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国際情勢とコーヒーと関税とカナディアーノの話


毎日のコーヒーと私

 これまでもイギリスのコーヒーチェーンやコーヒーの歴史についてご紹介してきました。私自身は、ものすごくコーヒーにこだわりがあるわけではないのですが、毎日欠かさずコーヒーを飲んでいます。朝にコーヒーを飲まないと仕事ができず、夜もコーヒーを飲まないと作業ができない、そのような日々を送っています。
 コーヒーは世界各地で生産されていますが、トランプ政権下での関税政策の影響を大きく受ける地域もあります。更に、最近は少し面白い変化も起きています。この記事では、コーヒー業界で起こっていることを、説明したいと思います。

 それまでコーヒーを飲むニーズがなかった、飲み物としてはお茶で十分だと思っていた私が、コーヒーを飲むようになったわけです。このように、新しいニーズを生み出していくという面も、スターバックスが成功してきた要因でしょう。

スターバックスの店舗拡大計画について

カナダ発のコーヒー「カナディアーノ」

 まず最初にご紹介するのは、最近カナダで登場した「カナディアーノ」というコーヒーについてです。これまで「カナディアーノ」という言葉は存在していなかったのですが、最近急に使われるようになりました。

アメリカーノの歴史

 この話をするためには、まず「アメリカーノ」の歴史を知る必要があります。日本では「アメリカン」と呼ばれることが多いですが、これはアメリカの「アメリカーノ」とは別物です。

 ヨーロッパとアメリカでは、コーヒー文化が少し異なっています。ヨーロッパではコーヒーと言えばエスプレッソのことを指し、気圧を使って抽出するため、味は濃厚で苦みが強いのが特徴です。
 一方、アメリカではドリップコーヒーが主流で、ドリッパーにコーヒー粉をセットし、お湯を注いでゆっくり抽出するため、エスプレッソに比べてあっさりとした味わいになります。日本で一般的なコーヒーもこのドリップコーヒー方式が多いです。
 日本で言う「アメリカンコーヒー」は、ドリップコーヒーをさらにお湯で薄めたものがほとんどで、これは欧米ではあまり見かけません。ヨーロッパでは100年以上前から、コーヒーといえばエスプレッソが主流で、そのエスプレッソをお湯で割ったものを「アメリカーノ」、牛乳で割ったものを「ラテ」と呼んできました。

 アメリカーノという名前は、アメリカ人が名付けたわけではなく、ヨーロッパの人々が「アメリカ人が飲んでいる薄いコーヒー」というニュアンスで、やや田舎者的な軽い揶揄も込めて呼んだとされています。これは真偽のほどは定かではありませんが、イギリスとアメリカの歴史的背景を考えれば、十分あり得る話です。

アメリカとの対立意識

 こうした背景がある中で、近年カナダでは、アメリカとの対立意識の高まりもあり、「アメリカーノ」と呼ぶのをやめ、「カナディアーノ」と呼ぼうという動きが一部のコーヒーショップで広まっています。欧米の微妙な国際関係の中から生まれた「アメリカーノ」という言葉が、現代の国際情勢を受けて「カナディアーノ」へと変わりつつあるのです。

コーヒーと関税政策の影響

 続いて、トランプ政権による関税政策がコーヒー業界に与える影響について説明します。
 近年、天候不順などの影響もあり、国際的な商品市場でコーヒーの価格は上昇傾向にありました。しかし、アメリカが総互関税を発表したことで、アメリカ国内の需要減少が懸念され、コーヒー価格は一時下落しました。その後、関税措置を90日間延期すると発表され、再び価格が上昇するなど、関税関連のニュースに価格が大きく左右される展開となっています。

コーヒー生産国

 コーヒー生産国では、ブラジルが圧倒的な首位で、次いでベトナム、インドネシア、コロンビアが続きます。特にブラジルとベトナムの2カ国が、3位以下を大きく引き離しています。

 アメリカが発表した総互関税では、ブラジルやコロンビアに対しては10%の関税率にとどめた一方で、ベトナムに対しては46%、インドネシアには32%という高率の関税が課されることになりました。これは、ベトナムやインドネシアがこれまでアメリカに対して巨額の貿易黒字を出していたことを受けた措置です。
 関税がこのまま実施されると、ベトナムやインドネシア産のコーヒーのアメリカ国内での価格は大きく上昇し、売れにくくなるでしょう。その結果、ブラジルやコロンビアなど、関税率が低い地域のコーヒーがアメリカでより多く消費されることになりそうです。

日本市場への影響

 では、アメリカ以外の国々ではどうなるのでしょうか。おそらく、アメリカでブラジル産やコロンビア産の豆が大量に消費されるため、それらの豆の価格が高騰し、他国では手に入りにくくなる可能性が高いです。一方で、ベトナム産やインドネシア産の豆は、アメリカ市場で売れにくくなる分、他国へ安価で流通する可能性があります。
 つまり、日本ではこれまでよりベトナム産やインドネシア産のコーヒーを飲む機会が増え、ブラジル産やコロンビア産は高価で手に入りにくくなるかもしれません。コーヒーショップでも、様々な地域のコーヒーを楽しむ選択肢が減ったり、価格が上昇したりする可能性があります。

 缶コーヒー市場では、コカ・コーラの「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド」など、コロンビア産の豆を使用している商品もあります。もし豆の調達コストが上がれば、価格改定を余儀なくされるかもしれません。

出所)coca-cola.com

 このような動きはコーヒー業界に限らず、あらゆる業界が関税の影響を見極めながら調達先の見直しに追われている状況です。やがて一般消費者が目にする価格にも影響が及ぶでしょう。

上島珈琲店

 これまでスターバックスの経営戦略などについてもお話ししてきましたが、日本で私が一番好きなコーヒーショップは「上島珈琲店」です。この会社は1933年に神戸で設立され、明治から昭和初期の神戸の貿易発展とともに成長してきた企業です。

出所)上島珈琲店

 私は甘いものが好きなため、上島珈琲店の「黒糖ミルクコーヒー」が特にお気に入りです。特に夏に飲むアイスの黒糖ミルクコーヒーが最高です。銅製のマグカップで提供されるこのコーヒーは、味だけでなく見た目も美しく、機会があればまた訪れたいと思っています。

コーヒーと時代の変化

 コーヒーを毎日飲んでいるという人も多いと思いますが、今後、一部の商品価格が上がったり、関税の影響がじわじわ出てくることになるでしょう。それは残念なことではありますが、「カナディアーノ」という新しい言葉が生まれた今の時代を、後に振り返って「当時はこんなことがあった」と語り合う日が来るかもしれません。
 
そう考えると、私たちは今、世界が大きく変わっていく過程の中にいるということを、コーヒー一杯からも感じることができます。


ご参考(コーヒー関連記事のまとめ)

■ コーヒーショップに見るイギリス経済の変化(2024/2/20)
■ ラッキンコーヒーのスターバックスとの差別化(2024/6/24)
■ プレタマンジェの戦略変更と英国コーヒー業界(2024/10/8)

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