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利上げの影響の波及とMMF、資金シフトの可能性


 マネーマーケットファンド、通称「MMF(Money Market Fund)」が復活するという話が金融業界で注目を集めています。この動きは今後の日本経済にも大きな影響を与える可能性があり、来年にかけて何度も話題に上るテーマになるだろうと私は考えています。この記事では、このMMFとは何か、そしてなぜ今復活が注目されているのかを解説します。

マネーマーケットファンドとは

 マネーマーケット(Money Market)とは、1年以内に満期が来る短期金融商品が取引される市場のことを指します。具体的には、短期国債や企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)などが含まれます。
 これらは満期までの期間が短いため、金融資産の中でも比較的リスクが低い商品群とされています。

出所)blackrock.com

 その短期金融市場で運用を行う投資信託が「MMF」マネーマーケットファンドです。投資家から資金を集め、それを短期の国債やCPなどに分散して投資し、安全性と流動性を確保しながら運用するという仕組みになっています。

MMFが金利上昇時に注目される理由

 MMFは金利が上がる局面で特に注目されます。なぜなら、金利上昇時にはMMFの利回りが預金よりも高くなることがあるからです。
 銀行の預金金利は、短期金融市場の動向を見ながら決定されますが、MMFは大手運用会社が大量の資金を効率的に運用することで、より高い利回りを確保できる場合があります。そのため、金利上昇局面では「預金に置いておくよりMMFに移した方が有利だ」と考える人が増えるのです。
 これによって資金が銀行からMMFに流れる、いわゆる「資金シフト」が発生します。

日本でMMFが姿を消した理由

 しかし、現在の日本ではMMFがほとんど提供されていません。その理由は、マイナス金利時代に運用会社が提供をやめてしまったからです。
 マイナス金利下では、短期金融市場で取引される金融商品の大部分がマイナス利回りとなり、投資してもリターンがマイナスになってしまいました。
当然、そんな商品に投資する投資信託を買う人はいません。結果としてMMFを販売する意味がなくなり、多くの運用会社が提供を停止しました。

利上げ局面で注目されるMMF

 ところが、日銀がマイナス金利を解除し、さらに利上げを進める段階に入ってきたことで状況が一変しました。

 2026年から多くの運用会社がMMFの取り扱いを再開する方針を打ち出しています。現在、日本の政策金利は0.5%ですが、来年前半には0.75%まで引き上げられる可能性が高まっています。そうなればMMFの利回りも同程度、つまり0.75%前後になると見られています。過去の例を見ても、預金金利の引き上げは政策金利の上昇に遅れてついてくるため、しばらくはMMFの利回りの方が高い状態が続くでしょう。
 この時、預金者がどのように動くかが注目されています。

アメリカでの「資金シフト」の実例

 近年、このMMFへの資金シフトで大きな混乱を招いた例があります。それが2023年にアメリカで起こった地方銀行の経営危機です。
 当時、アメリカでは政策金利が5.5%まで引き上げられ、短期金利も高止まりしました。MMFの利回りはそれに連動して上昇しましたが、銀行は預金金利の引き上げを緩やかにしか行いませんでした。その結果、MMFと預金金利の差が拡大し、預金からMMFへの資金移動が急速に進み、預金流出に対応できなかった地方銀行が相次いで経営危機に陥ったのです。このとき、地方銀行は債券の含み損や商業用不動産ローンの問題も抱えており、複合的な要因が重なって破綻に至った銀行もありました。

 つまり、MMFは単なる投資商品ではなく、金融システムそのものに影響を与える存在でもあるということです。

金融危機というのは金融システムの不安や金融機関が連鎖的に破綻する懸念が生じたり、金融市場が機能不全に陥ったりして経済危機を招くことです。
 
金融危機が実際に起こると、景気後退はほぼ免れないですが、景気後退は必ずしも金融危機を伴うものではありません。

アメリカの住宅ローン債務不履行急増問題

日本ではどうなるか

 では、日本でも同じような資金流出が起こるのか。

 結論から言うと、現段階ではそこまでのリスクは低いと考えられます。
 
アメリカの場合は金利が5.5%という高水準に達していましたが、日本の政策金利はまだ0.5%。来年0.75%に引き上げられたとしても、MMFと預金金利の差はせいぜい0点数%の世界です。100万円を預けて年間数千円の差にしかならないため、多くの人がわざわざ預金をMMFに移すほどの動機にはならないでしょう。
 とはいえ、ネット取引に慣れている世代では、「どうせ預金に置くならMMFを買っておこう」と考える人も増えるでしょう。そうなると、ネット証券などは再び資金を集めやすくなり、業績拡大の追い風となる可能性があります。

銀行経営への影響と利上げの波及

 それでは、このMMF復活が銀行にどのような影響を与えるか。現時点では預金流出が経営を揺るがすほどの影響にはならないでしょう。しかし、これまで利上げの影響としては「債券価格の下落」が中心だったのに対し、今後は「預金流出」という新しいリスクが徐々に意識され始めています。
 
つまり、政策金利が0.75%へと上昇する中で、MMFの再開は日本の金融システムに新たな課題をもたらすことになるのです。

 利上げの影響は広がりを見せており、住宅ローンの変動金利上昇なども今後徐々に家計へ波及していくと見られます。ただし、住宅ローンの場合は金利見直しが5年に1回という契約が多く、返済額の増加にも上限があるため、影響が表面化するまでには時間がかかるでしょう。それでも、金利上昇が続く限り、後になればなるほど影響は大きくなることが想定されます。

金利上昇の影響の連鎖

 このように、日銀の利上げが進む中で、MMFの再開は預金者の資金行動に変化をもたらす可能性があります。利上げの波は、債券市場だけでなく、銀行の預金、住宅ローン、そして家計全体へと広がりつつあります。
 来年にかけてこのテーマは金融業界で繰り返し取り上げられていくと思いますので、引き続き注目していきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

金融市場では「プライベートクレジット」と呼ばれる市場に対する不安が高まっています。この動きが金融システムを揺るがすような問題に発展し、リーマンショックのような事態を引き起こすのではないかという警戒感が広がっているのです。

注意喚起、プライベートクレジット市場拡大問題

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