会計を学ぶ意義と財務分析と簿記検定の話(前提編)
今回のテーマは「財務分析と簿記検定の関係、簿記検定3級の勉強方法」です。情報収集の具体例と分析の方法、そして分析の実践に続き、こちらも、モハPチャンネルのチャンネル登録様が20万人を達成した記念に、noteでの特別企画として記事のリクエストをお受けした際にいただいたものです。
ご質問・ご提案いただきありがとうございました。そして、簿記検定3級合格のご報告をいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
いただいたコメントは「財務分析の記事に興味があります。簿記検定3級を目指しています。勉強方法を教えてください」でした。テーマが広すぎてどのように記事にすべきか悩んでいましたが、Instagramで追加でご相談いただく機会がありました。その内容も含めて報告したいと思います。
Q.簿記検定3級は財務分析に役立つか。
A.役立つことは間違いないがその距離は近くない。
がこの記事のメインです。
Q.それでも簿記検定3級を取得したい。独学で、低コストで。
A.承知した。おすすめの勉強方法を提案させていただく。
おすすめの勉強方法はこちらの記事でまとめています。
視聴すべき講義、使用すべきテキスト、参考資料、ノートの色分けの方法など詳細に説明しました。ご質問者様のシチュエーションに合うように提案したものですが、簿記検定3級の勉強を始められる方は是非ご参考にしていただけたらと思います。
どちらもビギナーの方に向けた記事です。よろしくお願いいたします(TeamモハP Jim)。
会計を学ぶ意義とウォーレン・バフェット氏
ウォーレン・バフェット氏も会計を勉強すべきと主張しているため、会計を学べば投資で成功できるに違いないとの意見がありますが、私は、この意見は正確ではないと考えています。少なくとも、ROAやROEなどの指標を眺めるだけで成功できるほど甘い世界ではないでしょう。
先日の記事「バフェット氏の投資行動について&用語集㉑」の再掲ですが、バフェット氏は日本のM&A市場でも重要視されている会計指標「EBITDA」を下記のように評価しています。
著名なバリュー投資家ウォーレン・バフェット氏は、自身の投資・保険会社バークシャー・ハサウェイの株主に、そのような数値を当てにするのは危険だと警告した。
「EBITDAという言葉を見るとぞっとする。経営陣は妖精が資本支出を支払ってくれるとでも思っているのだろうか」と語っていた。同氏は最近、再びこの問題に言及し、EBITDAを「欠陥のあるウォール街の人気指標」と呼んだ。
バフェット氏が会計に詳しいことは間違いないです。しかし、バフェット氏は会計の数値を当てにしているわけではなく、企業の本質であるビジネスを理解する一手段として会計を利用しています。財務諸表の数字の裏にある経済的な実態を把握し、将来のキャッシュフローや収益力を評価することを重視しています。これこそが財務分析です。
繰り返しになりますが、ROAやROEなどの指標を眺めるだけでは全くありません。会計数値に惑わされず、騙されず、企業のビジネスの本質を理解する。これが会計を学ぶ意義だと考えています。
ビジネスと会計
企業のビジネスについて、今年は儲かったとか儲からなかったとか、在庫が膨らんだとか借入が増えたとか、言葉で言われてもピンときません。数字で示すのが最も客観的です。企業のビジネスを数字に置き換えるためのツール、それが会計です。それ以上でもそれ以下でもないはずです。
財務分析と簿記検定
企業の本質であるビジネスを理解する一手段として会計を利用する、そうしたことが簿記検定を目指す、合格することで可能になるのでしょうか。
結論ですが、全く無理です。簿記検定がそうしたことを意識して作られていないためです。しかし、簿記検定が何をしているかを把握することで、簿記検定の勉強を財務分析の基礎の基礎として役立てることは可能です。
財務分析と簿記検定のイメージ(料理を例に)
財務諸表の数字の裏にある経済的な実態を把握し、将来のキャッシュフローや収益力を評価すること、これはレストランで出された料理を食べたときに、「この料理は本当に美味しいかどうか」を見抜く力に例えることができます。もちろん、様々な料理が対象となります。
