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ドバイ移住とヘッジファンドの関係の再認識


 ドバイに富裕層が集まっているという話は、すでに多くの方が耳にしているでしょう。最近はますますそうした動きが目立つようになってきています。これはドバイだけでなく、同じUAEのアブダビでも同様の傾向が見られます。今さら感があるテーマではありますが、これまでとは異なる動きも出てきているため、あらためて注目する必要があると感じています。もちろん、この加熱した状況がいつまでも続くわけではありませんので、過熱気味な空気には一定の注意が必要です。
 この記事では「再びバブル化しつつあるドバイとアブダビ」について掘り下げたいと思います。

アラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE):首都
アブダビ

外務省

過去の移住ブームの変遷

 ドバイ移住のブームはこれまでも何度か波がありました。

  • 2000年代:石油依存から脱却を図るUAEが金融・観光都市として急成長し、世界中から富裕層が集まる。しかしリーマンショックの影響で不動産バブルが崩壊し、一時的に沈静化。

  • 2010年代:経済が持ち直し、再び移住ブームが拡大。金融機関や国際企業が進出し、ドバイ国際金融センター(DIFC)も注目を集めた。

  • コロナ禍:国際移動が難しくなり、移住の動きはいったん停滞。

  • コロナ後:再び注目が集まり、特に暗号資産で利益を得た人々やインフルエンサーがこぞって移住する流れが強まった。

出所)difc.com

 つまりドバイ移住は目新しい話ではありません。しかしここにきて再び盛り上がっているのには、いくつかの理由があります。

海外要因

 今回の動きにはいくつかの理由があります。一つはドバイそのものの要因ではなく、他国での環境悪化です。例えば中国とイギリスがその代表例です。

 中国では不動産バブルの崩壊や米中対立の影響で国内経済が低迷し、社会全体の締め付けも強まっています。そこで、不動産を購入できる余裕のある中国人富裕層が、資産の逃避先としてドバイに投資すると同時に、より自由な生活を求めて移住を考えるようになっています。
 
一方、イギリスでは労働党のスターマー政権が発足してすぐに増税を実施し、さらに今後は富裕層への課税が強化されるのではないかと懸念されています。そのため、イギリスから富裕層が流出しており、その移住先として最も人気があるのがUAEです。

富裕層がドバイに移住する理由
 イギリスから富裕層が流出しているという話をしていますが、「では富裕層はどこへ行っているのか」という質問をよく受けます。その答えのひとつがドバイです。

ドバイの不動産市場と金融センターとしての課題

アメリカ

 さらに最近ではアメリカからも移住者が出始めています。トランプ政権の方針や思想と合わない人々がアメリカを離れ、一定数がUAEに関心を寄せているのです。

UAEの政策とヘッジファンド誘致

 海外の事情だけでなく、UAE自体の政策もこの流れを後押ししています。ドバイもアブダビも「金融センター」としての地位を確立するため、特にヘッジファンドの誘致に力を入れています。

 ドバイは以前から金融センターを目指してきましたが、最近はとくにヘッジファンドの呼び込みを強化しています。アブダビではアルマリア島に「アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)」という金融センターを整備し、そこにヘッジファンドを積極的に招き入れています。これは非常に合理的な戦略であり、所得税のないUAEは「短期間で大きく稼ぎたい」と考えるヘッジファンド関係者との相性が抜群です。

出所)adgm.com

 また、ヘッジファンドはオフィスの場所に縛られず業務を行えるため、柔軟に拠点を移すことが可能です。そのため大規模な銀行や証券会社を誘致するよりも、UAEにとってはヘッジファンドを呼び込む方が現実的であり、かつ効果的と言えます。さらにAIなど最新技術を駆使するファンドも多いため、テクノロジー企業を集めたいUAEの戦略とも一致しています。
 
ただし、UAEにはグレーなビジネスを許容する側面もあり、信用面での弱点も残されています。それでも自らの立ち位置を理解しつつ、ヘッジファンドのハブを築こうとする姿勢は極めて合理的です。

ファンドマネージャー需要とオフィス不足

 ヘッジファンド誘致が進む中で、金融市場の加熱と相まって、UAEの金融都市としての需要は急速に高まっています。最近はファンド業界が高額な報酬を提示して人材を奪い合っていますが、その際「ドバイやアブダビに拠点を持っているか」が採用に大きな影響を及ぼしています。つまり優秀なファンドマネージャーがUAE勤務を望むため、オフィスがなければ人材確保が難しくなっているのです。
 そのため形だけオフィスを確保する企業も増えており、アブダビのオフィスビルでは入居率が100%近くにもかかわらず、実際には人がほとんど働いていないという現象も起きています。

人口増加と労働者の流入

 こうした移住の動きは統計にも表れています。ドバイ統計局のデータによると、人口は

  • 2022年:352万人(前年比+2.6%)

  • 2023年:361万人(+2.6%)

  • 2024年:378万人(+4.5%)

へと拡大。そして2025年7月時点ではすでに395万人に達しています。もちろん増えているのは富裕層だけではありません。建設現場などで働く労働者や新興国からの出稼ぎ労働者も増加し、都市全体の人口構造に影響を与えています。ドバイは2040年までに人口540万人を目指しており、アブダビもさらに人口拡大を計画しています。

今後の展望とリスク

 しかし、このトレンドが続くかどうかは世界経済に大きく左右されます。移住者の多くは税金を逃れ、資産を増やす目的で動いています。そのため景気が良く人々が稼いでいる時には移住ニーズが高まりますが、逆に景気が悪化するとその需要は急速にしぼむのです。ドバイの不動産市場も景気に敏感であり、世界経済の減速局面では魅力が失われかねません。
 ヘッジファンドそのものも景気に敏感な業界です。本来は市場環境を問わず利益を上げるために生まれた業態ですが、実際には不況期に戦略が機能せず破綻するケースも多いのです。そのため、現在のUAEの成長戦略は同時にリスクもはらんでいるといえます。

 こうした状況を踏まえると、当面は世界景気が持ちこたえる限り、ドバイやアブダビへの移住熱は続く可能性が高いでしょう。しかし次に本格的な世界的景気後退が訪れた際には、大きな谷が待っている可能性があります。今回取り上げたように、UAEに移住する人々と受け入れる側のニーズが合致している現状は、興味深い現象として注目に値します。


ご参考

訴訟リスク
 ドバイは世界中から投資家を募るため、法整備を急速に進めてきました。しかし、法整備は進んでいるものの、実際の裁判では外国人が不利になるケースが多いです。

Burj Aziziを通じて、ドバイの不動産投資のリスクを正しく理解する

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