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高頻度取引(HFT)の戦略と損益、金融庁の監視


 この記事では、高頻度取引(High frequency trading:以下 HFT)について深く掘り下げます。個人投資家にとっては少し遠い存在かもしれませんが、株式市場における重要な動きの一部です。
 金融庁が公表した「HFT業者の収益分析等から見た損益額と、不公正取引が認められた場合に想定しうる課徴金額について」をもとに、この取引手法の実態、そしてそこから見えてくる課題について詳しく説明します。

 記事の下で金融庁が公表した「HFT業者の収益分析等から見た損益額と、不公正取引が認められた場合に想定しうる課徴金額について」を添付しています。全9ページです。課徴金額を算定するために、収益をどう計算するか語られています。面白いです。

HFTとは

 HFTは、高速で膨大な取引を行う手法を指します。HFTの特徴は、1秒間に何万回もの取引が可能であり、これを手動で行うのは不可能で、すべてコンピューターが自動で実行します。2000年代後半以降の先進国の株式市場において、HFTは非常に重要な位置を占めるようになっています。
 日本では2010年に東京証券取引所がシステムを高速取引に対応できるものに更新したことで、HFTが急速に普及しました。

システムの更新と新機能の追加
 結果として、システムの会社が儲かっているという指摘もあります。何年かに一度システムを新しくしないといけないため、大幅に変える必要がない場合は、大半を今までと同じにしつつ、新しい機能を加えることが多いです。

東証システム更改の話とnoteの裏話

 そして2018年からは、HFT業者を登録制とし、金融庁がその取引を監視する仕組みが導入されています。これにより、市場の安定性を損なうような取引が行われないように管理が強化されています。

HFTの取引戦略

 HFTが具体的にどのような取引を行うのかについて、大きく3つの戦略があります。

  • マーケットメイク戦略
     マーケットメイク戦略とは、市場で取引量が少ない銘柄について、HFT業者が売りと買いの両方の注文を同時に出し、他の市場参加者が取引を円滑に行えるようにするものです。この戦略は、市場の流動性を高める役割を担い、利益を得ると同時に市場機能の向上にも寄与します。

  • アービトラージ戦略
    アービトラージ戦略は、市場内の価格差や異常値を見つけ、それを利用して利益を得る方法です。例えば、ある市場では高値で取引され、別の市場では安値で取引されている場合、その差を活用して利益を得るような手法です。

  • ディレクショナル戦略
    ディレクショナル戦略は、AIやアルゴリズムを使って将来の価格動向を予測し、その予測に基づいて取引を行うものです。近年、AI技術が進化し、予測精度が向上しているため、このディレクショナル戦略を採用するHFT業者が増えてきています。

HFT業者の実態と影響力

 金融庁のレポートによれば、日本で登録されているHFT業者はわずか数十社に過ぎません。しかし、彼らの取引量は非常に多く、株式市場全体の30%から50%を占めています。このことからも、HFT業者が市場において極めて大きな影響力を持っていることがわかります。
 HFT業者が市場にもたらす最大の利点は、流動性の向上です。市場に流動性があることで、投資家はスムーズに売買を行うことができ、取引コストも抑えられます。ただし、その一方で、取引量の多さが不正行為や市場操作のリスクを高めるという懸念もあります。

HFT業者の利益構造

 金融庁のレポートでは、HFT業者の利益構造が詳しく分析されています。2019年6月から2023年3月までのデータをもとにした集計では、以下のような結果が示されています。

  • 利益が得られた取引の80%が1万円未満のものであり、これが1日あたり約303万件行われています。

  • 1万円以上2万円未満の利益が得られた取引は全体の8%で約32万件。

  • 2万円から3万円の利益を得た取引は全体の4%で約13万件。

  • 3万円から4万円の利益は全体の2%で約7万件。

  • 10万円以上の利益が得られる取引は全体の3%に過ぎませんが、それでも1日あたり約10万件存在します。

 HFT業者の戦略は、1回の取引で大きな利益を得ることを目的としていません。むしろ、小さな利益を短期間で何度も積み重ねることに焦点を当てています。

不正行為と課徴金の課題

 HFT業者のように大量の取引を行うと、当然ながら不正行為が発生するリスクも高まります。このため、金融庁はHFT業者の取引データを常に監視し、不正行為が確認された場合には課徴金を科す仕組みを整えています。
 
しかし、この課徴金には課題があります。現在の金融商品取引法では、課徴金が1万円未満の場合には納付を命じることができないとされています。一方で、HFT業者の取引利益の大部分は1万円未満であるため、取引単位で見ると課徴金を科せないケースが生じる可能性があります。
 この問題に対処するためには、一連の取引を全体として評価し、不正行為による総合的な利益に基づいて課徴金を算定する必要があります。また、必要に応じて法改正も検討されるべきでしょう。

市場の効率化とHFTの未来

 HFTの普及は、市場の効率性を高めるという点でポジティブな影響を与えています。特に、AI技術の進化によってディレクショナル戦略が増加し、価格予測の精度が向上していることは注目に値します。一方で、個人投資家と機関投資家の情報格差が広がる可能性や、不正行為のリスクなど、慎重に対処すべき課題も残されています。

総括

 金融庁のレポートは、HFT業者の活動を監視し、市場の健全性を保つための取り組みが進んでいることを示しています。市場の高度化が進む中で、適切なルール整備と監視体制の強化がますます重要になるでしょう。
 HFTは、個人投資家にとっては馴染みの薄い領域かもしれませんが、株式市場全体に与える影響は非常に大きいです。このような話題を通じて、投資の世界への理解を深めていただければ幸いです。引き続き、投資や市場の情報をお伝えしていきますので、よろしくお願いいたします。


ご参考①「HFT 業者の収益分析等から見た損益額と、不公正取引が認められた場合に想定しうる課徴金額について」

ご参考②(機関投資家の記事のまとめ)

■ 主幹事証券のIPO銘柄の配分方法(2023/12/29)
■ もしも投資信託を運用する会社が破綻したら(2024/5/23)
■ 株価急落時の機関投資家の投資行動(2024/8/7)

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