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日米金利差とドル円相場の関係、関税の話


 2024年11月25日、トランプ氏が中国に追加関税10%、カナダ及びメキシコに対して25%の関税を課す大統領令に署名する見込みであるとツイートしました。この発表を受け、マーケットではリスクオフムードが高まりました。その後、11月26日、27日と日本円が上昇し、「関税警戒で円高」という趣旨の日本語記事が多数見られました。

関税とは
 関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています。

税関HP

 これについて、「関税が引き上げられるとアメリカでインフレ要因になるから、アメリカの金融政策が引き締め的になり、むしろドル高・円安要因になるのではないか」という疑問を抱かれる方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、最近の為替相場の動きを振り返りながら、これらの疑問について解説します。

関税と為替の動き

関税が円高要因か円安要因かの基本的な見解

 まず、関税が引き上げられることでアメリカでインフレ要因となり、結果的に金融政策が引き締め的になってドル高・円安要因になるという見方は、基本的に正しいと考えられます。
 一方で、新聞記事などで「関税が円高要因」と説明されていた場合、その内容は必ずしも正確であるとは限りません。記者が市場の状況を誤解している可能性もあるため、こうした記事を鵜呑みにせず、自身の判断に自信を持つことが重要です。

背景を理解することの重要性
 ニュースや金融機関の話をそのまま信じるのではなく、「そもそもそれはどういうことなのか」、「なぜそうなっているのか」を深掘りして理解することが重要です。

投資初心者のための情報収集術、疑う力と分析

関税が円高要因となる場合

 関税が引き上げられることで、物価が上昇するだけでなく、貿易額が縮小するため、経済全体にはマイナスの影響があります。このような経済活動の縮小は、リスクオフムードを高める要因となり得ます。この場合、アメリカの金融政策が緩和的となる可能性があるため、ドル安・円高要因となることも考えられます。
 
関税にはドル高要因もドル安要因も存在するため、どちらがより強く影響するかは状況次第です。今回の場合、私はドル高要因のほうが強かったのではないかと見ています。

11月25日の週におけるマーケットの動き

 11月25日の週には、関税の話題以外にもさまざまな材料がマーケットに影響を及ぼしました。例えば、カナダやメキシコへの関税引き上げ以外にも、トランプ政権の閣僚人事の公表や、アメリカの半導体関連銘柄の株価動向などがあげられるでしょう。
 また、日銀が12月に追加利上げを実施するという観測が強まったことも、円高・ドル安要因としてあげられます。これらの材料が複雑に絡み合う中で、「関税への警戒感で円高」という記事が出たのは、市場関係者のコメントを基に記者が記事を作成した結果ではないかと推察されます。

11月半ば以降の円高についての見解

 私の見解では、11月半ば以降の円高の主要因は以下の2点です。

1.日銀の追加利上げ観測の高まり
2.トランプ氏の経済政策に対する期待感の一服

 11月半ば以降の日米2年債の金利差に基づいて為替相場の動きを説明したいと思います。

日米金利差とドル円相場の関係

 11月14日まで、アメリカの2年金利が上昇した背景には、トランプ氏の経済政策に対する期待感が高まり、アメリカ経済が好調を維持し利下げが不要になるとの見通しが織り込まれたことがあげられます。この間、金利差が0.10%拡大し、ドル円相場は約4円26銭上昇しました。

金利の上昇の理由としては、トランプ政権の誕生によって景気が良くなり、それに伴ってインフレ率も上昇傾向に向かうという予測が市場に織り込まれたことが考えられます。

トランプ政権誕生で揺れる市場の動向

 11月14日以降11月29日まで、金利差が0.20%縮小しました。その結果、ドル円相場は約6円27銭下落しました。

金利差の影響の試算

  • 10月31日~11月14日
    金利差が0.01%拡大するごとにドル円は0.43銭上昇した

  • 11月15日~29日
    金利差が0.01%縮小するごとにドル円は0.31銭下落した

 このように、金利差とドル円の動きには一定の相関が見られ、金利差による説明が可能と言えます。

2年債を利用した理由と留意点

 今回、試算に2年債の金利差を使用した理由は、2年債の利回りが政策金利の影響を比較的大きく受けるためです。特に、中央銀行が金融政策の方向性を示す上で、2年債の利回りは短期的な政策の影響を反映しやすい性質があります。
 しかし、留意点として、日本の2年債の金利は異次元緩和の長期化により長らくほとんど動かなかった期間があるため、過去のデータを使った分析ではアメリカの金利動向だけを見ているのと同じ結果になりやすい問題があります。こうした背景から、以前は10年債の金利差を分析に用いるほうが適していた時期もありました。
 ただし、近年、日銀が利上げを開始し、日本の2年金利も動き始めたため、現在は2年金利差がドル円相場の動きをより正確に説明する指標となりつつあります。とはいえ、過去のデータを用いた比較には限界があることに注意が必要です。

今後の展望

 2年債の金利差は金融政策の影響を大きく受けるため、今後のドル円相場を理解する上で引き続き注目すべき指標です。特に日銀の政策変更が活発化している現状では、日本の2年金利が以前よりも動きやすくなっています。2年金利差がドル円の動きをより正確に反映しつつあると言えるでしょう。
 11月後半に円高が進んだ要因を解説しました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考(トランプ氏と金利と関税の記事のまとめ)

■ トランプ氏が勝利した場合のドイツ経済(2024/3/12)
■ トランプ氏が勝利した場合のフランス経済(2024/3/30)
■ トランプ氏が勝利した場合の金利の動き(2024/7/2)
■ アメリカ財政赤字の見通しと利払い、GDPの関係(2024/7/18)
■ トランプ氏の報復関税と私のYouTuberとしての話(2024/9/14)
■ トランプ政権誕生で揺れる市場の動向(2024/11/7)

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