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意外と知らない英国ウィンター・ワンダーランド


 イギリスのクリスマスシーズンの風物詩と聞いて、ロンドンのウィンター・ワンダーランドを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。日本人の若者の中には、このウィンター・ワンダーランドを訪れ、きらきらした雰囲気の写真をSNSにたくさん投稿し、「最高の思い出でした」といった感想を残している方も少なくありません。

出所)British Culture in Japan

 ただし、ウィンター・ワンダーランドには、そうした華やかなイメージだけでは語りきれない側面も確かに存在します。この記事では「イギリスって結構ボロボロだよね」、「なかなか苦しいよね」といった、少し斜めからの視点でウィンター・ワンダーランドを説明したいと思います。

移動式遊園地ウィンター・ワンダーランド

 ウィンター・ワンダーランドは、11月から12月にかけて、ロンドン中心部にあるハイド・パークという大きな公園に、この時期だけ設営される移動式の遊園地です。クリスマス前のロンドンは、街のあちこちがライトアップされ、クリスマスマーケットも開かれ、街全体が一気に華やいだ雰囲気になります。その中でも、ウィンター・ワンダーランドはロンドンのクリスマスシーズンを象徴する存在として定着しています。

 イギリスにおけるクリスマスは、日本で言うお正月のように重要な行事です。多くの家庭では教会に行ったり家族で集まったりして過ごします。しかし、若い世代を中心に宗教離れが進んでおり、教会に行く人は少なくなっています。そのため、「家族で家でゆっくり過ごす」というスタイルが一般的です。

意外と知らないイギリスのクリスマスの過ごし方

 イギリスに滞在している日本人、特にワーキングホリデーで訪れている若者にとっては、このウィンター・ワンダーランドは一つのイベントとして楽しみにされていることが多いと思います。私自身も一度訪れたことがありますが、確かに雰囲気は良いです。ハイド・パークの広大な敷地に移動式の遊園地が組み立てられ、夜になるとライトアップされる光景は、素直に「きれいだな」と感じます。

 しかし、アトラクションも、ヨーロッパ的と言えば聞こえは良いですが、単純に古いだけと言ってしまえばそれまでかもしれません。

ウィンター・ワンダーランドの雰囲気

 ウィンター・ワンダーランドに行って「素晴らしかった」、「最高だった」と感じる人の多くは、この雰囲気にふわっと飲み込まれている部分が大きいのではないかと思います。そのレトロな雰囲気は、日本の遊園地ではなかなか味わえない独特の空気感を作り出しているのも事実です。雰囲気というのは、それだけ人の印象を大きく左右します。その意味で、ウィンター・ワンダーランドの雰囲気が良いというのは間違いありません。
 ただ、アトラクションの中身まで冷静に見ていくと、話は少し変わってきます。初めて訪れた人にとっては新鮮でも、イギリスにしばらく住んだことがある人にとっては、実はかなり「見慣れた光景」でもあります。

イギリスでは日常的な「ファンフェアー」

 というのも、イギリスではウィンター・ワンダーランド以外にも、移動式の遊園地が一年中あちこちにやってきます。これをファンフェアー(Fun fair)と呼びます。そこそこ大きな公園がある街であれば、定期的にこのファンフェアーがやってくることは珍しくありません。

 日本では「遊園地が街にやってくる」という感覚自体があまりないので、特別なイベントのように感じられるかもしれませんが、実際のところ、どのファンフェアーに行ってもアトラクションの中身はほぼ同じです。メリーゴーラウンド、ブランコのような乗り物がくるくる回りながら高いところまで上がっていくもの、車に乗ってぶつかり合うアトラクション、射的、お化け屋敷といった具合に、だいたい決まった顔ぶれです。

出所)British Culture in Japan

 ウィンター・ワンダーランドも、規模が少し大きくなり、ライトアップが派手になったファンフェアーだと考えると、それほど的外れな表現ではないと思います。

安全性への違和感

 私が以前住んでいた街の近くにも、ファンフェアーはよくやってきていました。開催の1週間ほど前になると、大型トラックが何台もやってきて、機材を運び込み、アトラクションを組み立て始めます。
 その様子を見ていると、イギリスではよくあることですが、作業している人たちが総じてだるそうに仕事をしています。アトラクションの上で寝ている人を見かけることもあり、「本当に大丈夫なのか」と不安になることもありました。これはファンフェアーに限った話ではなく、建設現場でも、スーパーマーケットでも、美容室でも、仕事が雑で失敗が多いというのは、イギリスではよくある光景です。

 日本の遊園地では、安全面のチェックや運営がかなり徹底されていますが、海外では事故が起きた後でも、「まあ、やっていればそういうこともあるよね」という空気のまま営業が続くことも少なくありません。
 実際、BBCなどの報道によると、イギリスのファンフェアーでは過去10年間で3,000人以上が怪我をしているとされています。それでも、イギリスの人たちはあまり気にせず、普通に楽しんでいます。私自身は、わざわざ怪我をしに行きたいとは思いませんし、適当な人たちが組み立てたアトラクションには、できれば乗りたくないというのが正直な感想です。

それでも楽しめる要素とチュロスのすすめ

 ここまで読むと、「もう行く気がなくなった」と感じる方もいるかもしれません。その点については申し訳ないのですが、ウィンター・ワンダーランドの雰囲気自体が素晴らしいことは間違いありません。激しすぎないアトラクションや、眺めて楽しむタイプのものを中心に回れば、十分に楽しめると思います。

 そして、私がウィンター・ワンダーランドやファンフェアーで唯一おすすめできるものが「チュロス」です。イギリスの食べ物は美味しくないと言われがちで、こうしたイベント会場のフードも「イギリスクオリティ」ですが、チュロスだけは例外だと思います。

 イギリスではマクドナルドすらまずいです。家族旅行でスペインに行った時、スペインの空港でマクドナルドに行ったら、ハンバーガーが美味しいと感動したことがあります。スペインが特別美味しかったわけではなく、スペインが普通でイギリスがひどいという話です。

ロンドンの現状と日本との比較

 日本のテーマパークでは、作り置きや冷凍のチュロスを温め直して出しているケースが多い印象ですが、イギリスのファンフェアーでは、その場で生地を揚げ、出来立てをたっぷりのチョコレートソースと一緒に提供してくれることが多いです。元々はスペインの食べ物ですが、イギリスで食べるチュロスは、スペインのものにかなり近く、日本のテーマパークで食べるものよりも「美味しい」と感じる方が多いのではないでしょうか。

海外での自衛の感覚

 チュロスが美味しいという一点だけではウィンター・ワンダーランドの全てをフォローしきれなかったかもしれません。

 雰囲気を楽しむこと自体はとても大切ですが、「危なそうなものは自分で判断して避ける」、「これはやめておこう」と考える自衛の感覚も、海外生活や旅行では特に重要です。イルミネーションやマーケットの空気感を楽しみつつ、出来立てのチュロスを味わう。そのくらいの距離感で付き合うことで、ウィンター・ワンダーランドは十分に思い出深い場所になるのではないかと思います。


ご参考(イギリスの暮らしの記事のまとめ)

■ 家族で海外で生活するということ(2024/6/28)
■ プレタマンジェの戦略変更と英国コーヒー業界(2024/10/8
■ 英国のワーキングホリデー急増理由と厳しい現実(2024/10/28)
■ イギリスとギネスビールとSNSの話(2024/12/18)
■ 日比谷公園再開発とロンドンの公園文化の話(2025/6/13)

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