シェフの腕やこだわり、材料や調理法に独自性があるかどうか。店舗の外観や料理の見た目に惑わされず、本当に美味しいかどうか。それを見抜く力を養うことが、財務分析のための会計の勉強です。このレストランが長く繁盛するかどうかを考えることにも役立つでしょう。
一方、簿記検定の勉強は「会計の基本を学ぶ」ことが目的です。これは、料理の作り方を学ぶことに近いです。簿記検定では、料理も指定されています。そして、材料もすべて準備されています。
つまり、「チャーハンの作り方」を勉強することに似ています。米、卵、ネギをどう扱うか、包丁の使い方や調理する順番、適切な温度管理など。チャーハンが美味しいかどうかの判断を勉強することですらありません。
簿記検定に合格したのに四季報が読めないのはそうしたことが原因です。このカレーが美味しいかどうか判断したい、この店のうどんとあちらのお店のうどん、どちらが美味しいか見極めたい。チャーハンの作り方を学んだだけでは不可能です。そうした目的とはそもそもずれていると考えるべきです。
簿記検定が何をしているのか
チャーハンと述べましたが、簿記検定は特定の企業を想定しています。簿記検定3級が想定する企業のビジネスは、
商品を国内で仕入れて国内で売る
基本的に多数のお客様に少額の商品を売るスタイル
たまに大口の仕入れをする
たまに大口の売上がある
現金の回収に少しだけリスクがある
です。
世の中には、商品を製造してお客様に売る企業や先に現金を回収してサービスを提供するサブスクスタイルの企業もあります。海外で仕入れて国内で売る企業もあれば、国内で仕入れて海外で売る企業もあります。本当に様々です。ビジネスが変わればリスクも変わり、当然会計数値も変わるわけですが、簿記検定3級はそうした様々な企業を想定していません。
想定した企業の、想定した取引はこうです。勘定科目はこちらで予め用意しています。用意した勘定科目で想定した企業の想定した取引を仕訳することができますか、それを集計することができますか、これが簿記検定です。
財務分析の基礎の基礎として役立てるためには、簿記検定の想定する企業を理解する、そのような意識が大切でしょう。
簿記と会計と私
とある商工会議所で、2017年の制度改定以降コロナの影響で中止になるまで、簿記検定の解説講師をしたことがありました。模範解答だけ渡された状態で試験後すぐに解説する(おまけに模範解答が正しいとは限らない)、そうしたスリリングな経験をさせていただきました。
簿記を勉強すれば儲かるとか、簿記を勉強しても儲からないとか、様々な意見をいただくこともありました。バフェット氏に関する議論も複数ありました。簿記検定の期待へのギャップを埋める必要性を感じてきました。今回、このような機会をいただきありがたく思います。
ビジネスビジネスと書きましたが、私(TeamモハP Jim)は大学1年生の時、世の中のことを何も知らないまま簿記検定3級の勉強を始めました。勉強を始めた理由はもう思い出すことができませんが、財務分析がしたいなど明確な目的があったわけではありません。
立派な合格証書が届きましたが置く場所がない、それだけの理由で実家に送りました。予想以上に、親が喜んでくれたことを覚えています。ぎりぎりの点数での合格でしたが、もし親が全く喜んでくれなかったら、その後も会計の勉強を続けることはなかったと思います。簿記検定は2級をとれて一人前とよく言われますが、簿記検定3級にも人生を変えるだけのパワーがあると思います。
簿記検定3級を目指す全ての人を応援しています。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考①(財務分析記事)
■ ビジネスの理解のための財務分析(note株式会社)
■ ニュースの理解のための財務分析(株式会社セブン&アイHD)
■ フォルクスワーゲンの財務分析
■ BMWの財務分析
■ 日産自動車の業績予想の推移と財務分析
ご参考②(TeamモハP Instagram)

