考えられます。
第1に、スウェーデンはユーロ圏と比較して、近年安定的に高い経済成長率を維持しており、これが投資家の評価に繋がっています。
第2に注目すべきは、軍事産業の好調さです。スウェーデンは歴史的に軍事技術の開発に力を入れてきた国であり、第二次世界大戦中には中立国としてドイツとも連合国とも取引をしてきました。その後も中立を標榜しつつアメリカ寄りの立場をとり、自国防衛のために武器開発を重視してきました。
有名企業としてはSAABがあり、スウェーデン防衛産業協会には250社以上が加盟。間接雇用も含めると約10万人が軍事産業に従事しています。人口1,000万人の国としては非常に大規模な産業です。現在では製造された武器を100カ国以上に輸出しており、この軍需輸出が経済を下支えしています。
NATO加盟と輸出拡大
ウクライナ戦争の影響も大きく、スウェーデンは2022年にNATO加盟を申請し、2024年に正式加盟を果たしました。これに伴い、防衛費を拡大し、国内の武器生産能力も2021年比で4倍にする方針を発表しています。輸出の増加とあわせ、貿易収支も黒字幅が拡大。クローナの強さを支える要因の一つとなっています。

今後、欧州ではアメリカ抜きでロシアに対抗する防衛体制の構築が求められる見込みであり、スウェーデンは重要な武器供給国としての地位を確立しつつあります。この流れは軍事産業の好調を長期化させる可能性があります。
財政の健全性
さらに、スウェーデンの財政状況が比較的良好であることも、通貨が買われる理由の一つです。アメリカのように財政悪化懸念がある国とは対照的に、スウェーデンは財政的な安定感があり、投資家が「代替資産」としてスウェーデン・クローナを選ぶ動きも見られます。
とはいえ、スウェーデンはマーケットの規模が小さいため、巨額の投資を呼び込むには限界がありますが、それでも一定数の投資家がクローナ資産を増やそうとしていると考えられます。
スウェーデン社会の課題
経済面では堅調なスウェーデンですが、社会面では課題も抱えています。近年、若者がギャングにSNSで勧誘されて犯罪に加担する「日本でいう闇バイト」のようなケースが増加しています。アメリカのトランプ政権は、イランとのつながりを持つスウェーデンのギャングを制裁対象とするなど、国際的な問題にもなっています。
また、2025年2月にはスウェーデンの学校で乱射事件が発生し、11人が死亡、国内史上最悪の殺人事件となりました。背景には、スウェーデン社会に溶け込めない移民との分断があるとも指摘されましたが、結局のところ犯行動機は「自殺願望」に基づくものとされ、捜査は終了しました。
今後の見通しとスウェーデンへの思い
スウェーデン社会には複雑な課題もある一方で、経済的には好調な局面が続いています。今後もしばらくは、クローナが買われやすい展開が続く可能性があります。
私はスウェーデンを訪れたことはなく、行ってみたいと思っているものの、クローナ高が進む中では「旅行費が高くなってしまった」と二の足を踏んでいます。6月の時期は白夜があり、夕方のようなやわらかい光と美しい自然、カラフルな街並みを楽しむには絶好の季節です。
ご参考
ロミナ氏は、環境だけを優先するのではなく、安全保障など他の重要な要素も考慮した現実路線の政策を進めています。
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